メタルギア・アヤカ 第十二章 投稿者:助造 投稿日:10月21日(土)14時09分
前回までのあらすじ

核発射を止めるにはセリオを破壊するしかない。
綾香はセリオのいる核兵器保存棟を目指し、
核兵器保存棟への唯一の潜入手段である、通信塔行
非常用エレベーターのある研究所地下五階に向かう。
しかし、地下五階への階段のある所長室には
Leafのサイキック、姫川琴音が待っていた。
激しい激闘の末、綾香は琴音を退けた・・・

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「・・・どうやら、あなたの予知とやらが外れたようね・・・」
綾香は琴音に近づいていった。
琴音は壁にもたれかかりながら綾香の方を見ている。

多量の血が出血している。
琴音の状態から見て、反撃される事はないだろう。

「ふふ・・・予知は・・・外れてなんかいませんよ・・」
琴音が息も絶え絶えに話す。
「予知は外れてなんかいない?・・・どういう事?」
「・・・あの時・・・本当は自分の倒れた姿が見えたんです・・・・」
「あなたの倒れた姿が?」


メタルギア・アヤカ 第十二章 『約束の終わり、復讐の始まり・・・』


「私は・・・今まで何人もの人の不幸を予知してきました・・・
 いつもいつも・・・見えるのは他人の不幸ばかり・・・
 そしてその予知は必ずあたるんです・・・・
 私は自分の力を呪いました・・・そして、みんなも私を忌み、嫌いました・・・」

「じゃあ、さっきのはあなたの・・・・」
綾香は先程、琴音に心を読まれた時の映像を思い出していた。
頭に流れ込んできた数々の映像・・・
あれは琴音の過去だったのだ。

「ふふ・・・当然ですよね・・・みんなの不幸ばかり予知して・・・
 自分は決して不幸の予知を見る事はないんですから・・・」
「・・・・・・」
「私は・・・・人を幸せにする事はできない・・・
 私は・・・人を・・・不幸にする事しか・・・!!」
琴音の頬には涙が光っていた・・・・

「だから、今回の予知で自分の姿が見えた時、私は正直言って、喜びました。
 いままで散々、私は人に疫病神みたいな事をしてきたんですから・・・
 でも・・・・」

「あの予知が見えた時、私は藤田さんの顔が浮かびました・・・
 予知があたるのなら・・・私は藤田さんに会えなくなる・・・・」

「そう思うと・・・悲しくて・・・怖くて・・・死にたくないって思って・・・」

「ふふ・・・おかしな話ですよね・・・ずっと・・・ずっと死にたいって思ってたのに・・・」
琴音は自嘲ぎみにそう言った。


「あなたは・・・どうしてこのテロに・・・?」
「私が・・・初めて人の心を読んだ相手は・・・藤田さんでした・・・」
「えっ!?」
「藤田さんの・・・心の中は・・・あなたへの想いでいっぱいでした・・・」
「・・・・・・」
「私はそんなあなたが羨ましかった・・・そして・・・嫉妬しました・・・」
「・・・・・・」
「・・・いえ、それは既に嫉妬ではありませんでした。
 あなたを憎んでいた、と言った方がいいかもしれません・・・」
「憎む・・・・」
「私がこの蜂起に参加したのはお金でも、日本政府の醜態を暴く
 事が目的でもありません!!・・・
 ただ、・・・ただあなたに復讐したかった!!・・・・
 藤田さんを奪ったあなたを・・・・」

綾香はただ、琴音の言う事を聞いていた。
自分に対する恨みも、罵りも・・・・

この娘は・・・・もうすぐ死ぬから・・・・
 
「・・・やっぱり、今も私の事が憎い?」
綾香は琴音に問う。
その問に琴音は首を横に振って答えた。
「いいえ・・・あなたの事、すこし誤解していた所もありました・・・
 私は・・・いえ、私たちは、藤田さんの気持ちも考えずにあなたを「藤田さんを奪った人」、
 とだけ見てました・・・・
 考えてみれば藤田さんが選んだ人なんです。それを認めなかった私たちが
 やはり、間違っていたんですね・・・」
「・・・・・・」

「来栖川さん・・・私は今回のテロに参加したLeafメンバーの中では
 まだまだ低レベルな方です。・・・これからあなたが闘って行く事になる
 人たちは・・・私とは・・・レベルが違います・・・
 特に、保科さん、神岸さん、そして来栖川芹香さんの三人の強さは・・・」
「わかってる・・・」
「私は・・・これ以上の闘いは・・・望みません・・・藤田さんを・・
 傷つけるだけですから・・・・みんなにも、わかってもらいたい・・・」
琴音はそう言って力なく倒れた・・・が、
まだ息はあるようだ。
綾香は琴音を抱えてあげた。
琴音は、すみません・・・と、だけ言った。

それから暫しの沈黙が続いた。
琴音も、そして綾香も琴音の死が近づいているのがわかった・・・


「・・・・来栖川さん、地下五階に行くにはそこの本棚の後ろの隠し扉があります。
 それを使えば・・・地下五階に・・・」
琴音が急に話し始めた。

「ありがとう・・・でも、どうして私に教えてくれたの?」

「人は・・・人は人を幸せにするようにはできていない・・・・少し前まで
 私、そう思ってました・・・」
「・・・・・・」
「でも、違った。・・・藤田さんは私を幸せにしてくれました・・・
 そして、あなたは藤田さんを幸せに・・・・」

「だから・・・私はそんなあなたに賭けてみることにします・・・
 私と同じように藤田さんに幸せにしてもらい、そして藤田さんを
 幸せにするあなたに・・・・」

そう言って琴音は微笑んだ。
美しく、そして優しい微笑だ・・・・

「そこの本棚を退かしてあげましょう・・・」
琴音は目をつぶると、精神を集中した。
本棚がゆっくりと横にずれる。
その奥からは階段が現れた。

「・・・ありがとう。」
綾香はもう一度琴音に感謝の言葉を言った。

「・・・あなた、さっき「自分は人を不幸にしか出来ない」、って言ったわよね?
 あれは私、違うと思うわ・・・少なくともあなたの記憶の葵は笑ってた。
 心から・・・あなたを慕ってた・・・」
「松原さんが・・・」
「あの娘、同級生の友達があまりいなかったのよ・・・だから、あなたが
 葵の友達になってくれた事は、葵を幸せにしていたと思う・・・」
「・・・・」
「あなたは・・・人を幸せにできたのよ!」
綾香は強く、そう断言した。

「そうか・・・私も・・・人を・・・松原さんを幸せにできたんだ・・・」

綾香は琴音の最期を見らずに、先を急いだ・・・

「・・・ふふふ・・・ありがとう、か・・・・この力で、
 誰かに・・喜んでもらったのは初めてかな・・・・」

その時、琴音の脳裏に一つの言葉が浮かんだ


  一緒に生きてこの任務を成功させようね!


葵の言った約束だった・・・・


ごめんね、松原さん・・・・


私、約束守れそうにない―――――




12月31日 午後9時32分 研究所地下五階


「琴音・・・ちゃんが・・・!!?」
地下五階の警備に加わっていた葵は智子から
その話を聞いた。
「そんな・・・琴音ちゃん・・・約束・・・したのに・・・」
いきなりの事に混乱する葵。
それを見て、智子は、にやり、と笑った。

「葵・・・琴音を殺したのは来栖川綾香や!」
智子は突きつけるように葵に言う。
「琴音はあんたの親友やったな・・・その琴音を
 来栖川綾香は殺したんや!!」
葵は黙ったまま何も言わない・・・
「葵、あんたが仇とるんや!琴音もそれを望んどるはずや!」
「・・・・そうでしょうか・・・?」
「そうに決まっとるやろ?・・・」

智子はそれだけ言って会議室に戻った。

「琴音ちゃん・・・・・」

智子の言葉が葵の心に染みわたる・・・
綾香への復讐心が業火のように心に灯る・・・

「綾香さん・・・!!」



「・・・・・・」
「わっ!!び、びっくりしたぁ・・・もうおどかさんといてや〜
 来栖川さん・・・」
智子はいきなり芹香に話しかけられ、かなり驚いたようだ。
「・・・・・・」
「え?葵さんに綾香と闘うのを任せていいのですか?、やて?」
こくこく。
「大丈夫や・・・確かにあいつは来栖川綾香を尊敬もしとったし、
 憧れも抱いとった・・・」

「けどな、今のあいつの心は復讐心でいっぱいや!相手が誰であろうと、
 今のあいつは砕くやろうな・・・」
そう言って智子は、くすっ、と笑った。


「格闘家っちゅうんは単純や、せいぜい利用して、殺し合わせなな!」

智子は高笑いしながら地下五階を後にした・・・
 

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智子の策略により、闘い合う二人。
復讐に燃える葵を綾香は
どう受け止めるのか!?

次回 メタルギア・アヤカ

第十三章 タイトル未定・・・・(爆)

ぐっどあふた〜ぬ〜ん、助造です。

遂に琴音死亡!!(爆)
全国の琴音ファンの皆様、ごめんなさいっ!!
(でも、考えてみればこのSS、ほとんどのキャラが死んじまうような気が・・・(爆))