メタルギア・アヤカ 第十六章 投稿者:助造 投稿日:11月22日(水)21時41分
前回までのあらすじ

核発射を止めるにはセリオを破壊するしかない。
綾香はセリオのいる核兵器保存棟を目指す。
 途中、姫川琴音、松原葵との闘いを制し、
遂に最後の人質である、藤田浩之の元に辿り着く、
だが、浩之は何故か綾香を非難している態度だった。

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「綾香・・・お前何やってんだよ!!」

浩之がもう一度綾香に言う。

「何って・・・あなたを助けに来たんじゃない!!」
「助ける?・・・お前一体何の事を・・・」

浩之が軟禁されていた部屋にはいくつかのスクリーンがあった。
綾香はそれを見てハッとした。
私が姫川さんを殺したところを見られた!?
そのスクリーンからは琴音と闘った所長室、そして葵と闘った訓練室の様子もわかった。

「おい・・・何でお前は琴音ちゃんを殺してんだよ・・・」
浩之の目は綾香の持っているM4A1を睨んでいる。

「もしかして・・・浩之、あんた自分の置かれてる状況がわかってないんじゃ・・・」

それはありえるかもしれない、と綾香は思った。
芹香達が浩之にその事を話していなければ、浩之は結構外れてる
ところがあるので、自分が何処に軟禁、―――いや、軟禁されているのもわかっていないかもしれないが―――
されているのかはわからない筈だ。つまり、ここを硫黄島の研究所とはわかっていないのだ。
おそらく、芹香達は電波などを使って浩之の記憶を操作し、ここに連れてこられるまでの
記憶を消しているに違いない。そして、自分達がテロリストという事は勿論話さず、
きっとただ何処かに集まっているとでも思わせているのだろう。
その状況で、綾香を見れば、何故か綾香が武器を持っていて、琴音を惨殺したことになる。
勿論、何も知らない浩之はそれを見れば綾香をただの殺人者としてしか見ない。
Leaf、そして日本政府が裏で殺人集団を組織していることを知らない者から
見れば、こう思うのは当然のことだ。考えてみれば常軌を逸している。
ただの普通の女子高生、しかも自分の恋人である者が、銃を持ち、自分の親しい友人(つまり琴音達)
を殺傷しているのだ。混乱し、何もかもが信じられなくなるのも無理はないかもしれない。

「でも、姉さんは何故こんな事を・・・・?」

綾香にはわからなかった。
芹香が綾香と浩之の仲を裂こうとしている事を。
綾香が人を殺しているところを見れば、普通は綾香を信じられなくなるからだ。
とくに琴音をはじめ、ここにいるLeafメンバーは全て浩之の親しい友人だからだ。

「話せば長くなるんだけど・・・」

綾香は浩之に現在の状況を話し始めた。


メタルギア・アヤカ 第十六章 『口喧嘩』


12月31日 午後10時36分 核兵器保存棟 司令室

「お疲れさま、保科さん。」
司令室に戻ってきた智子にあかりが声を掛ける。
「お疲れ、か・・・ま、そんな疲れたわけでもないけど。」
「でもやっぱり粛清はイヤじゃない?」
「ん〜・・・うちは何より考えた作戦を邪魔されるのが嫌やから。
 それを粛清するのは仲間だろうが容赦はせんよ。」
「ふふ、相変わらずだね。保科さんは」
何が可笑しいのかあかりはふふっ、と微笑む。

「そういえば宮内さんはどこや?」
保科が辺りを見回して言う。
先程からレミィの姿が見えない。
「レミィは、もう自分の持ち場に行ってるんじゃないかな?」
「という事は、そろそろここに近づいてきてるんやな、あいつも」
「そういう事になるかな。」

しかし、二人の顔に不安や焦りの色はない。

「宮内レミィ・・・Leaf最高の狙撃手。今までに何人もの要人を
 暗殺してきたプロフェッショナルや。」
「レミィは狙った獲物は絶対に逃さない・・・たとえどれだけ時間が掛かっても
 獲物を追い詰め、そして狩る・・・」

「あいつもいつまで持つんやろうなあ・・・・」

二人はレミィに絶対的な信頼を置いていた。




「・・・というわけなのよ。」

綾香は浩之に必死に説明をしていた。

「あのなあ・・・そんな事信じると思うか?まあ、仮にそうだとしても
 俺はお前を許さないぜ・・・」
「・・・・・・」
「お前が琴音ちゃんを殺したのは事実なんだろ?」
「・・・・・・」
「どうして、琴音ちゃんを殺す必要があったんだよ・・・」
「ああしなきゃ私は殺されてた!!」
「でも、何か方法があったんじゃねぇのかよ!」
「なかったわよ!なかったから殺すしかなかった!!あんたは何も
 わかってない!!戦場の恐ろしさも、そして厳しさも!!」
「わかんねーよそんなの!!第一わかりたくもねぇ!!」

言い争い。
浩之と本気になって喧嘩したのは初めてだった。
綾香の中で何かが膨らむ。

「何よ・・・さっきから聞いてれば琴音ちゃん琴音ちゃんって・・・」
「・・・?」

言うな、言うな!綾香の中で何かが訴える。
しかし、綾香の口は暴走を止めない。

「そんなに姫川さんが大事だったんなら私じゃなく姫川さんを
 選べばよかったじゃない!!!?」

綾香は遂に言ってしまった。

「何言ってんだよお前・・・」
浩之の声にさらに怒気が篭る。
「あ・・・う・・・」
「俺は・・・そんなに信用ねぇのかよ・・・?」

綾香は本当はそんな事思ってはいない。
・・・いや、そう言うと嘘になるかもしれないが、綾香は浩之を信じている。
浩之が自分以外の誰かを好きになるなんてことがありえないという事はわかっている。

だが、浩之は女の子にもてる。
それもどの人も自分に劣るとも勝らない人ばかりだ。
傍から見ればまるで恋人同士のように見えるほど、浩之は彼女らに接する。
それは浩之の優しさ故なのだが、それが綾香の不安を掻き立てる。

 誰かに浩之を取られてしまうのではないか・・・

勿論そういう不安は誰にも口にはしない。
あくまでも浩之を信じる―――いや、信じているふりをしているのかもしれない。
自信に満ちていて、誰にも負けるはずがないお嬢様。
些細な事で悩んだり、傷ついたりしない。
それを綾香は普段知らないうちに演じ続けてきたのかもしれない。

そして今回。
綾香の一番恐れていた事が起こってしまったのだ。
浩之を愛する点でライバルとなるであろう人物が、浩之を拉致したのである。
浩之が自分以外の人に振り向いてしまうかもしれないという恐怖。
綾香は勿論表面には出さない。
だが、この任務を引き受けたのは間違いなくその恐怖からだ。

そして演じてきた仮面は脆くも崩れ去った。
綾香は遂に嫉妬をぶちまけてしまった。

「はあ・・・もう何かわけわからなくなってきた・・・」
浩之が言いながら床を蹴る。

「俺たちの仲ってそれだけの物だったのか?・・・相手を信用しきれない 
 ような・・・そんなに薄っぺらいものだったって事かよ・・・」

違う!!そんな物なんかじゃないって事はわかってる・・・!!

綾香は心の中で叫んでいた。
口にしては・・・出せなかった。

わかっていた。
浩之が本当に好きなのは自分一人なんだって・・・

だが、綾香は浩之を信用できなかった。
浩之の想いを少しでも疑ってしまった。

そして、浩之は綾香が一番恐れている言葉を言った。


「だったら・・・もうやめちまうか?」


「・・・くっ!!」

気が付くと綾香は走っていた。

「おいっ!!綾香!!?」

浩之の前になんていられなかった。
疑ってしまった自分が憎かった。
そのせいで浩之は傷ついたであろう、と思った。

浩之と一緒にいる資格なんて私には・・・もう、ない・・・




「ハァ、ハァ、ハァ・・・」

どれくらい走ったのだろうか・・・
綾香は長い通路に出ていた。
目の前には・・・高い塔が見える・・・

Pi!Pi!Pi!

大佐からの連絡が入る。

『綾香君・・・』
大佐が気まずそうに話し掛ける。

「大佐・・・ここは?」
綾香はできるだけ平静を装って答えた。

『・・・綾香君、これからの任務遂行の確認をするぞ。
 そこは通信塔A行き運搬用通路だ。そこから通信塔A内部に  
 潜入し、五階、または屋上を目指すんだ。そのどちらかの渡り廊下から
 通信塔Bに渡る事ができる。通信塔Bからはエレベータで地上ルートに下り、
 そこから核兵器保存棟に潜入するんだ。』
「つまり・・・ここの先に通信塔Aがあるのね?」
『そういう事だ・・・』

「わかったわ。今から通信塔Aへの潜入を始める。」
『ちょっと・・・いいですか?』

突然マルチが通信に入り込んできた。

「何かしら?マルチ。」
『綾香さん・・・このまま浩之さんと喧嘩したままになっちゃうんですか?』
マルチが不安げに訊いてくる。
「・・・・・・」
「わかってる。さっきのは私が悪かったって思ってるわ。」
『・・・・・・』
「でも、だからこそ今更浩之に合わせる顔がないよ・・・」
『・・・・・・』
「私は浩之を・・・傷つけちゃったと思うから・・・」
『大丈夫ですよ!』
「え?」
『浩之さんだってさっきの綾香さんが言ったことは本当の事
 じゃないってわかっていると思いますー。』
「・・・・・・」
『あれは浩之さんもきっと混乱していたからあんな事言ったんですよー。」
 
『そのことは綾香さんの方がよくわかってるはずですー。綾香さん、浩之さんの事好きですよね?」
「・・・うん。」
綾香は小さく頷く。
それを見てマルチがにっこり微笑んだ。
『だったら大丈夫ですー。綾香さんは浩之さんのことが好き。浩之さんも  
 綾香さんのことが好きですー。だったら大丈夫ですよー!!』
「マルチ・・・」
『それに綾香さんは浩之さんが好きになった人ですから。自信を持ってくださいよ!!』
「うん・・・!!」
今度は綾香は強く頷いた。
「ありがとう、マルチ・・・」
綾香はマルチに何かを教えてもらったようだ。

「ちゃんと・・・謝らなきゃ・・・!!」

綾香が決心したその時だった。

「おい!!綾香!!」
浩之が自分を呼ぶ声がして綾香は振り向いた。
そこにはやはり浩之が立っていた。

「浩之・・・さっきはゴメ――――

綾香が謝ろうとした瞬間。
綾香の目に入る物があった。

赤いレーザーの線。

照らしている物は・・・浩之の肩・・・!!

「浩之、伏せ―――!!

BANG!!

「ぐぅわああああ!!!!」


綾香の声は銃声と浩之の叫び声にかき消された。


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綾香を庇い、銃撃を受けつづける浩之。
そんな浩之を見て、何も出来ない綾香。
レミィの罠に突破口はあるのか!?

次回 メタルギア・アヤカ

第十七章 『Sniper』


また前回の次回予告と違う話を書いちゃって、
次回予告をやめちゃおっか?と検討中の助造です。

ああ・・・どんどんメタルギアからかけ離れてゆく・・・(汗)
何か支離滅裂な今日この頃です(爆)

何かいろいろと余分(爆)な物を書いてたせいで
当初の予定よりかなり長くなりそうです・・・(汗)