メタルギア・アヤカ 第二十四章 投稿者:助造 投稿日:12月24日(日)23時30分
前回までのあらすじ

通信塔を抜け、遂に核兵器保存棟に
辿り着いた綾香。
だが、彼女を待っていたのは異常気象による
吹雪と綾香を狙うレミィの挑戦だった。
死闘の末、綾香はレミィとの再戦を制するが、
その後、レミィの心の内を知ることになる。
レミィとの悲しい別れを終えた綾香は
核兵器保存棟への潜入を開始する!

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2001年 1月1日 午前2時42分 核兵器保存棟

核発射指定時刻まであと2時間18分



カン、カン、カン、カン……

規則正しい金属音が核兵器保存棟の廊下に響く。

「ハア、ハア、ハア……」

それに続いて規則や正しい呼吸音が聞こえる。
まるで何かに憑かれたかのように一人の少女が走り続けているのだ。

彼女の名は来栖川綾香。
全てを背負い、一人闘い続ける少女。

「ハア、ハア、ハア……」

彼女は走り続ける。

この闘いに決着を着ける為に……


メタルギア・アヤカ 第二十四章 『戻る姿』


「ハア、ハア、ハア……ハア…」
綾香は立ち止まり、呼吸を整える。

「ここは……」
綾香の目の前にあるのは巨大な扉。
きっとこの先にある部屋もかなりの大きさなのだろう。

『ようこそ、核兵器保存棟へ!』
「!!?」
綾香はいきなり話し掛けられ、思わず声の方向を向く。

『遂に…あんたもここまで来たんやな……来栖川綾香。』
声は綾香の頭上にあるスピーカーから聞こえた。
その声の主は……保科智子である。

『まあ、結局頼りに出来るのは自分っちゅうことやな。誰も
 あんたを止める事は出来へんかった……』
「…………」
『……次の相手はウチや。それを知ってまだ先に進みたいというんなら…』

『この扉を通って中に来い。あんたには勿体無いけど、
 この部屋をあんたの墓場としてプレゼントしたるわ。』

智子がそう言うのと同時にスピーカーからの声は止まった。

「……上等じゃない」
綾香は躊躇わず扉を開いた。



「やっぱり来よったな…」
中にいた智子が笑っている。

「ま、当然やな。ここまで来て引き下がってもろたら、うちかてつまらへん。」
智子はそう言って綾香に一丁の銃を投げた。

「これは……?」
「サブマシンガンMP5A5……30発まで連射可能なマシンガンや。」
「そんな事は訊いてないわ。……一体どういうつもり?」
綾香は警戒した表情をしながら智子に問う。
「何やの? うちがそんなに信用できへん?」
「できないわね。」

智子はそれを聞くとまた笑った。
「ハハハッ……大丈夫や、何の仕掛けもしてへんわ、その銃には。」
「………」
「それとも……うちに生身で勝負するん?」

綾香は暫し考えた。
智子の言う事は信用できるかわからないが、智子の言う通り、
生身で智子と闘うのは危険である。

今回のテロに参加しているLeafメンバーの中では
三人の特に戦闘力の高いメンバーがいる。
来栖川芹香、神岸あかり、そして今、目の前にいる保科智子だ。
智子の実力は、綾香も今回の事で何度も目にしている。
情報によれば超高速で移動する事ができ、特殊な攻撃が出来ると言う。

「……そうね。だったら遠慮なく使わせてもらうわ。」
綾香はMP5A5を手にした。
「そう、人の好意は受けとっておくもんや。」


「さて……そろそろ始めよか?」
「ちょっとまって。」
「何やの? 今更怖気づいたわけでもないやろ?」

「一つ聞かせてもらうわ。」
「?」

「あなたがここにいるって事は…葵は……」
綾香がそう言うと智子は唇の端を歪めて答えた。

「勿論、うちが殺した。うちが考えた作戦に失敗は許されへんのや。
 そやからああいう不安要素は徹底的に潰す。」
「だから……あなたは葵を殺したの?」
「それがうちのやり方や。」
「……あなたは共に闘った仲間の命を…取った時に何も感じなかったの!!?」
「うちらは戦争のプロや。勝つ事を最優先するのが参謀長としての務めや。」
「だからって…あなたは何も感じないの!!?」
綾香の態度の急変に智子は理解できないといった表情をする。

綾香が智子の考えに対して怒りを表すのには訳があった。

綾香は過去に、大切な戦友を失っている。
坂下好恵。
彼女は一年前の出来事で綾香を庇い、その命を落とした。
綾香はそのことで苦悩し続けた。
好恵が自分を庇い、死んだ事。
綾香はその時、敵の部隊を一人で完全に全滅させている。
好恵を殺された怒りが綾香にそのような事を可能にさせた。

綾香は確かに戦士である。
だが、綾香にはまだ優しさというものがあった。
戦友の死を簡単に割り切る事が出来ない優しさが…
その優しさは戦士としては不必要な物なのかもしれない。
だが、綾香はそれを捨て去る事は出来なかった。
優しさが故に戦友の死に怒る。

今回もそれと同じだった。
ただ好恵が葵に変わっただけだった。
自分を庇い、死んでいく仲間。
死んでいく仲間を助ける事が出来なかった無力感が綾香を襲う。
そしてそれが綾香を飲み込んだ時、綾香は逃げ道を探し始める。
戦友を死なせた事への償い方を…

初めに思い浮かぶのは死で償う方法。
責任をとって自害する。
だが、それが何になるというのだ?
それはただの偽善でしかない。
意味がない。

ならばどうすればいい?

償いの方法は?


復讐


それが綾香の取った償いの方法だった。
綾香の中が黒く染まっていく…
戦士としての殺人衝動が綾香を包み込んでいく…

復讐。
そう、復讐だ。

殺せ、殺せ、自分から大切な人を奪った者を。




「………」
「…?」
綾香の様子が変なのに智子も気付く。
先程までの綾香とは違う。

一言で言えば黒。
綾香が黒に染まっていた。

「……殺す」
「!?」
突然綾香が呟いた言葉に智子は思わず言葉を失う。

「あなたは葵を殺した…葵は苦しかったはず…だからあなたも…」
「……あなたも殺す、か? ククク…面白い! 面白いやないか!!」


綾香は一年前の綾香に戻っていた。

狂気と怒りに身を任せ、殺戮を行う綾香に……


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復讐の念に身を任せ鬼と化す綾香。
あくまで冷静に闘う智子。
二人の勝負の行方は!?


次回 メタルギア・アヤカ

第二十五章 『異世界から来た者』


…助造です。

やっと委員長との勝負に持って来れました。(笑)
きっと、オリジナルっぽくなるでしょう。