優しさの結末 二日目 午後 投稿者:智波
シフトJISで書くことにしました。
でも、これって、私が使い辛いんですよね(苦笑)
とりあえず、頑張りますっ!
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1


なんで・・・

・・・理由か。

なんで消えてくれない・・・

・・・分からぬ者に説明しても意味がない。

もう日は昇ぼり、町は目覚めてる。
悪夢も醒めるはずの時間なのに・・・

・・・おまえの知らぬ法則に基づいた
・・・おまえの知らぬ原因によって

公園の木にもたれ、荒い息を落ち着けようと、

・・・また無駄な努力をする。

家からまだ500mも歩けていない。

・・・どこに向かうのかは知らんが、

辿り着けやしない。
そもそも、どこに向かおうというのか?
「なんだぁ?こいつは」
「いいとこのお坊ちゃんがサボリかぁ」
ただ、ここにいちゃいけない。
それだけは分かってる。

・・・そうだ、ここではない。

逃げるんだ!遠くへ。誰もいないところへ!
「おい!なんとか答えたらどうだ!」
この衝動は、深く、強く、暗い。
押さえきれなくなるまで、もう時間がない。

・・・美しい炎が見たい。
・・・美しい命の炎の輝きが・・

握りつぶしたい。
この手で、命を。
「おい、タカ、見ろよ。こいつの手」
「なんだぁ?アザか?」
日々、僕を犯し続ける破壊の衝動。
総てを握りつぶしたい。
強い抵抗と、そして弾ける快感。
「縛ったあとみたいだぜ」
「こいつ、マゾかぁ?」
でも、それはしちゃいけないことだ!
耐えなきゃいけないんだ。
憤り、この下だらない世界に対する憤り、
誰だって思ってる。
そして耐えてる。

・・・だからそれが後退だというのだ。
・・・種の保存の法則すら当てはまらぬ種の戯言だというのだ。

違う、人は動物じゃない!
進化したんだ!
心を持ったんだ!
「俺達がいじめてやろうぜ」
「いいねぇ、こいつも嬉しいだろうぜ」
優しさを覚えたんだ!

・・・自己満足の正当化にすぎん。
・・・人の為と言って、自らの為に行なう。
・・・その行ないを正当化するために生み出した言葉が優しさだ。

違う!
それこそ、人を卑下するためのこじつけだ!
純粋な、単純な思いを忘れちゃいけないんだ。

・・・それこそ欲ではないか。
・・・最も単純にして、最も種として正しい姿。
・・・快楽が嫌いなわけではないだろう?

そういう問題じゃない!
そういう問題じゃないんだ!
「こいつ、おかしいぜ」
「気でも狂ってんだろ」
「おもしろくねぇ」
人がどういう生きものかも知らないくせに!

・・・よく、知ってるさ。
・・・よぅく、知ってる。
・・・そろそろ目を覚ましたらどうだ?
・・・おまえよりも、種として正しい奴らが待っている。

目を?

ひゅっ、という音を聞いて、後頭部に鈍い衝撃が走った。
全身が痛い。
朝から、いや、昨夜からずっと感じていた腕の痛みと、頭痛は消え、
かわりに、全身を鈍い痛みが走っている。
「ほらほら、気持ちいいんだろぉ。マゾ男君」
「お兄さん達が可愛がってやるぜ。なんてな。はははっ」
男達が三人、木にもたれている僕を変わる変わる殴ったり、
蹴ったりしている。
チンピラ?というには若い。僕と同じか、下手をすれば中学生かも。
「なっ、なんで、こんなこと・・・」
嘘のように頭痛は消えていた。
多分奴は眠ったのだ。
「なんでって、やっと喋りやがって、この野郎!」
幾度目かも分からぬ蹴りが、僕の腹をえぐる。
「がっ、」
「お兄さん達、お金が無いのね。それで貸してもらおうと思ってたんだけど」
「そっ、そんな、お金なんて、持ってません」
「もう金なんてどうでもいいんだよ。馬鹿野郎!
おまえがだんまりしてるから、ぶっ飛ばさなきゃ気がすまねえんだ!」
よろよろと立ち上がろうとしたところを、また殴られる。
なんでこんな目に遭わなきゃいけないんだ。
僕が何をしたって言うんだ!
「うわぁああああ!」
叫びながら男の一人に殴りかかる。
いつもの僕なら、そんなことできやしない。
がんっ!
右手に鈍い痛みが走って、そいつがよろけた。
「いってぇー!テメエ!」
反撃は、僕のパンチの数倍は痛いだろう、蹴りだった。
それが、僕の頭にクリーンヒットして・・・
くらくらして・・・
なんでこんな目に遭うんだろう・・・
なんとなく、奴らが全員で、僕を痛め付けているのがわかる。
なんで?
どうして?
疑問は、徐々に形を変え、いいようの無い怒りに変わる。
痛覚すら麻痺していたのが原因だろう。
普通殴られながら、こんなふうになることなんて、ありえない。
人間ってなんなんだ?
僕のあの苦しみって何だったんだ?
こんな奴等すら、殺さないために耐えていたのか?
畜生!殺せるもんなら殺してやりたい。
せめて、僕が殴られた分ぐらいはやり返してやりたい!
この野郎!
この野郎!この野郎!この野郎!
この野郎!この野郎!この野郎!この野郎!この野郎!この野郎!
この野郎!この野郎!この野郎!この野郎!この野郎!この野郎!
この野郎!この野郎!この野郎!この野郎!この野郎!この野郎!

・・・殺してやる。

二つの声が重なった。


2

「耕一さん!」
言い知れぬ不安を抱えた目で、祐介君が俺を見た。
その5m先で、瑠璃子さんも立ち止まっている。
分かってる。
当然、気づいている。
ものすごい殺意の波動。
人間でも悪寒ぐらいは感じるだろうそれを、
電波という形で明確に感じ取れる二人は、
俺よりも凄い圧力を感じているに違いない。
間に合わなかった!
鬼が目覚めたのだ。
この場所で。
どうして隆山からずっと離れたこの場所に、
鬼の血を宿した人間がいるのかは分からない。
鬼に変身するほど濃く血を残しているのは、柏木家の人間だけのはず。
そんな知識は、現実の前で力を失っている。
距離は、それほど遠くない。
「祐介君。瑠璃子さんを連れて逃げるんだ!」
「耕一さんは!?」
「俺は彼を止めなきゃいけない!」
真っ昼間の路上。俺達を除いて、未だに地上はその色を残している。
感情の無い瞳で、鬼気の先を見つめる少女が、ゆっくりと足を出した。
「瑠璃子さん!」
祐介君が彼女の腕を掴むと、瑠璃子さんは立ち止まり、
ゆっくりと振り返った。
「行かなきゃ、長瀬ちゃん」
「危ないよ。瑠璃子さん」
そう言った祐介君に、瑠璃子さんは始めて微笑む。
「大丈夫だよ。長瀬ちゃんが守ってくれるから」
確信に満ちた声、俺は誰かからここまで信頼してもらっているか?
「・・・瑠璃子さん」
「助けてあげようよ。ねっ、長瀬ちゃん」
でも、それとこれとは問題が違う。
「・・おいっ、祐介君!」
俺の言葉の意味は通じていたはずだ。
「・・・・」
しかし祐介君はしばらく何かを考えるようにしていたが、
やがて決心をして、口を開いた。
「耕一さん。僕達も行きます」
「駄目だ。危険過ぎる。君は、鬼の力を知らないから」
「耕一さんだって、電波の力を知らないでしょう」
「そういう問題じゃない!」
「そう言う問題なんです。僕等なら彼を助けられるかもしれない!」
「無理なんだ、祐介君。一旦鬼と化した人間は、どうやったって
それを制御することはできない。どうやったって無理なんだ」
「電波の力を使ったことはないでしょう」
「それは・・・」
その通りだが、しかし。
・・・もしかして、俺は、彼が助かることを望んでいないんじゃないか?
親父も、叔父も、叔母も、この呪われた血のせいで、その生を断った。
もし、彼が、祐介君達の力であっさりと助かったら・・・
親父達の死はなんだったんだ?
・・・ほら、そうだ!
そうだ!祐介君の言うとおりだ、試してみる価値はある!
救われることの無かった柏木の鬼の血。
祐介君の力で、それを止められるのなら・・・
そう、従姉妹達の悲しい顔を、もう見なくていい。
心からの笑顔を見ることができるんだ!
「耕一さん」
「・・・分かった、やってみよう。祐介君」


3

電波の力はそう無節操に放てるものではない。
周囲一体に甚大な被害を及ぼしていいというなら別だが、
そうでないのなら、それなりに目標に接近しないと行けない。
だが、奴がそれを黙って許すはずがない。
俺が、奴を押さえこまなければ話にならないのだ。
「時間はどれくらいかかるんだ?」
「まったく分かりません」
「やるしかないか」
そんなことを話しながら走る。
白昼の公園、植林された木々が立ち並び、小さな森のようになっている。
人は、ほとんどいない。
いよいよ鬼気が強まってくる。
そして、繁みのなかに飛び込んだ俺達の前に、
その惨状は開かれた。
「うっ・・」
思わず吐き気を催したのだろう、祐介君が、一歩、二歩と後ずさる。
そこに彼はいた。
潰れたトマトのようになった人間の頭を掴んだまま、虚ろな瞳で、
突然の乱入者である俺達をにらむ。
「まっ、まさか」
俺はうめいた。
1つだけ予想外の事があった。
彼は鬼にはなってなかった。
つまり、人間の殻を捨て、鬼と見間違うような姿ではなかった。
人間のまま、瞳は金の光鉾、腕はわずかに変形し、
やはり彼が鬼であることを示している。
しかし、彼は人間の姿のままだったのである。
そう、どこにでもいるような高校生。
祐介君と仲良く話をしていても不自然ではない容姿。
「コロシてやる。みんな、ミンナ、コロス」
殺意が膨れあがった。
とっさに俺も鬼の力を開放する。
空気を切り裂いて、真空をまとった爪が俺を袈裟掛けに切り裂こうとする。
間一髪で、それを受け止める。
ぐっ、重い!
おたがいに真の意味で鬼を開放はしていない。
条件は互角・・・、なのに力はほぼ互角だ。
この力は覚えがある。
この攻撃には覚えがある。
「祐介君!早く!」
祐介君の位置を確認している余裕がない。
受け止めた腕に力が入る。
地面が、徐々に沈んで行く。
「うぉおおおおお!」
相手の腕を弾くのではなく、ずらす。
ごぉん!
彼の腕を受け止めた地面が、一気に一メートルほど陥没した。
地面を滑るように移動し、彼の左手に回る。
彼の目は俺を捕らえ続けている。
横移動中の俺を狙って、左手が空を斬る!
「くっ!」
まさか!
あの体勢から!
攻撃が来ることを予想できなかった俺は、しかたなく跳んで交わす。
俺の代わりに攻撃を受けた木が、真っ二つに折れる!
「グォオオオオオォォゥ!」
もはや人間のものではない叫び。
木が轟音を立てて倒れる。
彼は、俺を見失ったはずだ。
空中で一度木を蹴って、バランスを取り戻した俺は、
一撃で決めるために、両手を降りかぶった。
これで昏倒させる!
「!!!」
その瞬間、信じられないことに、彼は俺を見た。
まるで最初から俺のいる位置を知っていたかのように。
驚愕による一瞬の空白が俺に隙を作った。
ぶぅん!
大きく孤を描いた拳が、俺のわき腹を直撃する!
目の前が真っ暗になる。
なっ、なんだって、こんなに実力の差があるんだ?!
俺は地面に叩きつけられ、二転、三転した。
肋が二、三本折れている。
それだけじゃない、直撃を食らった箇所が裂傷を起こしている。
「ぐぅ!」
両手を地面に当てて起き上がろうとする。
その手に影が差した。
「!!」
ほとんど間一髪というよりは、半髪ぐらいだろう。
転がり、首を捻ったそのすぐ脇を、地面をえぐって、彼の靴が通り抜けた。
彼は、俺の顔を見下ろし、にぃ、と笑うと、
俺の髪の毛を掴んで持ち上げた。
しゃぁねぇ!
一気に鬼の力を最大限に開放する。
体組織が組み代わり、人から鬼へ、変身というよりは急激な進化とでもいおうか。
腹の怪我も回復する。
「グォオオオオォォォンン!!」
叫びと共に一閃!
彼の手を降り払い、5mほど後ろに跳ぶ。
彼は、彼は茫然と、俺の姿を眺めていた。
なんだ?
沈黙の支配する数瞬の後、
「うあぁああああああああ!」
彼が叫びをあげて突進する。
その先は!
いけない、逃げろ!
声にならない。
いつもと変わらぬ、色の無い目で、瑠璃子さんが立っていた。
間に合わない!
そう思った瞬間、瑠璃子さんと彼の間に黒い影が割り込んだ!
祐介君!
一瞬だった・・・、彼は右手で祐介君をふき飛ばし、
そのまま、走り去ったのだ。
「祐介君!」
俺は人間の姿に戻り、祐介君に駆け寄る。
「・・・長瀬ちゃん」
祐介君のそばで、瑠璃子さんがしゃがんでいる。
「大丈夫か!?」
「ぅぅ、ぐぅぅぅ・・・ぅぅ」
うめき声は痛々しかったが、どうやら、致命傷ではなかったらしい。
鬼を追わなければ、
しかし、この状態の彼を置いて行くわけには、
「・・・長瀬ちゃん、しっかり」
瑠璃子さんのその言葉を聞いた瞬間、俺は走りだした。
電話はどこだ!
そう、警察と、救急車だ。
人として間違っているかもしれない。
これから起きるだろう、多くの被害に目をつむり、
目の前にいるたった一人を救おうとしている。
どこかに絶対的な審判者がいるとしたら、俺は極悪人だろう。
だとしても、俺は目の前の一人を見捨ててはおけない。

もう、事件は起こってしまった。
今日の晩には従姉妹達もこの事件の事を知るだろう。
鬼の仕業だと気づくかも知れない。
慌てた手で、ダイヤルを押しながら俺は、
どうして彼が、鬼の姿の俺を見て逃げ出したのかを考えていた。

                                                                                                                        三日目に続く
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「ふふふ、ついにきたのね、このしゅんかんが。
おうぼうなさくしゃにせいぎのてっついをくだす、このひが」
鉄製ハリセンを握り締め、不気味に笑う少女。
>おう、なにやってんだ?ダリア。
「うきゃぁ!なっ、なに、ちなみぃ!
あんたなんでうしろからあらわれんのよ!」
智波、ひょいとハリセンを奪う。
>うをっ!テメエ、こんなもんで俺を殴る気やったんか!
「いいでしょ、しんでもしなないんだから」
>どーでもいいが、おまえ志保はいってきたな。
「だれよ、それ!」
>知らんなら、いいが。今日はせっかくおまえに後書きの
>パートナーを頼もうと思ってたんだが。
「ええーっ、ほんと!やるやる」
>しかし、俺のオリジナルのキャラ(しかも内容に登場してない)を
>こんなところに出していいもんか?
「いまさらきにしない。ねっ、もうぜんかいでやっちゃったんだし」
>確かにそうだな。
「で、あとがきのぱーとなーってなにするの?」
>知らんかったんかい!
「いいじゃない!」
智波とダリアが喧嘩しております。
少々お待ちください。

「えっ、私ですか?」
「・・・はい、じゃあ」
「えと、次回をおたのしみに」
「・・・これでいいんですか?」
「・・・はい」

って、またフィーナで終わりかい!