キン肉マン・マルチ 第二章(3) 投稿者:助造 投稿日:12月13日(水)22時33分
前回までのあらすじ

東鳩超人選手権。
各地から集まった強豪東鳩超人の中から
最強の東鳩超人を決定するためのこの大会に
マルチとセリオは参加する事となった。
一回戦が始まり、琴音と雅史の試合は
琴音の勝利に終わった。
そして、遂にマルチの試合が始まる・・・

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キン肉マン・マルチ 第二章 東鳩超人選手権編 第三話



『Aブロック、一回戦第二試合が始まります。選手の方は・・・』

集合のアナウンスが入る。
アナウンスと共にマルチがリングに向かう。

「マルチっ!初戦が大事だからな、気を引き締めていけっ!!」
今大会では長瀬がマルチとセリオのセコンドを務めている。

「はいっ!!頑張ってきますっ!!」
マルチはそう言ってリングに上がった。

『赤コーナー・・・超人強度56万パワー、HMX−12マルチ。』
『青コーナー・・・超人強度74万パワー、橋本。』

「よろしくお願いします〜!!」
マルチは観客の声援にいちいち頭を下げてまわっている。
それがまた観客にウケるらしく、観客は更に声援を送る。

「さて・・・そろそろ、両者構えて・・・」

レフェリーが二人をリング中央に集める。
橋本はマルチを睨みつけているが、マルチはそんな橋本を
不思議そうに眺めている。
あまり緊張感が感じられない。

「レディ・・・」

レフェリーが試合開始を告げる前に橋本が出た!

「そらっ!!」
「あわわっ!?」
橋本は自分のコスチュームを脱ぎ、マルチに被せる。

カーン!!

今、試合開始のゴングがなった。

「ああうぅ・・・見えませ〜ん・・・!!」
試合開始前に攻めるという事は、超人同士の闘いではたまに起きる事である。
勿論、反則なのだが、基本的に超人同士の闘いはK.Oかギブアップまで
続くのがほとんどなので、闘いに勝利さえすればよいのである。
反則とは言ってもレフェリーはそれを止めたりはしないからだ。
反則はあくまで判定にもつれ込んだ時の為の参考でしかないのだ。
だが、試合開始を告げる前に攻撃するというのは卑怯な超人や
そういった残虐な闘いのみを好む超人しか使わない。

「へへっ!!喰らいやがれっ!!」
橋本は鉄製のナックルを取り出し、それを装備してマルチを攻撃する。
「あうっ!あうっ!あうっ!あうっ!」
服を被せられ、目が見えないマルチにはそれを避ける事が出来ない。
マルチは今までこのようなダーティー・ファイトを経験した事がなく、
どう対処したら良いかわからないのだ。

「マルチッ!!まずは服をどうにかするんだ!!服があっては
 視界が遮られ、どうする事も出来ん!!」
長瀬がリングの外からアドバイスを送る。

「はっ、はいぃぃ〜!!」
マルチは服を払い、顔を上げる。

「うらっ!!」
橋本は今度は隠し持っていたコショウを振りまき、目を潰す。
「きゃっ!!」
マルチは後退し、バランスを崩して倒れてしまった。

「ハハハー!!俺様の勝ちだぜー!!」
倒れ、目が見えないマルチに橋本はストンピングで攻める!
「きゃああああ!!!」


「てめぇ!!やる気あんのかぁ!!」

「帰れバカヤロー!!この卑怯者ぉー!!」


観客も橋本に非難の罵声を浴びせる。
だが、橋本のダーティファイトは止まらない。

「黙りやがれ!!勝ちゃいいんだよ勝ちゃ!!」
橋本は更にマルチを攻める。
「あうわああ・・・!!!」

「へへっ!!そこのあんた、今すぐあんたんトコのマルチをぶっ潰して
 やるぜ!!ようく見てな!!」
「・・・・・・」
橋本はコーナーの上に登り、フライングボディプレスをマルチに浴びせる。

「かはっ!!」
マルチが苦しそうに息を吐く。
「はっはっはー!!どうだ、見たかい!?」
橋本は長瀬の方を向く。

「これであんたのマルチも――――
そこで橋本の声は止まった。

長瀬はじっと橋本を見ていた。
何もものを言わず、ただ橋本を見据えていた。

それを見る橋本は震えていた。
長瀬の目に。
リングを見つめる、いや、橋本を睨んでいる長瀬の目は
橋本が今まで見た事のない目だった。

何だ・・・このおっさんの目は・・・!?
今まで俺を非難や怒りの目で見てきた奴は数多く見てきたが
このおっさんのは違う。
・・・恐ろしい・・・まるで相手を睨み殺すかのような目だ。
おい・・・こんな目は俺は見たことがねぇぞ・・・!!
俺はこのままマルチを潰しても良いのか!?
今はこのおっさん何もしねぇが、試合が終われば話は変わってくる・・・
試合が終わった後におっさんが俺に挑んで来たらどうする・・・
勝てる気がしねぇぞ・・・俺なんか殺されちまう気がする・・・

このおっさん、本当に人間か・・・!?
いや、人間なわけがねぇ!こんな、こんな恐ろしい目をしてる
人間なんかいるわけがない。
こいつは・・・こいつは・・・
こいつは超人の、それも―――――

橋本の思考はそこで途絶えた。

「たああああ!!!!」
呆然としている橋本の背後に回り、マルチは逆転の
ジャーマンスープレックスの体勢に入る。
橋本は抵抗すらする時間がないままK.Oされた。

『勝者!HMX−12、マルチ!!』
レフェリーが勝ち名乗りを上げる。

「やりましたあ!!しゅに〜ん!!」
マルチは長瀬の元に駆け寄る。
その姿を橋本は見ていた。

長瀬はいつものようなのんびりとした表情に戻っていた。

「長瀬源五郎・・・一体何者なんだろうな・・・」
もちろん橋本に答えはわからない。
ただ・・・長瀬の目は普通ではなかった。

橋本は一人、会場を後にした。



『一回戦Aブロックの部は全て終了しました。これより、一回戦Bブロック
 の部を始めます。選手の方は・・・』
アナウンスがAブロックの部終了を告げる。
Bブロックの参加者達が次々とリングに集まる。
その一人にセリオもいた。

「セリオさ〜ん!頑張ってくださいねぇ〜!!」
マルチが向こうからぴょんぴょん飛び跳ねながらセリオに声援を送っている。
セリオはそんなマルチに微笑みだけを返した。

『Bブロック、一回戦第一試合が始まります。両者、入場してください』
アナウンスと共にセリオがリングに向かう。

『赤コーナー・・・超人強度97万パワー、HMX−13セリオ。』
『青コーナー・・・超人強度90万パワー、保科智子。』

遂にBブロックの試合が始まった。
先程より一層大きい歓声が送られている。

「うわあ・・・すごい歓声ですぅ!さっきまでも凄かったですけど
 Bブロックの試合は私たちのときより更に歓声が大きいですー。」
「それはそうだろうな・・・なんと言っても」
長瀬はリングの方をちらりと見る。
「Bブロックには前回の優勝者、神岸あかり君がいる。彼女の闘いを
 観にこの会場に来ている人々も少なくないんだよ」
「へえ・・・凄いんですねー、あかりさんは・・・」

マルチはあかりを見た。相変わらずニコニコと微笑んでいる。
だが、マルチは知らない。
その微笑の奥に激しく渦巻く気持ちがあることを・・・

レフェリーがいつものようにセリオと智子にルールを話している。

「それでは・・・両者構えて・・・!」
レフェリーが言うと同時にセリオと智子の両者は構えをとる。

「セリオさ〜ん!!頑張ってくださ〜い!!」


「レディ・・・ファイトッ!!」

カーン!!

闘いのゴングが打ち鳴らされた。


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どもども、助造です。

Bブロックの部に移る事ができました。
ちなみにこのSS、雑魚との闘いはすっ飛ばす構成で行きます(爆)
橋本とか・・・