キン肉マン・マルチ 第二章(2) 投稿者:助造 投稿日:12月4日(月)18時28分
前回までのあらすじ

東鳩超人選手権。
最強の東鳩超人を決定するこのトーナメント
参加の話を長瀬が持ってきた。
セリオは選手権への参加を決めるが、マルチは
その事で悩む。
ある日、テレビを見ていたマルチと長瀬はそこで
前回の優勝者であるあかりがマルチとセリオとの
闘いを望んでいるという事を知る。
それを知ったマルチは選手権への出場を決意した。

----------------------------------------------------

『ここに東鳩超人選手権を開催する事を宣言する!!』

この大会のスポンサーである来栖川グループ総帥が宣言する。
それと同時に会場の熱気も最高潮に達した!

「はわわ〜・・・人がたくさんいます〜!」
マルチは物珍しそうに辺りを見回している。
「・・・・・・」
セリオは無表情のまま会場に入る。

『只今より、大会のトーナメント表を作成します。選手の方は
 リングにお集まりください。』
「大会のトーナメント表はまだ作られてなかったんですね〜?」
「そのようです。」

セリオとマルチはリングに向かった。


リングに集まった人物は8人。
神岸あかり、姫川琴音、保科智子、橋本、矢島、佐藤雅史、セリオ、そしてマルチだ。

「では、今から君たちにクジを引いてもらう。このクジにはAとBと
 いう言葉が書いてあり、Aが四つBが四つとなっている。Aを引いた者は 
 Aブロック、Bを引いた者はBブロックでの試合となる。決勝戦は
 Aブロックを勝ち抜いた者とBブロックを勝ち抜いた者の試合となる。」

レフェリーが説明を終えると共に選手達は次々にクジを引く。

「セリオさ〜ん!セリオさんは何グループですかぁ?」
「私はBグループです。マルチさんは?」
「わたしはAグループです〜・・・闘うには決勝戦まで勝ち抜かないとダメですか・・」

「そう・・マルチちゃんはAブロックなんだ。」
そんな話をしているとあかりが話し掛けてきた。
「あっ!あかりさんですね〜!闘う時はお互いフェアプレーで闘いましょう!」
「うん、もちろんだよ!」
マルチはあかりと握手をした。
「!!?」
「あれ、どうしたんですか〜?セリオさん。怖い顔をして・・・」
「いえ・・・何でもありません・・・」

「あなたがセリオさんだね。闘う時はお手柔らかにお願いするよ。」
「・・・こちらこそ。」
セリオもあかりと握手をする。
「じゃあね、マルチちゃんにセリオさん。」
そう言ってあかりは自分の控え室に戻っていった。

「どうしたのですか?セリオさん。さっきから怖い顔してますよ?」
「いえ・・・何でもありません・・・」

確かにセリオは感じたのだ。
先程あかりとマルチが握手した時の物凄い殺意と憎悪を・・・
あかりの顔はニコニコと笑っていた。だが・・・

「神岸あかりさん・・・気を付けねばなりませんね・・・」




会場から戻った後、あかりは一人で控え室にいた。

「マルチちゃん・・・浩之ちゃんの好きな人・・・」
あかりが一人呟く。その顔は笑ってはいない。
「私から・・・浩之ちゃんを・・・」

あかりは立ち上がり、右手にグローブをはめた。
オープンフィンガーグローブのようだが、一つだけ違う事があった。
爪・・・
指の付け根の骨の突き出ている部分から鋭利な爪が生えたような
感じにグローブに爪が付いていた。

東鳩超人選手権は基本的にどんな武器でも使用して良いとなっている。
それでも大会参加者があまり武器を装備しないのは自分の肉体で闘った方
が、より強力な攻撃ができるからである。
超人という存在は人間の何百倍もの力と体力を持っている。
ゆえに武器などに頼る必要はないのだ。
だが、あかりは違った。
素手での闘いが弱いわけではない。
爪の長さの分だけパンチ攻撃のリーチも伸びるからだ。
そういう点を考え、あかりはベアークローを装備しているのだ。

「絶対・・・渡さない・・・」

「私はずっと浩之ちゃんを見てきたんだから・・・」

シャキン

あかりのベアークローが静かに金属音を立てた。




『Aブロック、第一試合が始まります。選手の方は・・・』
試合開始のアナウンスが入る。

抽選の結果はこうだ。

Aブロック一回戦 第一試合

 姫川琴音 ― 佐藤雅史 

Aブロック一回戦 第二試合 

 マルチ  ― 橋本


Bブロック一回戦 第一試合
 
 セリオ  ― 保科智子

Bブロック一回戦 第二試合 
  
神岸あかり ― 矢島


という試合になる。

まずはAブロック一回戦第一試合、琴音と雅史の勝負だ。
二人がリングに上がる。

「ルールは相手をKOするかギブアップさせるまで続くデスマッチ。
 ただし、リングアウトしてしまった場合には20カウント以内にリング上に
 上がらねば失格となる。基本的に反則技はない。武器の使用も可。
 試合時間制限もない。両選手、いいか?」

「はい。」
「わかりました。」
レフェリーがルールを説明し、二人もそれに同意する。

『赤コーナー・・超人強度75万パワー、姫川琴音』
『青コーナー・・超人強度85万パワー、佐藤雅史』
選手紹介のアナウンスが入り、両選手とも観客の声援に応えながら
リングに上がる。

「それでは両者構えて・・・」

「レディ・・・」

「ファイトッ!!」


「とりゃっ!!」
雅史は試合開始と同時に蹴りを放つ!
しかし琴音はそれを受け止め、脚をとり、雅史の身体を倒す。
と同時に素早く雅史の足首を脇の間に挟み、アキレス腱固めを極める。
「くっ・・・!!」
一瞬、物凄い力を込め、極めた後、琴音はその脚をすぐに離す。
倒れこんだままだと、アキレス腱を極めている内にもう片方の雅史の蹴りが
琴音を狙うからだ。いくら相手を極めていても、攻撃を受けたら話にならない。
一瞬で相手のアキレス腱を痛めつける。その方が効果的だ。

「ふん!!」
アキレス腱固めから脱出した雅史は琴音にドロップキックのような
感じで飛び掛り、琴音の頭を両足首で挟み込む。
そしてマットに手を付き、足を捻って遠心力で琴音を投げ飛ばす。
メキシコ殺法コルバタだ。
琴音は一直線にコーナーポストに飛んでいくが、途中で体勢を
立てなおし、着地する。

「佐藤雅史さんは足技中心の攻撃が得意のようですね。」
その試合を見ていたセリオが一人呟く。
どの選手も試合が始まれば、相手の研究に熱心になる。
その相手と自分が闘うかもしれないからだ。

「はうぅ・・・会場は何処ですか〜・・・」

ただ一人、マルチだけは控え室から会場までの道で迷っていた。


「ふふ・・・佐藤さんは足技が得意のようですね・・・」
リング上で琴音が雅史に向かって言う。
その顔にはあきらかな余裕の笑みが浮かんでいる。
「では、脚を使えなくしたらどうなると思います?」
「なっ!?」

琴音はそう言うと雅史に向かって一直線にスライディングをし、
雅史の脚を膝関節で挟む。そしてそのまま脚に力を加え、
捻って雅史を押し倒す。
「うわっ!?」
「ふふ・・・これからですよ・・・」

琴音は雅史の背後に回り、雅史の腰の上辺りに脚を巻きつけ、締め上げる。
こうされると腹が圧迫され、息を吐く事は簡単なのだが、
吸う事は難しくなる。当然かなりの苦しさが雅史の体を襲う事となる。

「レッグシザースから胴締めへのコンビネーション・・・」
「流石は姫川さん、と言ったところかな?」

「があぁっ!」
雅史は必死で胴締めから逃げようとするが、琴音の脚力は
物凄く、自分の身体から琴音の脚を引き離す事が出来ない。
琴音の脚に打撃を加え、引き剥がそうと試みたが、琴音の力は
全く緩まらない。

「まだです・・・まだ終わりではありませんよ・・・」

琴音は背後から雅史の首に腕を回し、頚動脈を圧迫しようとする。
雅史は顎を下げ、腕の侵入を防ごうとするのだが、
琴音の胴締めにより、思わず顔を上げてしまう。
下を向いたままでは、胴締めによる苦しさが増加するのだ。

「ぐうぅ・・」
「・・・・・・」

遂に琴音のスリーパーホールドが極まった。
胴締めも解いてはいない。
雅史の体は既にぐったりとしている。

「どうやら終わりましたね・・・」
琴音が雅史の体を放す。
レフェリーが雅史を見る。
雅史は完璧に落ちていた。

「勝者、姫川琴音!」

レフェリーがそう告げると会場は湧き上がった。



「姫川琴音さん、ですか・・・」


「あっ!セリオさ〜ん!あうぅ・・・やっと見つけましたぁ・・・
 試合はどうなりましたかぁ?」

マルチがセリオの元に駆けて来る。既に白いレオタードのような
コスチュームに着替えている。

「見ていらっしゃらなかったんですか?」
「うぅ・・・今まで会場への行き方がわからなくて・・・」
「試合開始から15分32秒、姫川琴音さんの勝ちです。」
「あ、そうなんですか〜」

「マルチさん、次はあなたの試合なのでは?」
「そうなんですー・・・うぅ、緊張しますー」

『Aブロック、第二試合を行います。選手の方は・・・』
試合開始のアナウンスが入る。

「あっ!私の出番ですー・・・」
「頑張ってきてくださいね、マルチさん。」
セリオはそう言ってにっこり微笑んだ。
マルチはセリオがたまに見せるこの微笑が好きだった。

「はい!頑張ってきます〜!!」

そう言ってマルチはリングに向かって行った。

---------------------------------------------------------

こんちは、助造です。

どうにか出場メンバーが決まりました。(汗)
しかし、男と女がデスマッチなんてしていいんでしょうか(笑)
う〜む・・・なんつーか格闘じゃなくなりそうだ。