メタルギア・アヤカ 第二十七章 投稿者:助造 投稿日:12月27日(水)23時35分
前回までのあらすじ

核兵器保存棟への潜入を始めた綾香は
一階で智子との死闘を制し、地下二階に向かう。
辿り着いた地下二階で出会った人物は
死んだと思われたあかりだった。
生存不可能な状況から脱出したあかりの実力に
脅威を感じつつも、綾香はあかりとの闘いに挑む!

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ズガガガガガガガガ!!!!!!

あかりの放つ20mmバルカン砲が辺りをメチャクチャに破壊する!
それは綾香が今隠れているコンテナも例外ではない。

『綾香君! 奴の20mmバルカンの弾幕に真正面から挑んでも
 勝ち目は全くゼロに近い! 奴の背後を取るんだ!!』
「背後…いったいどうすればいいの!?」

『今君が隠れてるコンテナを利用するんだ! コンテナの陰に隠れつつ
 その広い部屋を遠回りに奴の背後を取りに行くんだ!!』
「コンテナの…陰に隠れればいいの?」
『そうだ。だが、急いだほうがいい。奴のバルカンは容赦なくコンテナも
 破壊するだろう。君が隠れる場所が無くなったら終わりだと思え!』
「わかった! やってみる!」



メタルギア・アヤカ 第二十七章 『必要とされる者、必要とされない者』



「隠れても無駄だよ!!」
あかりは手当たり次第に辺りの者を破壊していく。
その攻撃で、既に幾つかのコンテナが壊れていた。

「急がなきゃ…!」
綾香は出来るだけあかりから離れつつ、銃撃の轟音であかりの
位置を確認しながら、背後を狙う。

「綾香さん、どこに居るの!?」
そう言いながらあかりは綾香の姿を追う。
逃げる綾香、追うあかり、二人の闘いはこのまま膠着するかと思われた。

だが…

「ふう、ふう…」
突然あかりの歩みが止まった。
つらそうな顔をして、肩で息をしている。
綾香はそれを見てスタミナが切れたんだと思った。

あかりは元々体も屈強な方ではない。
兵器の扱いと知識は凄いが、あくまで機械で戦う戦いをしてきたのだ。
あかりは今まで、戦車や戦闘用ヘリ、戦闘機などで任務についていた。
だから、今のように超重量の大型兵器を装備して綾香を追いまわすことに
相当のスタミナを消費したのであろう。

綾香がここぞとばかりにあかりに接近する。
もう、あかりのすぐ近くまで来た。

ここで……きめる!!

綾香はコンテナの陰から姿を現し、あかりの背後を取った。

――――いや、取ったはずだった。

「やっぱりそう来たね!」
綾香があかりの背後に来たと思った時、あかりは既に綾香の方に向いていた。
機関砲が回転を始める!

ズガガガガガガガガ!!!!!

「そ、そんな!!?」
綾香は再び、コンテナの陰に隠れた!
コンテナは20mm弾で穴だらけになり、今にも崩れ落ちそうである。


「どうして?、って思ってるでしょう?」
「!!?」
あかりから離れるためにコンテナからコンテナに移動していた綾香は、
いきなりあかりに話し掛けられ、思わず辺りを見回す。
自分の居場所がバレたと思ったからだ。

「慌ててるね。綾香さん。」
「なっ!?」

今度は綾香が慌てている事をあかりが言い当てる。
まるで綾香の姿を、心を見ているかのように…

「でもね、これは姫川さんの読心能力じゃないんだよ。」
「また…私の考えている事を……!」

「敢えて言えば…第六感かな?」

綾香は何かを答えているわけではないが、あかりは
まるで綾香と会話しているかのように話を進めていく。

「私の能力はね、六感全ての発達なんだよ。」

「視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚……そして第六感の“勘”だよ。」
「六感全ての…発達!!?」

「だからね。」
あかりは綾香の隠れている方向を向き、バルカンを掃射する!

「あっ!!?」
綾香の隠れていたコンテナは瞬く間に破壊された。

「ふふふぅ…こういう事も出来るんだよ。」

「今のは聴覚を使ったんだよ。あなたの呼吸音、心音、移動する時の足音…
 これだけあればあなたの位置を見つけるには充分。」

「視覚は移動する物の姿を捉えれば、一瞬でそれが何かを識別する事が出来るし、
 嗅覚はあなたの身体から出る汗の匂い、僅かな体臭なんかも見つけ出す。
 触覚は目を瞑ってても、物に触れるだけでその姿が的確にわかる…」

「それに第六感である“勘”があるから…」

「まるで……機械ね。」
綾香はあかりのいう事を聞いてそう思った。

僅かな証拠で相手の姿を見つけ出し、捕らえ、殺す。
正に完璧な殺人兵器だ。
精密な、間違いはありえないコンピューターだ。


「さあ! そろそろ戦闘再開と行くよ!」
あかりが歩き始める。
今度は先程より歩くスピードが速い。
スタミナがなくなったというのも、あかりの演技だったようだ。

「クッ…一体どうすれば…!!」
万策尽きた綾香に残された道は、逃げることだけだった。
そろそろコンテナの数も少なくなってきた。
隠れていられる場所も少ない。

「どうしたの綾香さん! もう終わりなのかな!!?」
あかりのバルカンは今でも弾を吐き出し続けている。
弾丸が尽きる事もなさそうだ……

「本当にどうすればいいのかしらね。」
逃げながら、自嘲気味に笑う。
既にあかりに対抗する策は綾香には無かった。


「綾香さん…あなたは所詮この程度の戦士だったの!!?」

綾香を追っているあかりが叫ぶ。

「残念だよ…! 私はあなたに期待していたのに…!!」

「諦めは戦士にはいらない物だよ! 私は綾香さんはそんな人だと思ってた!」

「……どうしてなのかな…」

叫ぶあかりは綾香を嘲る表情をしていなかった。
どちらかというと悲しそうな顔をしていた。


「私には…どうして浩之ちゃんがあなたを選んだのかがわからないよっ!!!」
「!!!?」

その一言が…綾香の目を覚まさせた。

「そうよ…私は…私は負けるわけにはいかないの!!」


私は彼女の能力に圧倒されてた。自分には手の負えない
敵だと思ってた…だけど…!

「精密な機械は裏を返せばそれだけデリケートなんだ。そこを利用すれば…!」

綾香は自らあかりに近づく!
だが、姿は見せない。出来るだけ速く移動をして、あかりの
周りを徘徊する。

「一体何のつもりかわからないけど…ふふっ、やる気は出たみたいだね!
 それでこそ綾香さんだよっ!!」
あかりは綾香に向かってバルカンを掃射する!

「ダメよ! もっと私を早く捉えないとあなたの攻撃は当たらないわ!」
綾香は挑発するようにあかりに叫ぶ。

「言ってくれるじゃない! でも、忘れたの!? 私は五感の力を
 上げることができるんだよ!!」

綾香はあかりが視覚をあげる事を狙っていた。
今、綾香の手には一つの手榴弾がある。
スタン・グレネード弾…物凄い轟音と共に激しい閃光を発し、
相手の思考能力、視覚を短い間奪う物だ

綾香があかりの近くを通り過ぎる!

「そこだねっ!!」

あかりは聴覚を向上させて綾香の場所を一瞬で察知し、振り向く!
綾香の姿を確認すると、バルカン砲を放った!!

ズガガガガガガガガ!!!!!

「ぐっ!!」
その一発が綾香の脚を掠める!
だが、綾香は這いながらも近くのコンテナの陰に逃げ込んだ!

「追い詰めたよ! 綾香さん!!」

だが、綾香を追うあかりの目にある物が入った。

綾香の投げた……スタン・グレネード弾だった!


ゴオォォォォォォン!!!!!

「きゃあああああ!!!!」
轟音があかりの耳を劈き、激しい閃光があかりの視界を奪う!
視覚、聴覚の機能が発達している今のあかりには、
轟音は聴覚器官を破壊し、閃光は視神経をズタズタにした!

倒れるあかりに、綾香はMP5A5の追い討ちをかけた…




「ふふ…やっぱり…こうなっちゃったね…」
倒れたあかりは相変わらず微笑んでいた。
その顔は自らの血で染まっている。

「やっぱり…?」
「うん…浩之ちゃんに…必要な存在は…私じゃなくてあなただった…
 浩之ちゃんが選んだのは…あなただった…」

「少し残念かな……ずっと…小さい時から…誰よりも一番近くで…
 浩之ちゃんのこと…見てたのに……」

「神岸さん……」

「あれれ? どうしてそんな顔をするの…? 浩之ちゃんは…
 あなたを選んだんだよ…そんな顔しないで…ね?」
「私には……浩之に選ばれる資格はある…かな…?」

「もっと…自信を持ってよ…浩之ちゃんは…誰にも渡したくなかった。
 だけどね…」

「あなたなら…浩之ちゃんを…渡しても…いいかな…?」

「悔しいけど…あなたの事…認める…!」

あかりはそう言って眠った。
その顔は…とても安らかな物だったという。

「神岸さん………ありがとう…」


綾香は一言だけ言って部屋を後にした。

感謝の言葉だけを言って…


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この闘いを終わらせるために……
綾香は芹香の元に辿り着く!
そして遂に動き始めるセリオ! 
闘う綾香の前に現れた人物とは!?


次回 メタルギア・アヤカ

第二十八章 『さようなら、綾香』


ども、助造です。

やっぱりか! やっぱりこういう展開なのか!?(爆)
俺にはこういう展開しかないのか!!?(爆)