メタルギア・アヤカ 第二十一章 投稿者:助造 投稿日:12月17日(日)22時34分
前回までのあらすじ

テロリストの核発射を防ぐために、
綾香は単身、核兵器保存棟へと向かう。
雅史の拷問を耐え切り、何とか脱出に成功した
綾香は、核兵器保存棟への道である通信塔を進む。
そこにはあかりの操るハインドDが待ち伏せしていたが、
何とか逃げ切る事が出来た。
ハインドへの対策を考えていた時、綾香は長瀬と出会い、
聞きたい事があるといわれたのだが…

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「戦場でも愛は生まれると思いますか…?」
「え…?」

綾香はいきなりの長瀬の質問に耳を疑った。

「な、いきなり何を言っているのよ…」
「答えて欲しいんです。戦場でも愛は生まれるのか…」

綾香は長瀬が冗談で言っているのではないと知り、
長瀬の目を見て答えた。

「戦場は…全ての物を信じられなくするわ…一度、戦場で緊張状態を
 味わってしまうと、人間の脆さ、そして心の奥に棲む醜さが
 わかってしまう。それで人間を信じられなくなる人も多いわ。」
「……」
「確かに戦場で愛が生まれる事は難しいかもしれない。でも――」

「私は違ったわ…。確かに戦場で色々と人の暗い部分を見てきた。
 戦争はいつも人の醜い部分が生み出すものだから…。
 戦場で、目の前で大切な人が死んだりもした。
 でも…私には信じられる人がいたわ。どんな事があっても
 信じられる人が……」

「それが…藤田君だったのですね。」
「う、うん。ま…そういう事になるわね…」
綾香は照れ隠しに俯いてそう言った。


メタルギア・アヤカ 第二十一章 『叶うはずの無い愛』


「そうですか…つまり、綾香お嬢さんは戦場でも
 愛が生まれる可能性はあると…?」
「私はそう思うわ。」


「…じゃあ、もう一つ質問、いいですか?」
「まだあるのかしら? 別に良いけど…」

「戦場でも、愛は享受できるのでしょうか…?」
「享受…ね。」

綾香は考えた。

「さっきも言ったけど、どこでも、そしていつでも愛は生まれる。
 勿論、それを享受することは出来るはずよ…」
「そうですか…」

「でも、必ずその人を守ってあげなくちゃいけないと思うわ。
 それには男も女も関係ない。自分の愛を受け入れてくれる人を
 守り通す事が必要よ…」
「……」

「…私には、もう浩之を愛する権利は無いのかもしれない。私は浩之を
 守る事が出来なかった…」


あの時の記憶が浮かぶ。



綾香っ!!逃げろ!!お前はまだいろいろとやらなくちゃいけねぇんだろうが!!

あくまでも綾香の事を気遣う浩之。

逃げろ…狙われてんのはお前で、俺は囮なんだろ?…だったら早く
逃げてくれよ…頼む…

大怪我を負いながらも私を気遣った浩之。

うわああああ!!!!

私の代わりに狙撃された浩之。



「…私は浩之が苦しんでいるというのに…何も…何も出来なかった…」
綾香の身体が怒りに震える。
何もできなかった自分自身への怒りに。

「…撃ったのは…レミィですか…?」
「そうよ、彼女は浩之を撃った…」
それを聞く長瀬の顔は何処か悲しげだった。



「さて、私は無事に通信塔Bに来る事が出来たんだし、このまま
 核兵器保存棟に向かうわ。」
綾香はそう言うと螺旋階段を下り始めた。

「待ってください!」
急ぐ綾香を長瀬が引き止める。

「何? まだ何か質問があるの…?」
「いえ、そういう訳ではないんですが…実は、この螺旋階段は
 少し下のほうで破壊されているんです。」
「そんな…じゃあ、下には降りられないじゃない!」
「実は別の手段があるんですよ。私は今ここにいる五階まで
 エレベーターを使ってきたんです。それを使えば…」
「エレベーター!? それは一体どこに?」

「通信塔のエレベーターは九階、つまり屋上と一階の二つしか行き来する事
 が出来ません。だから私は、九階からは階段を使って下に下りました。
 で、五階で綾香お嬢さんに会った、というわけです。」
「でも…じゃあ、あなたは一体何処から通信塔Bへ来たの…?」
「私には光学迷彩がありますから…奴らの輸送車に隠れて通信塔の近くまで
 来る事が出来たんです。綾香お嬢さんには訊きたい事がありましたから…」
「それで私を探すために通信塔Bまで来た、と…?」
「はい。」
「じゃ、エレベーターを使えば核兵器保存棟にいけるって事ね。」
綾香はすぐに九階を目指して走り出した。



「ハア…着いたわね…」
綾香はエレベーターの前に立っていた。
少し遅れて長瀬が来る。

「早く行きましょう。」
長瀬はエレベーターのスイッチを押す…が、
「あれ…動かない…どうして? さっきまで動いてたのに…」
長瀬は何度もスイッチを押すが、エレベーターが動き始める様子は無い。

「…どうなってるの?」
「…先程まではきちんと作動したのですが…おかしいですね…」
長瀬はエレベーターを調べてみる。
「ふ〜む…何がおかしいのかはわかりませんが…少し調べてみれば
 何かわかるかもしれませんね。」
そう言って長瀬はポケットからいろんな工具を出す。
「なにそれ、いつも持ち歩いてんの?」
「ええ、私はね…」
長瀬は慣れた手つきでエレベーターを調べ始める。
「直せそう?」
「う〜む…原因がわからない事には何とも…」


『綾香さん!!そこにいるんでしょう!!?』
「なっ!!? どうして!?」
外からあかりの声が聞こえたので綾香は咄嗟に身構える。

『ふふふ…やっぱりそこにいたんだね。』
「くっ…」

機銃を掃射する音が聞こえ、見る見るうちに屋上へと通じる
扉が破壊されていく。

『綾香君!! 奴は君を屋上で待ち伏せしている!はやく
 何とかしないと…』
「ええ、長瀬さんが危険だわ!」
『君はハインドを! 長瀬主任が修理をし終わるまでの時間を稼ぐんだ!!』
「う、うん、わかった!!」
綾香は扉に向かう。
「あっ!!? 綾香お嬢さん!!」



『ふふふ…もうそろそろ決着をつけましょう? 綾香さん…』
「そうね…」
あかりのハインドが綾香に向かい、突っ込んでくる!

『これで、終わりだよっ!!』
あかりが機銃を撃ち始める。

「綾香お嬢さん!! これをっ!!」
「!?」
綾香は後ろから長瀬に呼ばれ、振り向いた。
そこには…スティンガーミサイルがあった!

「くっ!!」
綾香は横に回転して、建物の陰に隠れ、機銃を凌いだ。

「今度はこちらの番よっ!!」
綾香はすぐ側に落ちているスティンガーを拾い、
肩に担ぐようにして構える。

ピピピピピピ!

標準を通り過ぎていったハインドに合わせる。

ピーッ!

「これで…終わりよ…さようなら!!」

バッシュウウウウウウ!!!

スティンガーは一直線にハインドに向かっていき、

ズガァァァァァァンン!!!

激しく爆発した!
ハインドは炎に包まれて少しずつ高度が下がっている。

『くっ!! バ、バカな!!こんな事って…!! お、堕ちないで!!』
しかし、プロペラに爆撃を受けたハインドは
機体を回転させながら堕ちていく…

『わ、わああああああ!!!!』

あかりはハインドと共に地上に落ちていく。


一寸置いて激しい爆音が聞こえた…





綾香が通信塔内に入った時、既に長瀬の姿は無かった。
綾香は長瀬に通信を入れた。

『綾香お嬢さん、今の音はハインドの…?』
「そうよ、私が堕としたわ。」
『ははあ…やはり凄いんですねぇ、綾香お嬢さんって。』
「それより、エレベーターの方はどう? 直ったのかしら?」
『ええ、もう完全に直りました。いつでも下に降りる事が出来ますよ。』
「ありがとう、長瀬さんも気をつけてね。」
『ははは…わかりました。』


綾香はエレベーターに乗る。
様々な想いが綾香の中を駆け巡った。

これから遂に核兵器保存棟に綾香は潜入する。
長かった闘いも少しずつ終わりが見え始めているのだ。
自分は無事に生き残る事は出来るのだろうか…
そんな思いが綾香の中にあった。

エレベーターが停止し、ドアが開く。

綾香はその部屋から外に出た。


「な…!? ゆ、雪…?」
綾香が外に出ると、一面、雪の景色だった。
それも物凄い吹雪…

『異常気象だ、綾香君。先程、気象衛星から情報を得たんだが
 硫黄島付近に物凄い寒波があるらしい。』
「そんな…ここは冬でも暖かい島よ…魔法でも使わない限り…」
『だから異常気象なんだ…専門家も初めて聞くそうだ。硫黄島の雪などとは』
「そう…」

綾香は雪の中を先に進む。
猛烈な雪で前方2〜3m程までしか見えない…

「うわあ…もう積もり始めてるじゃない…」
綾香は自分の足元を見た。

BANG!

「!!!?」
綾香が足元を見た瞬間、その僅か横を銃弾が掠めていった。


「アヤカ…あなたはワタシが狩る…!!」

レミィとの再戦が始まる―――


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綾香とレミィの再戦!
それを知り、綾香の元に急ぐ長瀬。
長瀬の想いは届くのか…!?

次回 メタルギア・アヤカ

第二十二章 『私には何が出来た?』


どもども、助造です。
いや〜、がんばるっきゃないっすよ(謎)