メタルギア・アヤカ 第十四章 投稿者:助造 投稿日:11月11日(土)21時07分
前回までのあらすじ

核発射を防ぐにはセリオを破壊するしかない。
綾香はセリオのいる核兵器保存棟に向かう。
途中、Leafのサイキック姫川琴音と死闘を制し、
綾香は研究所地下五階に進む。
その時、突如保科智子からの通信が入り、
智子は綾香に浩之が地下五階の訓練施設に軟禁されていると
伝える。
綾香は智子の行動を不審に思いつつも、訓練施設に進む。
そこにはエクストリームのリングと、松原葵が立っていた。

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カァーン!!

ゴングが鳴らされる。
相手はあの葵。
エクストリームでは一度も負けた事のない相手。

でも今は―――――

「はあっ!!」
葵のフックが綾香の側頭部を打ち抜く!
「くあ・・・」
ぐらつく綾香に更に追い討ちのアッパー!
綾香は寸でのところで後ろに退いて避ける!

――――今は・・・勝てない?

「来栖川綾香には琴音を殺した罪の意識がある・・・
 それが葵と闘う事を躊躇わせ、自然に自分の動きを鈍らせる・・・」
二階から傍観する智子がその様子を見て分析する。

「この殺し合い、来栖川綾香に罪の意識がある限り・・・
 アイツに勝ち目はないな・・・」


メタルギア・アヤカ 第十四章 『Roll』


葵は綾香に反撃の隙を与えず、綾香に詰め寄る!
綾香は後ろに退いて葵の攻撃の間合いから逃げる!

「くっ!・・・・」
先程もらったフックが綾香の脳を揺さぶり、
綾香は軽い脳震盪に陥っており、脚が思うように動かない。
そんな綾香を追い詰めるように葵は一気に間を詰める。
そこからジャブ、フックのワンツー。

チッ!ボスッ!!

「ぐ・・・!」
最初のジャブは避ける事が出来たが、
二発めのフックをもろにボディに受ける。
下手な打撃は無効化になる制服の上からでも
葵のパンチのダメージは大きい。
「はぁっ!」
綾香はすぐにジャブで葵を追い返す!
葵がそれを後退してかわす。
今度は綾香が葵との間を一気に詰める。
右のショートアッパー、避けられる。
左のストレート、葵はダッキングしてこれをかわす。
「しまった!?」
葵はダッキングした後綾香の顔面に向かってストレートを放つ!
綾香にはこれを避ける方法はない!

ぐしゃっ!!

葵のストレートは綾香の頬にあたった。
「ぐ・・・」
口の中を切った。


「・・・・つまらないです」
葵が罵るように綾香に言う。
「つまらないですよ、綾香さん。あなたはこの程度でしかないのですか?」
「・・・・・・」
「・・・だったら、私はそんなつまらないあなたから琴音ちゃんを
 守れなかったつまらない人間以下になってしまう・・!!」

葵は綾香に突っ込む!
右、左のワンツー!
綾香はそれをさばく、が

ズバァァン!!

葵のハイキック。
ワンツーからの右のハイキックは葵の得意とするコンビネーションだった。
綾香がまたダウンする。
普段の綾香からは考えられないような姿だ。

「・・・琴音ちゃんを殺した罪の意識から私と闘えない?
 ・・・昔、あなたは私によく言いましたよね?」

「中途半端な気持ちでは戦場では生き残れない、と・・・」

葵が綾香に突っ込む!
綾香は立ち上がり、それを迎え撃つ!
葵の左ストレート!
綾香はそれをカウンターで返そうと左ストレートを放つ!

「!!!?」
しかし、綾香の左ストレートはあたらなかった。
葵はあの近距離からの綾香の攻撃をまたもダッキングして避けたのだ!
綾香は無防備である。
「はあああ!!!」

動作はほんの半歩。
攻撃してきた相手の鳩尾に右の正拳を叩き込む。

この技は――――崩拳!!?

ドムッ!!!

「ごほっ!!!」
綾香が吹き飛ぶ!
綾香はコーナーにしたたか身体を叩きつけられた。

「負荷衝撃2000kgを誇る葵の崩拳・・・あんな風にモロに受けちゃ
 シャレにならへんな・・・流石の来栖川綾香もここまでか?」
智子が嘲笑いながら言う。

「その中途半端なのが今のあなたなんですよ。綾香さん。」
葵は無表情に言う。
「・・・・葵・・・」
綾香がゆっくりと立ち上がる。
「・・・・・」

「これだけは言っておくわ・・・私は決して・・・中途半端な気持ちで
 闘ってきてはいない・・・!!」
「中途半端ですよ!!あなたは私を殺す事を躊躇ってるじゃないですか!!?」
「・・・・・・」
「あなたが・・・あなたが中途半端じゃないというのなら・・・」

葵の頬には涙が伝っていた。

「どうして私を殺すつもりで来ないんです!!?琴音ちゃんを殺して
 おいてどうして私を殺さないんですか!!?」
「・・・・葵」
「どうして・・・琴音ちゃんを・・・殺したんですか・・・・」

葵の叫び。
それは綾香への罵倒から琴音を殺した事への怒りに変わっていた。

いや、怒りだけではない。
尊敬をしていた綾香が琴音を殺した事への困惑。

復讐心と綾香を思う気持ちとの間での板ばさみ。

そして・・・何よりも悲しみが・・・


約束・・・・

琴音ちゃんは守ってくれなかった・・・・

・・・違う!!守ってくれなかったんじゃない!!

綾香さんが琴音ちゃんを殺したから・・・

アヤカサン・・・ドウシテ、ドウシテアナタガコトネチャンヲコロシタンデスカ・・・?

コトネチャンヲ・・・ドウシテコロシタンデスカ・・・?

葵は思う。

琴音を殺したのが綾香じゃなかったら・・・

綾香じゃなかったらどんなに楽な事か・・・

私も人のことは言えないかもしれない。

私だって綾香さんを殺す事は―――――

「綾香さん・・・どうして琴音ちゃんを殺したんですか・・・?」
「・・・・葵・・・」


智子には葵のそれが気に入らなかった。

戦場にいる限りいつでも死の可能性はある。
戦場では勝った方が正しいのだ。
それを何故こいつはいちいち気にするのか・・・

琴音の死をいちいち気にして感情的になる葵。
智子から見ればそれはただの未熟者にしか見えない。
友情?
それが何の役に立つというのだ?
現にそれのせいで葵は綾香を殺せないのではないか?

「なに女同士で馴れあっとんのや・・・!!」



「綾香さん・・・私は・・・でも私はあなたを許せないんです!!」

葵が綾香に突っ込む!
綾香への尊敬と琴音への想い・・・
葵は琴音への想いを取った!!

「葵・・・こんな、こんな形で決着は着けたくなかったけど・・・!!」
綾香もそれに応じる。

葵の想いに答えるには全力しかない!!
それに・・・私はまだ死ねないから・・・・!!

「!!!??」
綾香の前に来て葵の動きが止まった。
綾香は身体を振り子のように動かし、葵を迎え撃つ!

「これは・・・まさかデンプシーロール!!?」

デンプシーロール。
身体を高速で振り子運動しながら攻撃する技。
これにより相手の攻撃を身体をスウェーさせながら避けつつ、
振り子運動の遠心力の乗ったパンチを右から左から相手の死角に連続で叩き込む。
極端に激しい運動のため、男よりも筋肉量の少ない女には絶対に不可能の技とされていた。

「おぉぉぉぉ!!!!」
右、左と綾香のパンチが葵のボディに突き刺さる!
「ぐっああああ!!?」

ボスッ!!バキッ!!ドムッ!!メシャッ!!

葵の筋肉と骨の砕ける音が響く!
しかし綾香の攻撃は止まるところを知らない!!

「うあああああ!!!!」
葵が崩拳を放つ!
しかし、一点に留まらず常に移動している綾香の身体に
直線的な崩拳の打撃はあたらない!

「おぉぉぉぉぉ!!!!」

ズドムッ!!ガコッ!!バキッ!!グシャッ!!

葵の身体が悲鳴を上げる!


朦朧とする意識の中でも、葵には勝たねばならないという思いだけはあった。

琴音ちゃん!!力を貸して!!

琴音ちゃんが、琴音ちゃんが力を貸してくれれば私は綾香さんを・・・!!

お願い!!琴音ちゃん!!力を・・・!!

琴音ちゃんの仇を取りたいんだよ・・・!!琴音ちゃんのために・・・!!

お願い!!琴音ちゃ――――

葵が見たもの。
それは悲しそうに葵を見つめる琴音の姿だった。

琴音ちゃん・・・・?


松原さん・・・・私たちは・・・間違ってたんですよ・・・・


「おぉぉぉぉぉ!!!!」
綾香の渾身の一撃が葵の顔面に入る!!

葵の身体が宙を舞った。


「葵・・・・・」
綾香は倒れた葵の側に寄った。
先程の異常な運動量に身体がついていけず、呼吸が激しすぎる。
葵は膝をつき、項垂れている・・・

「綾香さん・・・私は・・・私は間違ってたんでしょうか・・・?」

そう言ったのを最後に葵は力なく泣き崩れた。

葵の悲しい泣き声が痛いほどに響いていた。

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葵との苦しい戦いを制した綾香。
浩之の元へと急ぎます!
しかし、それを妨害する人物が・・・!!

次回 メタルギア・アヤカ

第十五章 『再会』


こんばんわ、助造です。

デ、デンプシーロール・・・(爆)
シリアスっぽい展開の中にこれだけが浮いてる気が・・・(汗)

さて、メタルギアにはない全くのオリジナル(?)の
話となってしまいましたが、いかがでしたでしょうか?
ちなみに葵、このまま救いのないまま死んでしまうのか!!?(爆)
しかし、綾香の性格違うなぁ・・・(汗)