メタルギア・アヤカ 最終章 投稿者:助造 投稿日:12月31日(日)23時28分
前回までのあらすじ

この闘いを終わらせるために……
綾香は芹香との闘いに臨む!
憎しみに暴走する芹香、そんな芹香を
見て、綾香はこの闘いに終止符を打つ事を決める。
全力のぶつかり合いの中で、綾香の拳が
芹香の身体を吹き飛ばした……!

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2001年 1月1日 午前4時33分 核兵器保存棟 司令室



「結局…、私は勝っても負けても失ってしまったわ……」

芹香が自嘲気味に笑う。
その頬には涙を伝わせながら……

「失ってしまった……?」

「私は……綾香、あなたに勝てれば全てを取り戻せると信じてきた…
 でもね…、結局、何も取り戻せなかった。
 それどころか…私は浩之さんの微笑さえも…失ってしまった…」


「選ばれたのはあなたかもしれない…。でも、それでも浩之さんは
 私に微笑んでくれていた…。心の中の浩之さんが…微笑んで
 くれていたから…、それを手にしたかったから…、微笑む
 浩之さんの身体を…胸に抱いてみたかったから…自分の物に
 したかったから……。私は……ここまで闘ってきた…」


「でも、浩之さんは遂に微笑んでくれなくなった……」
「姉さん………」


ズドォォォォォォン!!!!!!


「あっ!?」
「くっ!!?」

爆撃で施設が破壊される。
いよいよ、空爆が本格化してきたようだ。

その時、天井が崩れ、綾香達二人の元に落ちてきた!!
綾香はまだそれに気付かない!!
だが、芹香はそれに気付いた。

「綾香っ!!!」


ガシャァァァァァン!!!!


コンクリートや、鉄筋が辺り一面に散乱する!

その中で……綾香だけが助かっていた。
芹香は鉄筋の下敷きなってしまっていた。

綾香を助けたのは…芹香だった。


「姉さん…どうして…!!?」
「クッ……! 勘違いしない事ね、綾香。私はあなたを助けたんじゃない!!」
「姉さん! 姉さん!!」

「綾香……あなたは勝った。でも、これだけは覚えておくのね…!
 敗者は闘いから解放されるわ…、でもね、勝者は闘いから
 逃れる事は出来ないのよ…」

「私は…あなたを助けたかったんじゃなく、ただ…逃げたかったのよ…!」

「フフ…、あなたは…勝った事でこの先またあなたの闘いは続く。
 闘い続ける運命にあるのよ、私達『戦士』は……」

「あなたは…その運命の中で…いつまで闘い続ける事が…できるのかしらね?」


その言葉を最後に……芹香は死んだ。

だが、それで悲劇が終わったわけではなかった…



メタルギア・アヤカ 最終章 『夜明け』



「浩之っ!!」

綾香は急いで浩之の元に駆け寄った。
そして浩之の顔を見る。

「浩之っ! 浩之っ!!」
抱きかかえ、浩之の体を揺する。
だが、浩之の目は開かない。

浩之の手が綾香の体に触れる。
その手は冷たく、生気が無かった…

綾香は不安を誤魔化すかのように浩之に話し掛ける。
その目には……涙を浮かべて。

「浩之ぃ…冗談は…よそうよ…? 早く…ここから逃げないと…
 ね? 冗談は…やめて……」

浩之の手を取り、強く握る。
だが、綾香が力を抜くと、その手は音もなく床に落ちた。

それを見た途端、綾香の涙は溢れ出した…



「浩之ぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!」



綾香の悲しい泣き声が響く。
まるで子どものように、綾香は泣き続けた…

「私は…恐怖に屈した!!」

「銃弾の前にあなたを見捨てて自分の身を選んだ!!」

「何が任務よ! 何が…Leaf最高の称号よ…!!」


「私は……一番大切な人すら守れなかったじゃない!!」


綾香が床を思い切り殴りつける。
拳が割れ、流血しながらも、綾香は自分を痛めつけるように殴り続ける。

だが、それを止める者がいた。


「……放して、長瀬さん…」

綾香の手を止めたのは長瀬だった。

「私が放せば……綾香お嬢さんは自分を傷つけます。」
「……私は浩之を殺したも同じなの…止めないで…!」

綾香が長瀬を睨みつける。
拳は既に血塗れになっており、骨は砕けているように思われた。
だが、綾香の恐ろしい形相にも、長瀬は退かなかった。

「綾香お嬢さんは……藤田君を殺してなんかいません…」

「あなたに何がわかるのよ!!?」
綾香はそう言って手を振り解いた。


「卑怯ですね…」

長瀬が静かに言う。

「そうやって自分を責めていれば…藤田君の死から目を
 逸らしていられる…。あなたはそうやって逃げているんですよ。」

「私が……逃げている…?」

「そうです。自分のせいだ、自分のせいだと言って藤田君の死から
 目を逸らし、藤田君の想いを踏みにじる行為をあなたはしている。」

「浩之の気持ちを……踏みにじる……?」

「藤田君は…身を呈してあなたを守った。でも、その守られた身体を
 あなた自身が傷つけるのは……藤田君の行為を無駄にしています。」

「あなたを守りたかった。だから藤田君は自らが傷つく道を選んだんです。
 きっと……彼はその事を後悔したりはしていません。
 それをあなたのせいにしたりもしません。」


「本当に…藤田君の事が好きだったなら…あなたのやっている事は
 間違っているのでは…?」

長瀬は綾香に言う。
そう、彼も綾香と同じく、目の前で愛する者を失ったのだ。


「私…あれから色々と考えたんですよ…。」

「この闘いは…何故起こったのか…。こんな悲しい事が何のために
 必要だったのか……。この闘いに参加した彼女達は……
 一体何を求めてたのか…。」

「私、考えたんですけど……私にはわかりませんでしたよ。」

「どんなに後悔しても…愛した人は戻ってこない……
 それだけはこの闘いで学びました。だから…」


「私は……もう過去を悔やんで生きる事はしません。それは……
 レミィも望んでいないでしょうし……。
 愛した人が…自分の死で悲しむというのは…それで愛した人が
 後悔して、苦しむ姿を見るのは……レミィが望むはずは無いんですよ。」


「それと同じで……藤田君もあなたにこんな事はしてほしくないはずです。」

「長瀬さん………」


浩之の死は確かに悲しい。
それはいつまでも変わらない。
綾香はもう泣かないなどという自信は無い。
きっと、これからも泣き続ける。

だが、綾香は留まってはいられない。
生きている限り、時は流れ、想いも消えていく…
いつまでも過去にしがみついてはいられない。


「………あ、元の綾香お嬢さんに戻りましたね……」

「……長瀬さん、脱出しましょう。」



この闘いは終わった。
綾香から、そして全ての者からいろんな物を奪って…


だが、彼女達が闘いを終えることは無い。

 
彼女達は戦士なのだから……
       
                              
                               FIN