メタルギア・アヤカ 第十五章 投稿者:助造 投稿日:11月12日(日)17時01分
前回までのあらすじ

 核兵器保存棟に向かう綾香。
急ぐ彼女の前に立ちはだかったのは
復讐に燃える松原葵だった。
 琴音への想いと綾香への想いの間で揺れる葵の心。
綾香は全力で葵の想いを受け止めようとする。
闘いは終わり、立っていた者は綾香だった。

(うわ〜、全然あらすじになってねぇ・・・(汗))

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「葵・・・立てる?」

 綾香は無理とわかっている事を葵に訊いた。
今の葵の傷ついた身体で立つ事は肉体的に不可能だろう。
しかし、それ以前に葵の心が死んでしまっていた。

「私は・・・間違ってたんでしょうか・・・?」

 葵の頬を伝う涙は止まらない。
もはや止める事は不可能なのかもしれない。
身体についた傷は薬で癒す事は出来る。
しかし、心についた傷はどんな良薬でも癒す事は出来ない。

 死んでしまった葵の心・・・
立ち直るには葵自身が立ち直る他ないのだ。
しかし、今の葵にそれはあまりにも酷すぎる・・・

 信じていたものが間違っていたという絶望。
 
 そしてそれに気付けなかった自分の愚かさ。

「私は・・・取り返しのつかない事をしてしまいました・・・」


メタルギア・アヤカ 第十五章 『再会』


 綾香はそんな葵に何も言えなかった。
葵を追い込んだのは自分。
その事が綾香を責める。
全ては琴音を殺した事から始まった事。

 戦場という人を殺しあう場所では必ず憎しみと悲しみがある。
綾香は琴音を殺すしかなかった。
それは何故か?
綾香自身の勝利、そして生きる事への渇望。

 私は勝った・・・でも、それが生み出した物は一体何?

 一人の友達を失った少女の憎しみと悲しみ

それ以外の何を生み出したというの?
このどうしようもない悲劇以外の何を?
残ったのは悲しみに打ちひしがれる葵の姿だけじゃない!
綾香はやり場のない虚しさの包まれた。

戦場というのは必ず悲しむ人が出る。
人と人との殺し合いの場。
それが戦場だからだ。

戦いに勝った者は何かを得る。
負けた者は何かを失う、だから悲しみや憎しみを持つ。

何かを得る?
自分が一体何を得たというのか・・・
葵を倒して、心も身体も壊すほどにまで叩き伏せて
それで得たのはやり場のない虚しさだけだ。

 私は誰かに勝つ事で何かを得てきた。
だから格闘技も始めたし、勝つように練習してきた。
勝つ事で、相手を倒す事で優越感を感じていた。

でも、今は違う・・・


「綾香さん・・・」

不意に葵が話し掛けてきた。

「何?・・・」
「私は・・・私は間違ってたんです。答えは琴音ちゃんと、
 この勝負が教えてくれました・・・」

 違うわ葵・・・この闘いはそんな単純な物じゃ―――

綾香はそう言おうとしてやめた。

「間違っていたから・・・琴音ちゃんは私に力を・・・貸してくれなかった」
「・・・・・・」
「あのままだと、私、綾香さんを憎んだまま死んでました・・・でも、
 琴音ちゃんは私に気付かせてくれた・・・」
「・・・・・・」
「綾香さんを憎んじゃいけない、って・・・」

「戦場にいたんだから琴音ちゃんが死ぬのは考えられた事なのに・・・
 死ぬか生きるかの場所だから死んだ方が悪い、ってわかっていたのに・・・
 わかっていた・・・はずなのに・・・」

「でも、琴音ちゃんが殺されたって聞いて、怒らないなんて事
 出来なかった・・・未熟、ですよね・・・私・・・」

ふふっ、と葵が笑った。
綾香には信じられなかった。
心も身体も砕いてしまったと思っていた葵が笑ったのだ。

 未熟なんかじゃない。あなたは未熟なんかじゃないよ、葵。
あれだけの傷を負っても、笑えるじゃない。
それだけ前向きに生きれるって事は凄いよ・・・

「綾香さん・・・この先に藤田先輩がいます・・・ 
 早く行ってあげてください。」
「わかった・・・」

綾香は葵の指した扉へと向かう。



「ちょっと待ちぃや!」

そんな綾香を止める言葉が響いた。
二階にいた保科智子だ。

「誰がここを通る事を許可したんや?」
「やっぱり・・・そう易々と通らせてはもらえないようね・・!!」

智子は消えたかと思うと、一瞬にして綾香の前まで来ていた。

「で・・・どうすればここを通してくれる?」
「そうやな・・・通行料をもらわんとな・・・」

「いくらかしら?」
そう言って綾香は戦闘態勢を取る。
葵との勝負で身体は傷ついているが、そうも言ってられない。
「金やない・・・御代はあんたの命やっ!!」

智子が仕掛ける!
綾香と智子が接触すると思われた次の瞬間!!

シュッ!!ばぁぁぁぁぁん!!!

横からの一閃が智子を吹き飛ばした!

「葵っ!!?」

智子を吹き飛ばしたのは葵の放ったパンチだった。

「綾香さん!!早く今の内にっ!!」
「葵っ!無茶よ!!」
「わかってます!!だから早く行ってください!!」

「あ〜あぁ・・・眼鏡曲がってもうたやないか・・・」
智子がゆっくりと起き上がる。
制服についた汚れを払っているようだ。

「綾香さんっ!!早く!!」
「・・・わ、わかった!!」

綾香は急いで部屋を出た。



浩之!浩之!浩之!!

 綾香は心の中で浩之の名を呼びながら走っていた。
最後の人質である浩之。
これを助ければ人質救助という任務は一応は終わる。
しかし、そんな事は綾香の頭の中には既にない。
 綾香が気にしているのは浩之の安否だった。
確かに芹香達は浩之を傷つけたりはしないかもしれない。
だが、浩之の性格なら敵の兵士につっかかって暴行を受けているかもしれない。

部屋が見えた!

もうすぐ、もうすぐ浩之に会える・・・!!

「浩之っ!!」
綾香は勢い良くドアを開け放った。
そこには浩之がいた。
別に怪我などはないみたいだ。

「浩之っ!!」
綾香はもう一度浩之の名を叫んだ。

「綾香・・・お前何やってるんだよ・・・!!」

浩之が綾香に返した言葉は明らかに疑惑と非難の声が入っていた。



「やっぱり・・・監視しにきといて良かったわ・・・」
智子が葵を睨む。
「監視・・・・?」
「勿論、あんたのや。あんたとアイツは元々仲が良かったからな。
 何か間違いが起こるとあかんと思うて来たけど・・・予感的中やな。」
「・・・・・・」
「あんたが負ける事も大体わかっとったわ。仲間が一人死んで
 感情的になるような奴やからな。」

「ククク・・・しかも、それでまんまと踊らされるような奴やからな・・・」

智子が嘲笑いながら言う。

「踊らされる・・・?」
「まさか気付いてへんのか?とことんおめでたいやっちゃ。
 あんたらはうちの思い通りになってくれた。」
「あんた・・・ら・・?」
「琴音は人を殺せへんかった。そういう奴はちょっと困るんや。
 いつ、変な気を起こすかわからへんからな。」
「・・・・・・」
「もちろんあんたもや、葵・・・だから―――」

「私は琴音を来栖川綾香と闘わせて殺した。あんたは私の言う通りに
 動いてくれたな?で、あんたもアイツに負けた!!」

「全てはうちのシナリオ通りってわけや」

智子がにやり、と笑う。

「があああああ!!!!」
次の瞬間葵がパンチを放つ!
ほぼ零距離に近い距離からのパンチだった。
確実にヒットする――――はずだった

葵のパンチは当たらず、葵は背後を取られていた。

「葵・・・元戦友への心遣いや。あんたはキレイに殺したる。」

ぶしゅぅぅぅぅぅ!!!


葵が紅く染まり倒れてゆく・・・

部屋を、そして智子を血の色で彩りながら――――

血で彩られた智子の顔は悦楽の表情に歪んでいた。

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綾香に疑惑を抱く浩之、
そんなギクシャクした二人を
影からの狩猟者が狙います!

次回 メタルギア・アヤカ 

第十六章 『SNIPER』


どーも、助造です。

い、委員長強すぎ(爆)
反則的に強い委員長ですが
綾香との勝負はどうなるのでしょうか?
俺内部でもまだ見えてきていません(爆)