ヨガ 投稿者:助造 投稿日:6月23日(土)12時29分
 
 ヨガ
 
 古代インドで広く行われた宗教的実践法。心身の統一・訓練などによって、
 物質の束縛から自由になることをめざす。近代になって宗派としての力は
 弱まったが、苦行による超日常的能力の開発法や神秘的瞑想法として、
 宗派を超えて実践された。現代では心身の健康法としても応用されている。

                          
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 身体を丸め、胡座をかき、そのまま足を上げて後頭部で足首が交差するようにして
首に足を引っ掛けるポーズ。
 そして、そのままの状態で、床に着いた手で自らの体を支え、歩きまわる!
 これぞ正に―――


「これがヨガです。綾香お嬢様」


 セリオが、部屋の真ん中で、無表情のまま『ヨガ』と言い切る荒技をきめていた。
 それが本当にヨガなのかというと、何だか自信がなくなってくるが。

 足と手が逆になったようなセリオは、手を使って部屋をトコトコと徘徊する。
 …徘徊、というよりは、跳ね回っているようにも見える。
 それにしても、無表情なところが何だかバケモノっぽい。

「…セ、セリオ…ちょっとあんた、一体何してんの?」
「ヨガですが」
「………ヨガ?」
「はい」
「…どうしてそんなことしているの?」
「ヨガだからです」
「ヨガだから…?」
「はい」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」



 …ぶっ壊れたのかしら?



「やっぱり、昨日、垂直落下式ブレーンバスターの練習台にしたのが不味かった…?」
 少し焦る綾香。
「と、取りあえず、誰かに知らせないと…」
 慌てて、部屋を飛び出す綾香。
 もしかすると、本当に壊れたのかもしれない。
 セバスを呼んで、あの馬のところへと連れて行かないと…。

「―――どうなさいました? 綾香お嬢様」

 ふと、後から力強い声に呼び止められた。
 セバスだ。

「よかった、セバス! 今ちょうどあなたを―――」
 
 振り返る綾香。
 だが―――

「…………」
「如何なさいました、綾香お嬢様?」

 セバスの姿が視線の先には無かった。
 何故なら、セバスも『ヨガ』のポーズだったのだ。
 綾香の腰の付近に、セバスの頭がある。

「…………」
「……如何なさいました? 綾香お嬢様?」
「い、いや、何でもないのよ、あははー!」

 綾香はすっ飛んで逃げた。
 はっきり言って、黒スーツの屈強な老人の、あのヨガのポーズは何だかおぞましい。


「こうなったら身内しか信用できるものは無いわ!」

 早速、姉である芹香の元へと向かう綾香。
 ドアをノックすることも忘れて部屋へと入る。

「姉さん、助けて! 何だかみんなが変なのよ!?」

 芹香は相変わらず暗い部屋で、黒マントと黒いとんがり帽子の姿だった。

「…………」
「どうしたのですか? いや、どうしたもこうしたもないのよ! 
 何だか皆がおかしくなっちゃってるのよぉ!」
「…………」
「どうおかしいのかって? んと…何か変なポーズでいるのよ…」

「…………」
 それは―――

 そう言って、芹香は胡座をかくようにして、そのままその足を頭へと持っていく。
「あ…あ…あぁ…」
 綾香は震えてそれを見ている。

「…………」
 ―――こういうポーズですか?

 見事、ヨガのポーズを決める芹香。

「いやぁぁぁぁ!!!!」

 綾香はその場から逃げ出した。
 泣きながら逃げた。
 だが、後からはヨガのポーズをした者達が追いかけてくる!

「綾香お嬢様〜」
「綾香お嬢様もヨガをするのです〜」
「…………」(あなたもヨガをするのです、綾香)

 ヨガのポーズのまま、追いかけてくる姿は、そこらのB級ホラー物なんか比べ物に
ならないくらい怖い。

「いやぁぁぁ!!!」
「ヨガ〜ヨガ〜…」
「ヨガ〜ヨガ〜…」
「…………」(ヨガ〜ヨガ〜)

「あっ…!」
 だが、逃げつづけてきた綾香の体力は遂に尽き、廊下の曲がり角に追い詰められてしまった。

「ヨガヨガ〜…」

 そこに容赦なく、ヨガの亡者の魔の手が伸ばされる!



「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!! 何だかいやぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


 …綾香はそう叫んで飛び起きた。
 周りを見渡すと、見慣れた自分の部屋である。

「夢……?」

 そう理解すると、ものすごーく、ホッとした綾香であった。

 トントン

 不意に、部屋のドアがノックされた。

「はい?」
「綾香お嬢様…」
「セリオ? ああ、入ってきて良いわよ」
「それでは、失礼します―――」


 ドアを開けて入ってくるセリオ。
 そこには――――



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 ども、何だか既存だったらどうしよう的な助造です。(汗)
 いや、こんなの思いつく人、他にいるかわかりませんが。