ぎちぎち 「くっ! た、大志!これはなんのマネよ!」 あたしは椅子に座らされる格好で、見事に縛りあげられていた。 解どこうと抗ってみるが、かえって荒縄が食いこんで、苦しい―― 「ふふ、いい眺めだな。」 お得意のポーズ――グラサンを中指でくいと持ち上げ 頬を歪める。 「な、なにする気よぉっ!い、いまなら罪は軽いわよ!ご両親泣かせてもいいの?ね?」 「失礼な。まるで我輩が犯罪者のような言い様だな」 「女の子に睡眠薬のませて、縛り上げて監禁してるだけで、もう十分犯罪よっ!」 憤るあたしを、いつもの(どこからきてるんだか判らない)根拠の無い自信に満ちた笑いを浮かべて 「ふっ、あいかわらずのはねっかえり。 ――だがしかーしっ!」 びしっと 眼前に指を尽き付けて 怯んだあたしに追い討ちをかけるように 「いつまで持つかな。その自信」 「ど、どういう意味……」 言葉が終わらないうちに、 あたしは大志の取り出した写真に、目を奪われる。 「…そ、それ…」 「ん? この写真がどうかしたのか?」 「くっ」 写っているのは…あ、あたしの部屋!? そして―― 「我輩の友人から借りた高感度赤外線・超小型カメラが捕らえたスクープ映像だ」 「な、なにがスクープよっ!この変態」 「なんとでも言いたまえ。マイ同志瑞希嬢、君の命運はこの我輩が握っている――といっても当たらずも遠からず」 そう。 こんな写真…誰かに見られたら… ま、まさか… 「安心したまえ。誰にも見せてはいない」 「ほっ…」 「もちろん」 勝ち誇ったように、高らかに詠った 「和樹にも、だ」 「!」 ひらひらと、団扇のであおぐように あたしの顔の前で泳がせて 「もっとも――和樹が『見たい』と言えば、大親友である我輩は断ることはできない」 「ぐっ」 逃げ道は塞がれた。 これを和樹に見せられたら―― 記憶喪失になるまでエンドレスパワーボムか、2人を刺して「誰も知らない遠い海に行って死にます!」以外、道はない。 「では――司法取引といこうじゃないか。セニョリータ」 あたしは―― 「わかったわよ」 「『わかりました』だろ? ん?」 「――わかりました。なんでも言うことをききます。だから、お願い…」 「う〜ん♪いい心がけだぞ」 「………」 「それでは――Let’sじゃじゃ馬ならし☆」 うなずく他なかった―― 「はあ はぁ」 「どうした、ん?」 「おねがい…おねがいします…もうやめてっ!」 苦しい おねがい…もう…ダメ… 「ほう。我輩には喜んでいるように見えるが」 「よ、喜ぶわけないでしょ!」 思わず声を荒げる。 けれど、抵抗もここまで。 我に返ったあたしは、己の無力さを悟るしかない。 「ふむ。せっかく和樹好みの“自分に素直な女”に変えてやろうと思ったのにな」 「だ、だれが…」 「ふふ、口ではそう言ってても」 ぱらり 写真を付き付けられ、耐えられず目をそらす。 「体は欲望に正直。――口では何を言おうと、な」 「くぅ…」 「『バカバカしい』と言いつつ、隠れてパラパラを練習する――そんな恥ずかしい女なのさ。認めたらどうかね」 「うう…」 頬に、熱い涙が つうと糸を引いた。 「安心したまえ。今は苦しくとも、やがて快感に変わる。 ――このプログラムが終了した時…君は我らゴッドハンドの一人として覚醒するのさ、がははっ!」 「い、いやよ! オタクなんてまっぴら………」 「さあ、観念して。一緒にありがた〜いビデオを見ようじゃないか♪なーに、モモちゃんの魅力が脳髄に凝り固まった常識の殻を、木っ端みじんにしてくれるだろう」 「いやぁぁぁぁ〜〜〜!」 (数ヶ月後――) 「はぁ〜」 「しっかし、まさか瑞希がコスプレなんてなぁ、あはは」 「…これで…あたしも立派なオタクか…はぁ…」 おしまいhttp://www.geocities.co.jp/Playtown-Dice/8321/