メタルギア・アヤカ 第九章 投稿者:助造 投稿日:10月15日(日)01時31分

『一年前の事件、か・・・坂下があんなになってしまったのは
 全てあの時から始まったんだったな・・・』

「私はあの時の功績で「リーフ」の称号を与えられたわ・・・」
『しかし、君はすぐにLeafを除隊した・・・それは何故だね・・?』


好恵が死んだ責任をLeafを除隊する事で償いたかったから?

しかし綾香は大佐の問いにそう答えることができなかった。

違う・・・私はそうやって・・・逃げ―――


「大佐・・・昔話はこれくらいにして、そろそろ好恵の事を
 話してくれる?」
綾香はこの思い出にはあまり触れたくないのだろうか・・・
すぐに話を変えようとした。


メタルギア・アヤカ 第九章『METALGEAR PROJECT』

 
『・・・実は、彼女はあの時まだ生きていたんだよ』
大佐は一瞬この事を話すのを悩んだようだが、
すぐに話を始めた。
「生きてた?・・・好恵が?」
『でも、坂下さんの死はそこにいた綾香さんが確認したはずじゃ・・・』
今度はマルチが大佐に問う。

『いや、正確に言えば無理矢理蘇生させられたんだよ、
 メイドロボ技術と麻薬漬けにされて!』
「メイドロボ技術!?」

『そう、今回のようなメイドロボの軍事利用の話は前々から検討されていたんだ。
 しかし、汎用メイドロボの技術は戦闘に使用するのは無理があった。
 そこで政府が最初に出した案は優秀な戦士を直接メイドロボにしてしまうという
 非人道的な案だったんだ!』
「そんな・・・・」
『それには、あの戦場から連れ出された瀕死の兵士が採用されたようだ。』
「それが・・・好恵だったってわけ?」
『そう、その案には勿論かなりの反対がでた。生きた人間を
 メイドロボにするようなものだからな・・・
 長瀬氏も反対派の人間の一人だった。
 しかし、当時の政府の連中はそれを強行した!
 長瀬氏に考えに反対する反情動機能メイドロボの研究者達を使ってな!』

『彼女には数々の人体実験が繰り返されたはずだ・・・
 拒絶反応などは麻薬を使い無理矢理抑え、結果、
 彼女は禁断症状に苦しむようになった。』
『そ、そんな・・・あんまりですぅ・・・!』
言いながらマルチは既に半泣きだ。

「確かに・・・あいつは正常な意識をもっているようには見えなかったわ」
『きっと今の彼女は戦闘意識だけで生きているんだろう。
 君との闘いを望んだのもそれが原因だろうな・・・』
「やっぱり、好恵は私との決着を・・・?」
『それはわからん・・・ただ、奴はきっともう一度君の前に現れるはずだ。』

Leafに入ってからも、綾香と坂下はいわゆる好敵手同士であった。
互いに技を磨きあい、全力で、勝負した。
葵にレフェリーを頼み、動けなくなるまでぶつかり合った
そして最後はいつも引き分け。

格闘とは本来は相手を倒すための技術である。
しかし、いつしか彼女達の間には、格闘を通じて、深い信頼関係ができていた。

『綾香さん・・・』
綾香が昔の事を思い出していると、急にマルチが話しかけてきた。
「ん?どうしたのマルチ?」
『綾香さんは・・・綾香さんはもう一度坂下さんと
 出会ったら、また闘うんですか?』
「そうね・・・」
『坂下さんを・・・殺すまで?』
「・・・好恵も・・・それを望んでいるのかもしれない・・・」
『なんで・・・何で友達なのに・・・ころし・・合わなきゃ・・
 いけないんでしょうかぁ?・・・そんなの・・・そんなの悲しすぎますぅ・・・』
マルチが泣きながら綾香に言う。

しかし、綾香はそんなマルチに何も言ってあげる事が出来なかった・・・




「ほらほら、いつまで隠れているつもり?」
綾香はロッカーに隠れている長瀬に向かって言った。
「いやいや、綾香お嬢さん、さっきは危ないところをどうも・・・」
相変わらずのんびりした口調で、ロッカーから出てきた長瀬は言う。
「さっきの人・・・光学迷彩を装備してましたが・・・」
誰なのかご存知ですか?、と長瀬は言いたいのだろう。
「そんな事は後でいいの!」

綾香は長瀬の事が少し苦手だった。
長瀬はこういう戦場の真っ只中という所でのんびりと会話をする。
綾香が長瀬を苦手なのは、長瀬と会話をしていると緊張がなくなるからだ。
戦場では少しの判断の遅れが命取りになる。
だから普通は精神状態は緊張状態であることが好ましい。
しかし、長瀬はそれをいつもメチャクチャにしてしまう。
長瀬自身にそういうつもりはないのだが・・・

「まずは情報が欲しいわ。」
焦れた綾香は話を少し強引に先に進めた。
「情報、ですか?いやぁ〜私はあまり役に立たないと思うのですが?」
「あなたでしか分からない事があるでしょ?」
「・・・セリオ、ですか?」
長瀬は少し悲しそうな表情をした。
「そう、セリオについて私は何の情報もない。詳しい事教えてくれる?」

「今回、私は、はっきり言ってこの計画に反対しました。
 私達の娘であるセリオを軍事利用するだなんて・・・
 しかし、勿論、上の人たちは取り合ってくれませんでした。
 私は半強制的に、この計画に参加させられたんです。」
長瀬は言う。

「この計画名はメタルギア・プロジェクト・・・・
 『究極の機械兵器』の意味を示します。」

「メタルギア・・・プロジェクト・・・」


「セリオに装備させられた兵器はかなりの物です。
 右腕にはスティンガーミサイルを装備。セリオのカメラアイで相手を
 ロックオンし、発射。弾頭には熱源追尾装置があるのでかなりの高確率で
 相手に命中させる事が出来ます。
 左腕にはM61多砲身機関砲を装備。これはF16などに装備されている
 戦闘機用の強力なバルカン砲で、6本の砲身を回転させながら毎分約4000発の
 20ミリ弾を掃射できます。
 耳飾り部分には自由電子レーザーを装備。100メガワットに近い超高出力レーザを照射し、
 照射した全ての物質を切断します。
 装甲は戦車並みの防弾装甲で出来ており、高性能炸薬榴弾(いわゆるグレネード弾)ぐらいの
 火器を使用せねば、まったく損傷は与えられません。
 勿論、全ての火器は弾切れなどの心配のないほどの弾薬を内蔵しており・・・・・」

それから三分ほど長瀬の説明は続いた
 
「確かに・・・人間では決して真似できない最強の傭兵だわ・・」
長瀬の説明を聞いている限りではセリオの兵器力は脅威だ。
最新式の兵器で重装備し、人間では一度に使えないような兵器で
重複攻撃する。しかも最新式のコンピューターで計算し、ミスもない。

「しかも今回のテロでは、テロリストはセリオに核兵器の解除装置を内蔵させています。
 セリオを破壊する以外に核を止める方法は・・・」
長瀬はそこで言葉を止めた。
「確かに・・・今のところはセリオ破壊を前提とした核発射防止を
 優先するしかなさそうね・・・」

綾香は前に国防省長官から核発射を解除するPALキーをもらって
いたが、その解除方法を聞く前に芹香の電波によって
長官を殺されてしまっていた。
綾香たちは解除方法を知らないのだ。
セリオを破壊する以外に今のところ有効な手はない。
「セリオ破壊、か・・・」
綾香の表情に少し迷いが見える。
長瀬はそれを見逃さなかった。

「あの〜・・・ちょっと提案があるんです・・・」
長瀬が綾香に言う。
「提案?」
「はい・・・出来れば私もセリオ破壊をサポートさせて欲しいんです。」
「私と一緒に?無茶よ!長瀬さんはこのままここから脱出してください!」
「この絶海の孤島からどうやって?」
「それは・・・・」
「セリオを破壊するのには私が必要です。」
「・・・必要なのはあなたじゃない。あなたの知識よ。」
「セリオは私の娘です。私には破壊する権利、
 いや、破壊しなければならない義務があります。」

いつもの長瀬ののんびりした雰囲気はなく、長瀬の目は真剣だった。

「・・・わかったわ・・・」
いつもと違う長瀬の意思に負けて、綾香は承諾した。
「ただし、一緒に行動はしない。あなたには安全な場所に
 隠れて私をサポートしてもらいます。いいですね?」
綾香の条件に長瀬は
「・・・ありがとうございます。それだけで十分です。」
と、いつもののんびりした笑顔で答えた。

「でも、あなたはどこに身を隠すの?」
「ああ、それなら大丈夫です。」
長瀬はそう言って自分の服をいじった、
すると、長瀬の体が消えた。
「この光学迷彩がありますから。」
「ふ〜ん・・・まあいいわ、何かあったら私に無線連絡をちょうだい、
 私もわからないことがあったらあなたに連絡するから。」

そう言って綾香は長瀬と別れた。



12月31日 午後9時00分 HM研究所地下四階

「そうですか・・・はい・・・はい・・・わかりました・・では。」
姫川琴音はそう言うと電話を切った。
相手は保科智子である。
「来栖川さんは、遂に長瀬主任さんを救出されたんですね・・・」
琴音にはこの言葉の意味がわかっていた。
このままでは次は浩之が救出されてしまう、だから――――

「琴音・・・あんたの出番や・・・」

保科さんはそう言われました。

「私が・・・来栖川さんを止めなくちゃならない・・・
 みんなのためにも・・・そして・・・」

これが間違ってるっていう事はわかってる。
藤田さんは来栖川さんのことを好きだっていう事もわかってる。
確かに藤田さんの思いを無視してる。

でも・・・わたしは・・・それでも藤田さんの事が――――

「私は・・・藤田さんのことが好き・・・だから、どうしても・・・
 来栖川さんの存在が・・・認められないんです・・・」


これが間違った闘いであるということはわかっている。
彼女はそう思った。

しかし、人を愛するがゆえに
彼女はあえて間違った闘いを強いるというのか・・・
 

悲しい闘いが今、始まる――――


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浩之への思いがゆえに、
綾香に闘いを強いる琴音。
二人が闘いの先に得るものは!?

次回 メタルギア・アヤカ
第十章 『Psyco Soldier』


こんばんにゃ〜、助造です。

う〜ん、かなりセリオぶっ飛んでますね(爆)
『大体、何で腕に戦闘機用の機関銃が装着出来るんだ!?』、など
の設定は大目に見てください。

次回は琴音との戦闘の予定です。
なんか最近戦闘が多いような・・・(爆)

感想・・・のようなものです。

>NTTTさん
『メカミステリ/密室』
なに!?読者への挑戦、ですと!?
ふっふっふ・・・この名探偵助造(ウルトラ嘘)に
挑戦とは・・・おもしろいですぅ!
・
(推理中)
・
だあぁぁぁ!!わからん!!(爆)
あっ、こういうトリックだったのか〜
なるほど〜。(笑)

>WIZさん
『1/6リトルマイレディ(1)』
えっ!?30cmの綾香ですって!?
・
(想像中)
・
ぐはっ!?ヤ、ヤバイ・・・
なんか自分の中のフェチニズムが・・・(爆)

>日々野英次さん
『ましろとまくら そにょ1』
>皮をはいだら黒うさぎも白うさぎも一緒ですよ
いきなりこんな事呟かれたら確かに怖いです。(笑)

>雀バル雀 さん
『呟き』
これからのメイドロボはこういう風に
進化していったら、ちょっと笑えます。
かなり、物騒な事言ってるのに
マルチののんびりした反応が良いです。

でわでわ。