メタルギア・アヤカ 第二十九章 投稿者:助造 投稿日:12月30日(土)01時29分
前回までのあらすじ

遂に始まる最後の闘い。
綾香は芹香と対峙するが、二人の間に
セリオが立ちはだかった。
セリオの攻撃に苦戦する綾香。今までのダメージもあり、
遂にセリオの前に力尽きてしまう!
綾香は好恵に救われて、助かるが、綾香の代わりに
好恵はセリオと闘い、セリオの攻撃で絶命する!

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「好恵っ!! 好恵ぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」
燃えさかる炎となった好恵に向かって、綾香は叫ぶ!


「ターゲット、破壊完了。任務遂行を継続します。」
だが、そんな綾香にセリオは矛先を向ける。


「愚かな人……」
芹香が哀れみに似た表情で呟く。

「何…ですってぇ…!!?」
「死を懇願した時に、勝負は決まる……。」
「でも、これでわかったでしょう? 綾香、あなたは誰一人として守れない…!」


「戦友も…愛する人も……そして自分の身さえも…!!」

「……そんな不甲斐ないあなたを命を賭けてまで守るなんて…」

芹香が唇を歪ませて言う。

「愚かとしか言い様がないわ。」


「芹香あああああああ!!!!!!!!」

ばちばちぃっ!!!

綾香の絶叫と共に、周りに紫電が走る!
細い紫電が次々に重なり合いって、巨大な雷となったそれは辺りを薙ぎ払う!

「この反応は……」

セリオがそれを見て、分析を始めるが、セリオのデータにすら
この現象は始めて見るものだった。

だが、芹香はそれを当たり前の事のように受け止めている。


「やっぱり…あなたも使えたのね……電波を…!」



メタルギア・アヤカ 第二十九章 『終わりの始まり』



「芹香…芹香…芹香…!!!」
綾香が物凄い速さで芹香に向かって走っていく!
だが、セリオがそれを阻むように立っていた。

「退けぇぇぇぇ!!!!!」

綾香の放った蹴りの前に、セリオは片腕で防御を取るが、
蹴りはセリオの腕をヘシ折り、胴体を真っ二つにした!
人間では考えられない威力である。


「電波によって自分の力を最大限に引き出し、異常な身体能力の
 増加を起こす…。電波の使い方は理解しているのね。」

「あああああ!!!!!!」

綾香の拳が芹香をとらえようとする!
だが、芹香はそれを難なく避けてみせた!

「力の増大はこれで五分…あえて違いを言うなら、あなたの電波は
 電波そのものを収束し、肉体的なダメージを与える物。
 でも、私の毒電波は精神攻撃を主とする物…!!」

芹香の周りに電波が収束する!

「はああああああ!!!!!!」
「………壊れなさい…!」

ちりちりちりちり…

「くううっ!!!? ああっ!!!」
綾香が失速し、倒れた。

「ア…頭が…割れ…割れる……!!」
「……全力に近い電波を放ったのに…精神防壁を無意識のうちに
 張っていたようね…。無防備なら完全に精神崩壊に陥っているはずだから…」

「くっ……ああ…!」
何とか体勢を立て直そうとするが、体に力が入らず、何も出来ない。
精神を支配され、身体の自由を奪われたのだ。

「………壊れろ…」
毒電波を放つ。

「きゃああああ!!!!」

「壊れろ…壊れろ…壊れろ…壊れろ…!!!」

何度も何度も毒電波を放つ。
だが、綾香の精神は壊れない。

「どうして…どうして壊れない……!!!」

「………ふ、ふふ…」
綾香が挑発的な笑いをする。

「クッ……!! ……まあいいわ。だったら別の方法を…!!」

どむっ!!!

「げほっ!!!」

芹香の蹴りが綾香の腹をとらえる!
「あなたの精神力が尽きるまで攻撃を加え続ければ…!!!」

ドスッ!! ドスッ!! どむっ!!

「う…! くっ! あうっ!」


「どう? 苦しいでしょう綾香。」
唇を歪めながら、さも嬉しいそうに芹香は蹴りを浴びせる。

「でもね…、私は今までもっと苦しかったの…!」
蹴りの威力が上がる。

「かはっ!!」
綾香は口から血を吐き出した。
既に幾つかの内臓が破裂している。

「そうね、あなたにもわかるように少し話をしてあげましょう…」



「あるところに二人の姉妹がいました…。一人は活発で何でも出来てしまう妹。
 もう一人は人との係わり合いが苦手な暗い姉。」

「妹は小さい頃から自由で、様々な人からの愛情を受けて
 育っていき、人からも信頼される存在となりました。」

「それに対して、姉は何事にも束縛された環境で育ちました。
 周りとは違う環境に生まれたために、来栖川家に生まれたために…
 少女は“来栖川”の名が付くだけで特別視され、つまはじきにされてきました。」

「幼年期が過ぎた頃、遂に少女は外の世界と隔離されたような生活を
 送る事になります。少女の祖父が決めた事でした。
 きっとその祖父に言わせればそれは愛情だったのでしょう。 ですが…」


「それが生み出した物は“少女の孤独”だけでした。」


「そして、少女は妹と再会することになります。姿の良く似た、
 でも、全ての違う妹でした。」

「その妹は少女より全てにおいて優れていました。知力、体力、社交性…
 少女が妹に勝てるものは一つもない。」

「少女を育てた祖父はいつも言っていました。
 お前は来栖川の、超一流の教育を受けているのだから…と。」

「その超一流の教育は少女にとって何だったのでしょう?」

「その教育を受けていながら、祖父がいつも“駄目”だと言っていた
 妹に勝てる物は何もないではないか…。
 正しいはずの自分が受け入れられず、愚かとされた妹が評価された事の
 怒りと、脱力感だけが少女に残りました。」

「少女は恨みました。そして絶望しました。世の全てに……」

芹香の蹴りの威力がさらに上がる!


「ですが……絶望した少女に唯一、希望を与えてくれる事が生まれました。」

「少女に好きな人が出来たのです。」

「少女を初めて普通の少女と見てくれた人でした。」

「人との係わり合いの方法を知らなかった少女は、想いをその人に
 伝えることは出来ませんでした。ですが、その人を想っているだけで
 少女には幸せでした…」

「それだけが…唯一、少女が妹に誇れる事でした…」


「しかし」


「妹は……妹は少女からその大切な人までも奪ったのです…!!!!」



「がほっ!!!」
綾香がまた血を吐いた。


「…あなたにわかる? 全てに絶望した者が唯一、希望を抱けた物を
 奪われる気持ちが!!?」

「………………」

「いや、わかるはずがないわ。そもそも何不自由なく生きてきたあなたに
 この事を話す事が…理解しろという方が無理だわ!!!」

「………………」

「私は…今こそ全てを取り戻してみせる…! あなたを殺し、あなたに
 奪われた全てを取り戻してみせる!!!」

芹香が蹴りを放つ!

がしっ。

「!!!?」
芹香の蹴りは綾香の手によって止められていた。

「……違う…」

「……?」


「…それじゃあ…それじゃ何も取り戻せないのよっ!!!!!」


綾香の拳が、芹香の顔面に入った―――――


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芹香の心を知り、しかし退かない綾香。
全てを取り戻せると信じて。挑む芹香。
二人の決着は!? そして浩之の運命は!?


次回 メタルギア・アヤカ

第三十章 『失った者、手に入れた者』


助造です。

芹香さん壊れすぎ。(爆)
こんなの芹香さんじゃないやい!
電波はこんな使い方できるのでしょうか?(できねーよ)