メタルギア・アヤカ 第二十章 投稿者:助造 投稿日:12月17日(日)22時33分
前回までのあらすじ

テロリストの核発射を防ぐため、
単身、核兵器保存棟に向かう綾香。
しかし、綾香はレミィの罠に引っかかってしまい、
敵に捕らえられてしまう。
雅史の拷問を耐え切り、何とか脱出に成功した綾香は
核兵器保存棟への潜入口である通信塔を上る。
通信塔の屋上で綾香を待っていた者は……!!

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『綾香さん・・・残念だけどあなたにはここで死んでもらうよ!!』
上空を旋回していたハインドが綾香の方に向かってくる。
そして機銃を掃射し始めた。

「くっ!!」
綾香は近くの建物に隠れ、機銃の掃射を避けるが、

『隠れても無駄だよ!!』
あかりはすぐに綾香を見つけ出してしまう。

「ここは隠れるものはあるけど、完璧に死角の無い場所は見当たらない…
 それにハインドは上空から攻撃してくるし…上からの攻撃を防ぐ事は
 不可能だわ!」


メタルギア・アヤカ 第二十章 『降ってきた破壊の天使』


そこでやっと綾香は自分が罠に嵌った事に気付いた。
綾香が先程、通信塔A五階から通信塔Bに渡ろうとした時、通信塔Bへと
続く渡り廊下への扉が完全に破壊されていた。
綾香はその事を綾香の体力を消耗させるための小細工としか考えていなかったが、
あれは綾香を屋上でハインドと戦わせる為の罠だったのだ。
屋上であれば、綾香が建物に逃げ込んでも、上空から攻撃する事が出来る。
そして、ここに来た時に放たれた多弾頭ミサイルは、綾香を通信塔に
逆戻りさせないために、屋上の扉を破壊するための攻撃だったのだ。
綾香がどれだけ逃げ続けようとも、あかりは執拗に綾香を追い詰める事が出来る。
綾香は完璧に屋上に閉じ込められてしまったのだ。

『ふふふ…綾香さん、武器は使わないの? 生身でハインドに立てつくつもり?』
綾香は装備を置いてきた事に後悔していた。
あの時大佐の言う通りに装備を探していれば・・・
―――いや、変わらなかったかもしれない。
あの時の綾香の武器ではハインドに太刀打ちできる兵器は一つもなかった。
そして今も…

綾香の脱出は不可能かと思われた……

「いや、あるわ…。一つだけここから脱出する方法が…」
『さて…反撃はしないんだね? そろそろ勝負を決めちゃうよ?』
ハインドが屋上から離れていく…
「一体何をするつもりなのかしら…?」
綾香はその様子を見ていた。

『行っくよ〜!!』
あかりが言うと同時に何かがハインドの機体から出された。
その何かは火を噴出し…

「じょ、冗談じゃないわ!!」
あかりが撃ったものは先程使った多弾頭ミサイルだった。
初めは一つのミサイルの集まりだが、目標に近づくと幾つにも分かれて
様々な方向から目標物を破壊する兵器だ。
一発の破壊力は普通のミサイルより少々劣るが、それが幾つもあるので
破壊力は普通のミサイルの比ではない。

「はやく逃げないと…彼女は屋上ごと私を吹き飛ばすつもりだわ!!」

綾香の手には長瀬からもらった強化ロープが握られていた。

「この長さなら…ここから降りれるはず!!」
綾香はロープを屋上の手すりにしっかりと結びつけ、それを垂らす。
ロープの先は・・・五階の渡り廊下だ。

ミサイルが綾香の元に迫る!

「よし…いくわっ!!」
綾香はロープを身体に結び付け、掴み、飛び降りた。

ズガアアアアアアンン!!!!!



「ふふふ…いつ見ても私はこの瞬間が好きだな…」
あかりはハインドを操作しながら、爆発で吹き飛んでいく
屋上を見て微笑んでいた。

あれはミサイルなんて言葉で終わらせていいものじゃない。

綺麗な…天使の羽…

それが地面に落ちると、綺麗な羽は破壊を呼び起こして、
全ての物をその業火で燃やし尽くしてくれるんだ…
こうまで美しいと破壊なんて言葉は似合わないかもしれない。
これは一つの芸術なんだ。
美しく、そして一瞬にして散っていく芸術なんだ。

美しい、そして残酷な天使…

「それが私のハインドなんだよ。ふふっ…」
爆炎の燃えさかる屋上を見つめながら、あかりは一人呟いていた。



「ぐうぅっ・・・!!」
すぐ上でミサイルが命中し、凄まじい轟音と爆風が綾香のロープを揺らす。
揺れたロープは綾香の身体を容赦なく通信塔に叩きつける。

「うわあああああ!!!!」
綾香はスピードを増しながら落ちていく。
物凄い速さで地面が近づいてくるのがわかった。
「はあっ!!」
綾香は通信塔の壁に両脚で蹴りをし、そのまま足の裏を通信塔と触れさせたまま
ブレーキを掛けようと試みる。

ズザザザザザザァァァ!!!

激しい摩擦で綾香の靴は見る見るうちに擦り減っていく!
熱が綾香の足まで伝わってくる!
「止まれぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
綾香のスピードが少しずつ落ち始めた。
だが、渡り廊下はすぐ目の前にまで迫っている!

ダメだ・・・落ちるっ!!?

綾香が思わず目を瞑った瞬間。

ビシィッ!!

身体が急に止まった。
落下中の無重力状態から一瞬にして身体に負担が戻る。

「ううぅっ!!が…!」
綾香は思わず呻き声をあげた。
ロープの圧迫感に苦しくなったからである。

「…はあ、はあ…でも、どうしていきなり止まったのかしら…?」
綾香は上を見る。
ロープが限界まで伸びきっているようだった。
運良く綾香はロープの長さに救われたのだ。

「ハア…一応は…助かったって事かしら…?」
綾香はロープを身体から外すと、それを投げ捨てた。
強力なロープとは言え、あれだけの負担が掛かり、しかも伸びきってしまった。
使い物にはならないだろう。

Pi!Pi!Pi!

綾香は大佐に連絡を入れる。

『大丈夫だったか!? 綾香君』
「ええ、なんとかね。それより…大佐、あのヘリに対抗する手段は
 何か無いのかしら?」
『…ハインドDの本当の強さはボディの耐久力にある。頑丈なボディは
 通常兵器などでは全く歯が立たないのが特徴だ。』
「それじゃあ…対抗する手段はゼロって事?」
『そうではない。通常兵器では太刀打ちできないが、ロケットランチャー、
 あるいはスティンガーミサイル等の遠距離への攻撃が可能な強力武器ならば
 ハインドの装甲も破壊できない事は無いはずだ…』
「つまり…スティンガーを手に入れなくちゃ話にならないという事ね。」
『そういう事になるな…』

「長瀬さんに聞くしかないわね…」
綾香は長瀬に連絡を入れる。
『はい、何でしょうか?』
「スティンガーミサイル…じゃなくてもいいわ。遠距離への攻撃が可能で
 破壊力の高い武器、この近くにある?」
『スティンガーですか…そう言えば昨日、通信塔Bに配備されたという
 話を聞きましたが…』
「通信塔にあるのね!!? ありがとう長瀬さん!!」
『あ、ちょっとお話が…』
「?」
『……いえ、いいです。今からそちらに向かいます。』
「えっ? あ、ちょっと! ここは危険なのよ!?」
しかし、長瀬との連絡は切れていた。

「通信塔…」
綾香は上を見上げてみる。
高い。
でも、この先には核兵器保存棟が…

「もう少し、もう少し…ね…」

綾香は渡り廊下を渡る。
五階とは言え、高さは30mほどある。
風は屋上ほどではないが、やはり強い。

綾香が渡り廊下の曲がり角に差し掛かった時、

『逃がさないよ〜!!』
「なっ!? まさか!!」

下からハインドが上昇してくる。
あかりは油断していなかったのだ!

『ふふふ…やっぱり生きてたんだね綾香さん。今度こそ死んでもらうよ!!』
機銃掃射をしながら、あかりは綾香を追う。

「くそっ!! 今は通信塔に逃げ込むしかない!!」
綾香は必死で通信塔Bまで逃げ込む。
ハインドの機銃が綾香を貫こうとしたが、
綾香は何とか無事に飛び込み、逃げ込んだ。



「はあ、はあ、あ、危なかった…」
綾香は呼吸を整えてから立ち上がった。

ガタンッ!

「!!?」
後ろで物音がし、綾香は瞬間的に後ろを向き、攻撃態勢に入った。

「敵じゃありません!! 私です!長瀬です!!」

長瀬は光学迷彩を解き、姿を現した。

「な、長瀬さん…?」
「さっき言いましたよね。聞きたいことがある、って…」
「聞いたけど…そんなに大切な事なの…?」
「ええ、きっと大切なんです。今の私にとっては…」

「綾香お嬢さん。」
「ん?」


「戦場でも愛は生まれると思いますか…?」



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いきなりの長瀬の言葉に、思わず
困惑してしまう綾香。
そしてハインドとの決着は!!?

次回 メタルギア・アヤカ

第二十一章 『叶うはずの無い愛』


祝! 二十話達成!!(ワー、ドンドン、パフパフ)
な〜んて言っておられません。
今更になってSSの基本を知ることになりました。