メタルギア・アヤカ 第十八章 投稿者:助造 投稿日:12月8日(金)17時26分
前回までのあらすじ

テロリストの核発射を防ぐために、
綾香は単身、核兵器保存棟へ向かう。
途中、最後の人質である浩之を助け出した綾香は
些細な事で浩之と口論になってしまう。
浩之に謝ろうとしたものの、浩之はレミィの狙撃により、
負傷しする。
遠方にいるレミィに対抗できる銃、PSG1を手に入れた綾香は、
レミィとの狙撃戦に挑み、何とか勝利したのだが
そこに浩之の姿はなかった。

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「やった!!?」
レミィが倒れ込むの見た綾香はそう確信した。
綾香はハッとする。
「そういえば・・・浩之!浩之は何処!?」

綾香は辺りを見回すが、浩之の姿は何処にもなかった。
あるのは先程まで浩之が倒れていたところにある血溜まりだけ。
これだけの出血量だ。早く治療をしなければ取り返しの
つかない事になるかもしれない。

「レミィに聞くしかないわね・・・まだ息はあるはず・・・」
綾香はそう言ってレミィの元に向かった。


メタルギア・アヤカ 第十八章 『支えたもの』


レミィがいるのは非常階段を使って行ける通信塔の二階。
綾香は非常階段を上る。

「いない!!?」
綾香は驚愕した。
通信塔二階にレミィはいなかったのだ。
だが、よく見てみると血が落ちていた。
その血痕は通信塔の中へと続いている・・・
「わざわざ一階まで降りて通信塔に入ったと言うの?」

血痕は非常階段に続いており、そして一階の通信塔入り口に続いていた。

「今は・・・彼女を追うしかないわね・・・!」
綾香は血痕を追って進む。

「やっぱり・・・通信塔の中に入り込んだみたいね」
通信塔の入り口を前にして綾香は立ち止まっていた。

ビーッ!ビーッ!ビーッ!

「!!?」
突然の警告音。
そして

「動くなっ!!」
銃を構えた数人の兵士に取り囲まれた。

「フフ・・・こんなに近いと外す方が難しいネ」
そしてその真ん中にレミィがPSG1を構えていた。

「両手を挙げて!WEPONをこっちに投げなさい。」
「・・・・・・」
綾香は言われるままに銃を渡す。

「まんまと引っかかるなんて・・・ワタシはアヤカを少し買いかぶり
 過ぎていたようネ・・・」
「・・・・・・」

「選ばせてあげるワ・・・ここで死ぬか、それともヒロユキの
 死を確認してから死ぬか・・・Which?」
「・・・どちらでもないわ」
「What?」

「死ぬのはあなたを殺してからよ・・・!!」
綾香の目は虚勢をはった目などではなかった。

「フフ、OK!少しは骨があるみたいネ!」
そう言ってレミィは綾香に近づく。
そしてナイフを取り出し、綾香の顔に小さな切り傷を入れる。
「っ・・・」
「印をつけた・・・これでアヤカはワタシのTargetネ!」
「・・・・・・」
「アナタだけは・・・私がHuntする・・・」
そう言うとレミィは兵士に目配せした。

ドムッ!!

「か・・・」
兵士の銃が綾香の首を打ち据えた。
綾香は倒れる。
「連れて行きなさい!!」
「はっ!!」




2001年 1月1日 午前0時01分 核兵器保存棟 


「ん・・・」
綾香は自分が照らされている照明の眩しさで目が覚めた。
手足を拘束されて手術台のようなものに張り付けられている。

「ようやくお目覚めのようやな・・・」
「ふふふ・・・気分はどうかな?来栖川綾香さん」
張り付けにされている台が立ち上がる。
目の前にはLeafメンバーが揃っていた。

「これはまた・・・豪華なメンバーで迎えてくれたものね・・・」
「あんたは大切な客人やからな・・・」

綾香の前に立っているのはあかり、智子、レミィ、雅史の四人だった。
芹香の姿が見えない。

「姉さんは?」
「ああ、あの来栖川さん?あの人なら藤田君のとこに行ってるんやないの?」
「!!?」
「あっ・・・フフ、そうやったな。あんたは藤田君がまだ生きてるのを
 知らへんのやったね・・・」
「ヒロユキはまだ生きているわヨ。安心して。」
レミィがニッコリ笑った。

「・・・私の撃った弾丸はあなたに命中したはず・・・どうして?」
綾香はレミィに問う。
「真の実力者は用心深いものデ〜ス!」
そう言ってレミィは自分の上着を脱ぐ。
「防弾チョッキ・・・」
レミィは上着の下に防弾チョッキを装備していた。

Pi!Pi!Pi!

智子の無線機が着信音をたてる

「保科や・・・うん、それで政府の奴らは・・・?」
おそらく部下からの連絡を受けているのだろう。
内容は・・・要求の事らしい。

「うん、で、うちらの要求を呑むとは・・・何やて?政府側は要求を呑まん
 方針に決定したやと!?」

智子は無線機を叩きつけた。

「ふざけた奴らめ!!自分達の置かれとる立場がわかってへんのか!!?
 ・・・奴等、うちらの要求を呑まんらしいわ・・・」
「フン!やっぱり日本の政府はノウナシみたいネ!」
「僕たちが核という一番の弱みを握ってる事をわかってないみたいだね・・・」

「それとも・・・」
あかりは綾香の方を見る。

「来栖川さんはそんなに期待されているのかな?」
「・・・・・・」
あかりは褒めているのではない。
皮肉を言っているのだ。
現に綾香は今ここで捕らえられているのだから。

「・・・まあええわ。予定通り午前5時に一発目を発射する。」
「政府の人たちが慌てふためく姿が目に浮かぶよ・・・」


「それより・・・保科さん、あの光学迷彩の女は・・・」
「ああ、あいつか?・・・もう20数人も殺られてる・・・」
「僕も右手を・・・」

「好恵・・・」
綾香は話を聞いて好恵のことを思い出した。
彼女もまだこの基地内にいるのだ。


「さて、そろそろうちは兵士の指揮をとらなあかん。琴音が死んで
 琴音の能力の効果も薄くなってきよる。」
「私も・・・あれを整備しなくちゃいけないし・・・」
「じゃ、あとは佐藤君にまかせるわ。」
そう言って智子とあかりは出て行った。

「レミィは僕のショーを見ていくかい?」
「ワタシ?ううん、ワタシは興味がないワ・・・」
「そうかい。じゃあね。」
レミィも部屋を出て行った。
つまり・・・

「ふふふ、やっと二人になれた。」
部屋には綾香と雅史の二人だけである。

「僕は今から君に色々と訊かなければならないんだけど・・・」
「・・・・・・」
「一つゲームをやろうじゃないか。」
「ゲーム?」
「そう、ゲームさ。僕は今から君に様々な事情聴取をしようと思う。
 その事情聴取に君が屈服したら・・・君は僕のモノになり、そして」

「浩之の命をもらう」
「・・・・・・」

「君が僕の事情聴取に屈服しなければ、浩之の命は助かる。どう?
 おもしろいゲームだろう?」
「・・・いいわ。あなたの事情聴取とやらに最後まで付き合ってあげるわ。」

「そう、その強気。そんな君を僕の手で服従させてみたい・・・」
「私はあんたに負けはしない。」

「じゃあ、始めよう・・・第一ラウンドだ・・・!!」

雅史が機械を操作する。

「うわああああああ!!!!!」
綾香の身体中に電流が走る!
身体は激しく痙攣し、血液が沸騰するかのような感覚を覚える。

「フフ・・・この機械は君の身体に高圧電流を流しつづける。
 なあに、短い間なら命に別状はない程度の電流さ。」
「うわああああああ!!!!」

「苦しいだろう?服従すれば君は苦しさから解放されるよ?勿論
 その後で僕がたっぷりと可愛がってあげる・・・」
「うわあああああああ!!!!!」

雅史が機械を止める。

「くあ・・・はあ、はあ、はあ・・・」
「フフ、たっぷりと感じてくれたかな?」
「・・・私は・・・そんな趣味はない・・・」
「ほほう・・・まだ冗談が言えるのかい?じゃ、続けようか・・・」
雅史の左腕が機械を操作した・・・




「浩之さん・・・」
芹香は眠っている(正確には意識がない)浩之の前で浩之の名を呼んだ。
多量の血液を失ったためか、顔色も優れていない。
芹香はそんな浩之の頭を撫でる。何度も・・・

「浩之さん・・・苦しいのですか?傷が痛いのですか?」
芹香は浩之を自分の胸に抱く。
「浩之さん、あなたは私を支えてくれました。何もない私にいろんな物を
 与えてくれました・・・」

「今度は私が浩之さんを助けてあげます・・・全ての苦しみから救ってあげます・・・
 浩之さんを苦しめる全てを・・・私が壊してあげます・・・」

芹香は一人、浩之に囁く。

「苦しい時は私が助けてあげます・・・悲しいときは慰めてあげます・・・
 あなたを苦しませる全てから解放してあげます・・・」

「私にはそれだけの力があるんです・・・あなたのおかげで・・・
 なのに・・・なのに・・・」

「どうして・・・どうして綾香を選んだのですか?浩之さん・・・」

芹香のその言葉は綾香を選んだ事への憎しみの言葉だったのか・・・

芹香の問に答えるものはいない。

浩之の静かな呼吸音だけが聞こえていた・・・
 



「はあ、はあ、はあ・・・」
「な、なかなか強情だね・・・君も・・・」

雅史は驚いていたと共に自分の思い通りにならない事に
例えようのない悔しさを覚えた。

どうしてだ!?
どうしてコイツは服従しない!?
あれから既に一時間が経ってるんだぞ!?
今まで僕の責め苦に耐えれた者なんていなかった!!
どんなヤツでも服従させて・・・自分の物にしてきた!!
でも、コイツは一体なんだ!?
耐えてやがる・・・耐えてやがる!!
何がだ!?何がコイツをここまで支えてるんだ!?

「ふふ・・・も、もう終わり、かしら?・・・」
「・・・な・・だ・・・」
「?」
「何でだ!!何がお前を支えてるんだ!!」

雅史は綾香に平手打ちを浴びせる。
何度も何度も・・・

「何でだ!!ホラ!服従しろよ!!苦しいです助けてくださいって言え!!
 助けてくれって僕に乞えよ!!ホラ!!どうしたんだよ!!はやく言え!!」
「・・・・・・」
綾香は何も答えない。

「くそ・・・・!!!」
雅史の呼吸が荒い。
先程までの雅史とは違い、かなり取り乱している。

僕には・・・僕にはコイツを服従させられないとでも言うのか!!?


「・・・さっき」
綾香が話し始める。

「さっき、何が支えてるんだって言ったわよね・・・」
「・・・・・」
「私を支えてる物、それは・・・」


「浩之よ・・・」


綾香は短く、しかしはっきりとそう言った。


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雅史の拷問を耐え切り、脱出に成功 
する綾香。核兵器保存棟を目指し、
何とか通信塔屋上まで登りつめるのだが・・・

次回 メタルギア・アヤカ

第十九章 『HIND−D』



どーも、助造です。

今更ながら雅史が綾香に拷問っていうの、すっげぇミスマッチ(汗)
何だか話の雰囲気が変わってきたなあ・・・