メタルギア・アヤカ 第十九章 投稿者:助造 投稿日:12月9日(土)14時21分
前回までのあらすじ

テロリストの核発射を防ぐため、綾香は
単身、核兵器保存棟へと向かう。
途中、レミィとの狙撃線を制し、
先を急ぐ綾香だったが、レミィの策略に
引っ掛かり、捕らえられてしまう。
雅史の拷問に綾香は必死に耐えつづけたのだが・・・

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「浩之・・・だと?」
雅史は綾香の言葉に耳を疑った。

「あなたにはわからないわ・・・想いはどんな物も乗り越えられる!!」
「くだらない!!そんな事があってたまるか!!」
雅史は機械を操作しようとした、が
その左手を止める手があった。

「これくらいにしておけば?雅史ちゃん」
雅史を止めたのはあかりだった。
いつものようににこにこと微笑んでいる。
ただ、それを見つめる雅史の顔は青ざめていた。

「これ以上やっても、もう意味がないよ?」
「ちっ・・・!!」
雅史はそう言い残すと部屋から走り去っていった。

「どうして・・・・?」
綾香はあかりに問う。
「ん?ああ、別にあなたを助けたかったわけじゃないよ。ただ、
 あれ以上あなたを責めても何もでてこないと思ったからね。」
「その判断は・・・きっと正しいわ・・・」
あかりは拘束器具を外すと、綾香を立たせた。

「綾香さんを牢に連れてって!」
「はっ!」
見張りの兵士が綾香を連れて行く。

「ふふふ・・・綾香さん、もっと私を楽しませてね・・・」

綾香を見送るあかりの顔は不敵に笑っていた。


メタルギア・アヤカ 第十九章 『HIND−D』



1月1日 午前1時9分 HM研究所一階 


ガチャン!!

綾香は部屋に放り込まれると、糸の切れた人形のようにぐったりと倒れた。

「浩之・・・」
綾香は浩之のことを考えていた。
一応は雅史の拷問に勝った事になるので、浩之の命は雅史に奪われる事はない。
その安心感が綾香の緊張を解く。

「浩之・・・私は頑張ったよ・・・あなたのために頑張れた・・・」

「今どうしてるの・・・?怪我は大丈夫なのかな・・・」

「浩之・・・」

緊張の解けた綾香の目から一つ、また一つと雫が零れていく・・・
綾香は浩之のために拷問を耐え切った。
だが、綾香は何か別の不安に押しつぶされそうになっていた。

もう、二度と浩之の顔が・・・元気な顔が見れなくなる・・・

何故かそういう想いが綾香の心に生まれていた。
そう思うと浩之への想いがせきをきったように涙として流れ出した。
自分が何故泣いているのかは綾香自信にもわからなかった。



Pi!Pi!Pi!

大佐からの連絡が入る。
それが綾香を現実に引き戻した。
まだ・・・闘いは終わっていないのだ。

『・・・大丈夫なのか!?綾香君!』
綾香は自分の目をゴシゴシと擦り、泣いていた事を誤魔化す。

「うん・・・ええ・・・問題ないわ・・・」
綾香はそう言うが実際のところ立っているのもつらい。
ほぼ気力だけで雅史の拷問を耐えていた綾香の身体は緊張が解け、
一気にガタがきてしまったのだ。

『災難だったな・・・だが、おちおちと休んでもいられないのだ、綾香君』
「わかってる・・・もう奴らの指定した時間まであと四時間ほどしかない・・・」
『君には何とか脱出してもらい、任務遂行を続けてもらいたい。チャンスはきっと
 あるはずだ!諦めないで頑張ってくれ・・・!!』
「わかった!」


「そうは言ったものの・・・どうやってここから抜けようかしら・・・」
幸い、今は周りには警備の兵はいないが、部屋の壁は人間の力で
壊せるようなものではなく、鍵もない。
時間がたてば見張りの兵も戻ってくるだろう。

「そうだわ・・・長瀬さんならどうにかしてくれるかも・・!」
綾香は早速、長瀬に連絡する。

『何ですか?綾香お嬢さん・・・』
「長瀬さん、私、今監禁されてるのよ。きっとHM研究所の何処かだと思う。
 長瀬さんは場所を知らない?」
『HM研究所ですか・・・それなら一階に監禁に使える部屋があったはずです。
 そこなら今私も近くにいますよ。今からそちらに向かいます・・・』
「お願いするわ・・・」

 


「兵士さ〜ん、あれの準備は終わったかな?」
あかりは兵器整備をしている兵に訊く。
「ああ、あれですね。もう既に三十分ほど前に整備は終了しましたが・・・何か?」
「ありがとう。えっとね、もうそろそろあれの出番かな〜と思うの。」
「あれで一体今度は何を堕とすのですか?」
「堕とすんじゃないんだけどね・・・今度は」
「は?」
「あれで戦う事になると思うんだよ、きっと。」
「まさか・・・冗談でしょう!?」
「ううん、きっとそうなると思うよ。私の何かがそう言ってる。」

「まさか・・・ハインドDを飛ばすのですか!?たった一人のために!?」
あかり達の前には漆黒のボディの戦闘用ヘリがあった。




「・・・・・・」
綾香は無言で長瀬を待っていた。
その時、部屋の扉を誰かが叩いた。
・・・が、姿は見えない。

「どこ?長瀬さんなんでしょ?」
「私はここにいますよ、綾香お嬢さん」
長瀬が光学迷彩を解く、だから姿が見えなかったのだ。

「これは手ひどくやられましたね・・・」
長瀬は自分のポケットから前もって濡らしてきたハンカチを出すと
綾香の頬に当てた。
「ありがとう・・・」
殴られて熱くなった頬に冷えたハンカチが気持ちよかった。

「あれ・・・このハンカチ、血が付いてる・・・」
「えっ?あ、それは・・・」
「?」
「・・・そのハンカチは実は私のじゃないんですよ」
「え?」
「レミィさんから借りていたんですよ。」
「レミィから?!」
「ええ、私があの人たちに命じられてセリオの整備をしている時に
 うっかりと手を怪我してしまいましてね・・・その時彼女が
 自分のハンカチを取り出して私の怪我に手当てをしてくれたんです」
「・・・・・・」
「彼女、悪い人じゃないんですよ・・・」
その話を語っている長瀬の瞳にはいつもとは違う何かがあった。
「それとロープです。」
「ロープ?」
「ええ、何かの役に立つかもしれないと思いましたんでねぇ・・・
 相手を拘束するのにも使えますよ?」
「ふ〜ん・・・」
「因みにそれはとても強い素材で作ってありますので。」
「・・・うん、頂いとくわ」


「しかし・・・大変な事になりましたね・・・」
長瀬は綾香の入っている部屋を見て顔をしかめた。
「そうなの!お願い!ここから出して、もう時間がない・・・!!」
「残念ですが・・・私の力ではどうする事も・・・」
「そんな・・・近くにいる兵士を倒してここの鍵を手に入れてくれれば・・・」
「私には無理です・・・」
「ち、ちょっと待ってよ!!」
「そろそろ警備の兵が戻ってきます・・・すみませんが、私のサポートは
 ここまでです・・・」
「あ、長瀬さん!!ちょっと待ってよ!!」
長瀬は綾香の声を振り切り走っていった。


「一体・・・どうすれば・・・」
綾香は項垂れた。
長瀬からの救出が絶たれた今、綾香にはなんの策もない。
そこに鼻歌交じりの兵士が戻ってくる。

「・・・・?」
項垂れていた綾香は兵士の鼻歌が聞こえなくなったのを
不思議に思い顔を上げた。
そこには・・・

「よ、好恵!!?」
綾香のいる部屋の前には坂下好恵が立っていた。
手に持つ剣にはそこに転がっている兵士のものと思われる
血が紅く輝いていた・・・

「・・・・・・」
好恵は無言で剣を振る。

一瞬にして扉は壊れた。


「・・・好恵・・・どうして」
「・・・・・・」
好恵はその問に答えず、光学迷彩を装備して消えた。

何はともあれ、綾香は脱出に成功したわけである。

「さて・・・任務再開といきますか・・・!!」
『綾香君。まずは君の装備を探すんだ。無線機と制服だけでは
 任務遂行はきっと困難になるはずだ。』
「私の装備・・・」
『そうだ。』
「・・・必要ないわ・・・」
『!!?』
「もう時間がないのよ・・・タイムリミットまでもう四時間をきってる。」
『それはそうだが・・・』
「装備を探すのにどれだけ時間が掛かるかもわからないし、武器は
 またどうにかやって奪い取ってみせる。」
『・・・・・・』
「大丈夫よ。私は絶対に負けたりしない・・・」

浩之がいる限り私は屈したりしない!!

綾香は部屋を出るとすぐさま通信塔へと向かった。




1月1日 午前1時32分 通信塔A


綾香は長い螺旋階段を上っていた。
通信塔Aのエレベーターは屋上で止まっているらしく、屋上、または
五階にある渡り廊下から通信塔Bに行くにはこの長い階段を上らねば
ならなかった。

「それにしても・・・長い階段ねぇ・・・」
綾香は肩で息をしながら階段を上る。
たった九階とはいえ、通信塔の高さは100mほどある。
それを階段で上ればかなりの運動になる。


「や・・・やっと五階ね・・・」

綾香は五階まで来ていた。
だが・・・

「扉が・・・完全に壊されてる・・・」
綾香はそれを見て落胆した。
何者かはわからないが、扉をメチャクチャに破壊している。
おそらく、五階から通信塔Bに渡らせないためだろう。
壊れてしまった扉は開ける事は出来そうにもない。

「はあ・・・」
綾香は思わず上を向き、溜め息を吐く。
「どうやっても私を屋上まで連れていきたいようね・・・」
綾香はまた階段を上り始めた。




「はあ・・・や、やっと着いた・・・」
綾香は最上階まで来ていた。

扉を開け、屋上に入る。

「うわっ・・・」
強い風が吹き荒れている。
硫黄島に上陸した時の嵐は去っていったようだが、まだ風が強い。
地上100mもある場所なら尚更だ。

「さて・・・とっととあっちの通信塔に渡りますか・・・」
綾香が歩き出した瞬間

ビーッ!ビーッ!ビーッ!!

謎の警告音、そして・・・

激しい閃光。

一寸置いて激しい爆音!!

「きゃあああああ!!!!」

綾香は爆風に吹き飛ばされそうになるのを必死で耐える。


「くっ・・・!一体何が・・!!?」
綾香は辺りを見回す。
通信塔Bに渡る渡り廊下が木っ端微塵に吹き飛んでいた。

『綾香さん!!残念だけどここから先に通すわけにはいかないの!!』

声は上空から聞こえた。
綾香が見上げるとそこには・・・

『だから・・・あなたにはここで死んでもらうよ!!』

漆黒のボディを持つ重攻撃ヘリを操る赤髪の少女。

神岸あかりの登場である。



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重攻撃ヘリ、ハインドD。
対抗する術を一切持たぬ綾香は
この化物ヘリにどう挑むのか!?

次回 メタルギア・アヤカ  

第二十章 『降ってきた破壊の天使』


こんちは・・・助造です・・・

次回で20話か・・・何つーか総集編(とでも呼べばいいのか?)
なんか書いてみようかな・・・なんて考えてる今日この頃です。
世界観とか、特殊部隊Leafの説明とかきちんとやりたいし・・・