メタルギア・アヤカ 第二十八章 投稿者:助造 投稿日:12月29日(金)00時33分
前回までのあらすじ

核兵器保存棟へ潜入した綾香は
一階で智子を激闘の末に下し、
地下二階であかりとの死闘を制した。
そして綾香は地下三階へ進み、
芹香のいる核兵器保存棟司令室を目指す。

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2001年 1月1日 午前3時49分 核兵器保存棟 司令室前

核発射指定時刻まであと1時間11分



「やっと……着いた…」

綾香は巨大な扉の前に立ち、目の前の扉を眺める。
扉には「核兵器保存棟 司令室」と書かれていた。
見るからに頑丈そうなその扉は、この先に何があるのかを
それだけで物語っているようだった。

綾香は闘い続けてきた。
ここまで死に物狂いで闘い続けてきた。
敵と闘う中で、綾香は彼女らの心の内を見てきた。
どの敵も強かった。
そして悲しげであった。

この闘いは……綾香にとってもつらい闘いとなった。

だが、綾香は闘いつづける。
大切な人のために。
決着を着ける為に。
そして…

この闘いを終わらせるために……

「姉さんっ!!!」

綾香は……扉を開いた。



メタルギア・アヤカ 第二十八章 『さようなら、綾香』



「姉さん……!!」
「…………綾香…」

妙に広いこの部屋は、大型兵器の放置庫として使われていたようだ。
辺りには戦車や戦闘機などがそのままにされている。


その部屋の中心に芹香は立っていた。
その腕には、ぐったりとした浩之が抱かれている…

「浩之…!」

驚く綾香の表情を見て、芹香は僅かだが表情を変えた。
さも嬉しそうに…

「浩之っ!!」
「…………」

芹香に向かって走り出す綾香の前に、突如、上から何かが落ちてきた。
走る途中でそれに気付いた綾香は横に跳び、それを避ける。


それは人の形をしていた。
だが、人ではなかった。
床に叩きつけられた時の音が、肉のぶつかる音ではなく、
まるで何かの金属のような音がしたからだ。

「……起動……」
芹香の一言で、その何かは動き始める。
膝をついていた状態から、身体を起こす……

「セリオ……!!」

それはセリオであった。
あの時と…一緒に過ごしたセリオと外見は全く変わっていない。

『メイン電源A・B・C…稼働率100%。エンジン冷却液注入開始…
 戦闘用メインデータ、ダウンロード終了。殺人用ライセンス確認。
 攻撃武器チェック開始……終了。スタンバイ……OK。』

セリオの目に電源が宿り、ぎこちない動作で動き始める。

「……HM−13セリオ、起動を許可する。」
芹香がゆっくり呟くと同時にセリオの顔が綾香の方を向く!
「!!?」

「目標を確認……破壊します」

セリオの冷たい視線が綾香を貫いた。



セリオの耳飾りに光が集まる!

ズバアアアアアアア!!!!

セリオの耳から発せられた光は、床を切り裂きながら綾香に向かってくる!

「クッ!! 自由電子レーザー!?」

綾香も横っ飛びをし、MP5A5で応戦するが、
戦車並みの防弾装甲であるセリオには、ボディに傷を付ける事もできない。

「M61多砲身機関砲……」
セリオがそう呟くと共に、左腕が外れ、中から大型のバルカン砲が出てくる!

ズガガガガガガガガガ!!!!!!

正確な射撃が綾香を襲う!
だが、綾香もそれをギリギリのところで避けている。

「ハア、ハア、ハア、ハア……」

セリオが綾香を狙い、綾香が逃げる。
それは暫く続いていたが……

「あっ!!?」

逃げていた綾香が突然バランスを崩し、倒れた。
今までの闘いによる満身創痍と出血が綾香の体力を奪っていたのだ。
だが、それにも関わらず、綾香は無理をして闘いを強行してきたために
ついに身体がいうことを聞かなくなり始めていたのだ!


「熱源追尾スティンガーミサイル…」
今度はセリオの右腕が変形し、中から筒のような物が現れた。

「ターゲット……ロックオン…」

セリオのカメラアイが綾香を捉え、発射準備を終わる。

「ハア、ハア、ハア……くそっ!!?」

「発射」

身動きの取れない綾香に、セリオの無情な宣言が下される!

バシュゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!

スティンガーミサイルは、真っ直ぐに綾香に飛んでいく!

ズゴォォォォォォン!!!!

轟音

爆風は部屋中を吹き抜け、先程まで綾香のいた場所は
黒焦げになっていた。

「ターゲット破壊完了……生存確認に入ります。」
それでもセリオのカメラアイは綾香の姿を追い続ける。



「あなたは…!!」

綾香自信も自らの命を諦めていた時、それは起こった。

何者かがミサイルの直撃寸前に綾香を逃し、助けたのだ。
その人物は…

「……フフ、あなたも随分と弱くなったものね…」
「好恵!」

綾香は好恵に助けられたのだ。

「好恵…どうして、どうしてそこまで私にこだわるの!?
 今回だって…あなたがここに来ていなければ何も無かったはず!」
「…………」

「それなのに…あなたはそこまで苦しみながらもどうして私の姿を追うの!?
 一体私に何があるというのよ!!?」

「……私は……死の囚人だ…あなただけが…私を解放してくれる…!」
「それは好恵の思い込みよ! 私には…あなたを救える力なんて無い!!」

「私には時間が無いの…押さえてきた拒絶反応も…
 もう限界に達してきてる…だから……」

「死ぬ前に…あなたとの決着を着けたかった…! だから…!!」
「ふざけないで!!」

綾香の平手打ちが好恵の頬を叩く。
乾いた音が辺りに響いた。

「……綾香?」

「もう少し…自分を大切にしなさいよ……! あなたが死ねば…
 悲しむ人もいるのよ!?」

「悲しむ人…?」

「私は…あなたがこんな酷い目にあっていることを聞いて、助けて
 あげたかった…でも、あなたが望んだ事は一体なんだった!?」

「あなたは死が自らを救ってくれると思っているみたいだけど、
 あなたが死ねば悲しむ人は必ずいるの!!」

「そこのところを…もう少し考えなさいよ……。あなたが死んだ時、
 流された涙を私は知っているわ…」

綾香の頬には…涙が伝っていた。
もう泣かないと決めた綾香の頬に、涙が……



「熱源を発見、二つの数を確認。」

ズガガガガガガガガガガ!!!!!!!

「!!!?」

「どうやらばれてしまったようね…!」
好恵がセリオの方を向く。

「好恵!!?」

「………ありがとう、綾香。」

好恵が微笑む。
この基地で出会ってから見た、初めての微笑だった。

その時の顔は……一年前の自らを犠牲にした好恵に似ていた。
それを見た綾香に嫌な考えがよぎる!

「好恵……? あなたまさか…!?」

「そろそろお別れのようね…!」
剣を取り出し、好恵は綾香に言う。

「あなたは私のために泣いてくれた。嬉しかったわ、綾香。」

「好恵…だめよっ!!」

「私からのせめてものお礼よ……私が奴の動きを止めるっ!!!」
「好恵ぇっ!!!」


好恵は猛然とセリオに突っ込んでいく!

「目標を確認。破壊します。」

セリオのレーザーが好恵に向かって照射される!


ざしゅ。


好恵の右腕があっけなく切断される。
だが、好恵は進むのをやめようとはしない!

「はああああああ!!!!!」

ガキン!!!

好恵の剣が、セリオの左腕を切断する!!
好恵はそのまま数メートル先で倒れた。

「左腕破損……戦闘機能には支障なし…攻撃を継続します。」

セリオの右腕に弾頭が充填される。
スティンガーミサイルが好恵の姿を捉える。

バシュゥゥゥゥゥ!!!!!!

「好恵ぇぇぇ!!!!!」

綾香が叫ぶ、その方を好恵は向き、綾香に言った。


「さようなら……綾香。」


その言葉を最後に、好恵の身体を爆炎が包み込んだ――――


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好恵の死に、綾香の隠れた力が動き出す!
そして始まる芹香との最後の闘い!
全力と全力のぶつかり合いの中で、
綾香は芹香の心の中を知ることになる…


次回 メタルギア・アヤカ

第二十九章 『終わりの始まり』


ども、助造です。

遂に話もクライマックスです…。
何か長かったような短かったような…(笑)