キン肉マン・マルチ 第二章(1) 投稿者:助造 投稿日:11月29日(水)17時57分
前回までのあらすじ

研究所内最強メイドロボ決定トーナメント。
あらゆる開発課の存続を賭けたこの闘いは
マルチのいる第七開発課とセリオのいる第八開発課
での決勝戦となった。
セリオはマルチとの闘いでHMX−13当時の記憶と
能力を取り戻し、マルチを圧倒する。勝負が決まった
と思われたとき、マルチの火事場のマル力が発動。
48の殺人技、マルチバスターでセリオをマットに叩き伏せた。

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キン肉マン・マルチ 第二章 東鳩超人選手権編 第一話

「マルチ、セリオ、ちょっと君たちに話がある」

長瀬はある晩、マルチとセリオを呼び出した。
セリオはマルチに敗北して以来、長瀬の元で生活をしている。
感情回路も元に戻りつつあるが、セリオは素がクールなのか
相変わらずあの無機質な感じの性格は変わっていない。

「何ですかー?主任」
「何でしょうか?長瀬主任」

あの対戦以来、二人はとても仲がよい。
だが、ライバルとしての関係も、もちろん続いている。
今もセリオはマルチと一戦交えたところだった。

「うむ、おまえたちに話があるんだよ。実はな・・・」

長瀬の話の内容は来月行われる東鳩超人選手権の話だった。

Leaf超人の中で最も繁栄していると言われている東鳩超人。
彼女ら(彼ら)は年に一度東鳩超人の繁栄を祝って格闘技大会を開いている。
その中で、毎年その年の最強の東鳩超人が決定するのだ。

「で、どうする?私は上司に頼まれたのだが、別に強制する
 つもりはないぞ・・・」
「・・・私は参加します。」
セリオが答えた。
「おお、セリオ参加するのか?」
「はい、参加しなければ主任はきっと上司の方から何かしらよく思われませんし、
 そうなれば、第七開発課の人々全てに迷惑が掛かると思いましたので・・・」
「いや、私の事はどうでもいいのだぞ・・・?」
「・・・やっぱり参加します。」

「そうか・・・で、マルチの方はどうだ?」
「えっ!?わたしですか!?わたしはそんな実力ありませんし・・・」
「何を言ってるんだ。おまえはセリオに勝てたじゃないか。」
「そうです。あの時のマルチさんのファイトは技術、体力、精神面
 全てにおいて一流の実力を発揮していましたが・・・」
「あ、あの時はマグレだったんですよ!きっと・・・あの時以来わたしは
 セリオさんには負け続けてますし・・・」
「・・・・・・」
「と、とにかく少し考えてさせてください!明日までには答えを出します・・・」

マルチはそう言って部屋を出て行った。

「・・・変だな」
「何がでしょう?」
「マルチだよ、何か大会に参加する事で悩んでるみたいだったが・・・」
「・・・私はマルチさんは参加してくれると思っています。」
「私もそうだが・・・ま、明日になればわかる事だ。元々
 強制はしないつもりだったからね。」



「東鳩超人選手権・・・か・・・」
マルチは一人自分の部屋で考えていた。

確かに参加したい気持ちはある。
ダメなわたしがどれだけ通用するのかを試してみたい。
それの絶好のチャンスです・・・でも、

浩之さんが・・・心配しないでしょうか・・・
あの時、セリオさんとの死闘の後、私を抱いていた浩之さんの
肩は震えていました・・・血まみれになったわたしの体を見た時、
浩之さんが不安そうで悲しそうな顔をしました・・・
あの時は無事に(というわけでもないが)終わりましたけど、
今度は全国の超人さんが集まる大会です。
わたしは死んでしまうかもしれません。そうなると浩之さんは・・・

「浩之さんが悲しむのだけはいやですぅ・・・でも・・・」
暫くマルチは頭を抱える仕種をして悩んだ。
「・・・あうぅ〜、答えが出ませ―ん・・・」
「・・・・・むむむ・・・」
「・・・・・・」

悩み、考えたが結局その夜、答えを出す事はできなかった。


次の朝・・・

「マルチ、今日は藤田君の家に帰る日じゃないのか?」
「え・・・あ、そうでしたぁ。」
「しばらくセリオの相手のために研究所に住んでいたからな。
 今日からまた藤田君の家に行くんだろ?」
「はい・・・」
「あ、そうだ。すまないが朝食の準備をしていってくれないか?セリオは
 昨日から特訓してて思ったより充電に時間が掛かってしまったのだよ。
 まだ充電中なんだ。」
「あ、はい。」

マルチが朝食の準備をしている間、長瀬はテレビを見ていた。
朝のスポーツ特集のようなものをやっている。
今日の話題は来月から始まる東鳩超人選手権のものだった。
超人の格闘技大会は人気が高く、いまやプロレスを抜く勢いである。

「今日は昨年度の選手権チャンピオンであります神岸あかりさんを
 ゲストに呼んでおります。神岸さん、今回の選手権の自信の程は?」
「自信ですか?・・・あると言えばあります。まあ、目標はもちろん優勝です。」
「ほほう、では誰かライバルといったような人はいますか?」
「ライバルですか?大会参加者全てがライバルです。でもあえて挙げるなら
 HMX−13、セリオさんとHMX−12、マルチちゃんですね。」

「マルチっ!!こっち来い!!」
長瀬はその放送を見てマルチを呼んだ。
「えっ、何ですかー?主任。」
「この番組を見ていろ・・・」

「へぇ・・・HMX−13、セリオ選手は参加を表明したと聞いていますが・・・
 ところで、そのマルチという選手は?わたしは初めて名前を聞きましたが・・・」
「マルチちゃんですか?彼女は私もこの前初めて見たんですよ。彼女は強い選手ですよ、
 隠れた力・・・とでも言うんですか?何かそういうのを持ってるんです。」
「ほほう・・・しかし、その選手はまだ参加登録されてないそうですが・・・」
「そうなんですか・・・残念です。彼女とは一度闘ってみたいですね。」

マルチはその放送を見て・・・
「えと・・・この人はどなたですか・・・?」
「神岸あかり・・・昨年の東鳩超人選手権チャンプだ。」
「チャンピオンさんが・・・?わたしを・・?」
「そうだ、その娘がおまえと闘いたいと言ってるんだぞ。それだけ
 おまえは凄い奴、と認められてるんじゃないか?」
「わたしは・・・」
「どうだ・・・参加するか?」
「わたしは・・・わたしは・・・」

「わたしは参加したいですぅ!!!」
マルチははっきりとそう言った。

「ふふ、ふっきれたんだな?」
「はい!わたしは選手権に参加します!!」
「よーし!!よく言った!今すぐ登録してくるからな!!」



「浩之さんですか・・・?」
マルチは浩之に連絡するために電話していた。
『はいもしもし、藤田ですけど・・・ん?マルチか・・・』
「浩之さん、わたし・・・」
『選手権に参加するんだろ?』
「え!!?」
『テレビ見たよ、あかりの奴にあれだけ言われたらなあ・・・』
「浩之さん・・・」
『大丈夫だって!俺、確かにおまえが死んじまったら、なんて思ってた。
 けどよ、セリオとの闘い見て俺は安心したぜ!』
『あれだけできるんだから行ってこいよ!』
「うぅ・・・浩之さん・・・わたし・・・わたし頑張りますぅ!!」
『お、おいおい・・・ハハハ、やっぱりマルチは泣き虫だなぁ・・・』



それからあっという間に一ヶ月が経った――――

そして

『これより、ここに東鳩超人選手権を開催する!!』

戦いの幕は切って落とされたのだった・・・


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どーも、助造です。

次回から東鳩超人選手権編が始まります。
出場キャラがまだ全員決まっていません・・・(滝汗)