学校へ行こう! わたし、森川由綺。 こう見えても(見たまんまだけどねー)売れっ子アイドルなの。 歩いてても誰も気づかない。その“さりげなさ”が魅力ってわけ。 そこ行くおにーさん。あんまりジロジロ見ないでね。 いくら美少女でも、彼氏持ちなんだから(きゃ〜☆) さーて、久しぶりに学校でも行こーっと。 大学なんて、ま、サクセスフルな人生まっしぐらのわたしには、たいして意味ないんだけどね。 苦労して受験して入ったんだから。学費ももったいないし。 角を曲がるといよいよ正門。 冬弥くんに会えたら嬉しいな。 あれ? 向こうから歩いてくるのは…はるか? 「あ、由綺」 「ひさしぶりー。元気?」 「………」 なにかきまずそうな雰囲気。 この子って高校のころからの付き合いだけど、なに考えてるのかいまだに分からない。 「う、うん」 芸能人だから遠慮してるのかも。 それだと、ちょっとさみしいな。 「…学校、行くの?」 「うん♪ たまには出席しないとね」 なによ。わたしが学校行ったら悪いみたいな言い方。 中卒のオガタといっしょにしないでよ。末はコロンビア大学に留学する予定なの。 「そう…」 わたしの顔をじろじろと見つめながら何事か呟いている。 いやーな気分。 「そうだね」 ひとり、うんうんと納得。 「がんばってね」 「あ、ちょっとー」 一方的に励ましの言葉を残すと、逃げるように早足で去ってしまった。 残されたわたしは、しばらく呆然とその後ろ姿を見詰めていた。 「な、なんなんだろ」 不審に思いながらも、わたしは気を取り直して歩みを進めた。 そこには… 「…!?」 校門はあちこちに張られた大量のポスターと大型のたて看板で埋め尽くされて… 『僕は森川由綺せいで合格枠からあぶれました! <昨年度不合格者一同>』 『森川由綺マネーで校舎にクーラーを設置しよう。 <●●大学自治労>』 『由綺ちゃんのゲタは何点? 教えてー <正しい受験を主張する会>』 『一芸入試猛反対。大学衰退、ひいてはブルジョワジーの犬どもによる学府の破壊につながる! <革命○派本部>』 「………」 ペンキで殴り書きされた抗議、文句―― わたしは言葉を失い、北風に震えながら立ち尽くしていた。 * どさり 「美咲さん、これでいいかな?」 「ご苦労様、冬弥くん」 冬弥は汗を拭いながら、床に積まれたベニヤ板の山を見て訊ねた。 「しかし…こんなに大量の板、なんに使うんですか」 「え?」 動揺を悟られぬように、にっこりと微笑んで 「ぶ、舞台のセットに…その…あはは」 「…?」 たどたどしく答える。 冬弥はその様子にすこしひっかかりを感じていたが、気のせいだろうと自分を納得させた。 「手伝おうか?」 「い…いい! ひとりでやるからっ!」 (おわり) -------------------------------------------------------------------- あとがき やっぱりこのネタは多いんでしょうか?(^^; 涼子ちゃんがんばれ(笑)がんばって早稲田を卒業しよう!http://www.geocities.co.jp/Playtown-Dice/8321/