城探訪記・中編 投稿者:ジーク・リーフ 投稿日:8月11日(土)11時46分
 「やっと続き?」
 「はい、続きです」
 「まだこんな爺くさい企画やるの?」
 「はい、前編だけ書いて無責任に終わらせるわけにはいきませんから」
 「まあいいわ、さっさと初めよ」
 「はい、ではどうぞ」



 「わぁー」
 「ほぉー」
 きれいな建物です。最近修復したのでしょうか?
 「きれいですね。できたばかりみたいですね」
 「いえ、きれいとはいえ、4、5、年は経っているかと」
 最初の門をくぐります。
 「きれいな枡形門ですね」
 「枡形門ですか?」
 「はい、最初の門と次の櫓門で枡形に区切り、わざと人の流れを直角になるようにした守るための知恵です」
 「へぇ、そうなんですか」
 「これによって守備側は敵を2方向あるいは3方向から攻撃可能になります」
 「大変ですねぇ。それにしてもきれいですねぇ」
 「はい、まるで新築のような・・・」
 マルチさんが櫓門の下で鼻をまるで犬のようにひくつかしています。
 「わぁ、こちらの門は木の香りがします」
 私も嗅覚センサーを働かせます。古材ではない、新材らしい、理緒さんが嫌いそうな(虫ですからね)いい香りがします。
 「どうやら新築みたいですね」
 「こちらに表札があります」
 マルチさんが駆けていきます。

 表札につきました。なるほど、そういうことですか。
 「この銅(あかがね)門は平成9年に復元新築されたようですね」
 「セリオさん、こちらに作りかけの壁があります」
 マルチさんがまた駆け出しました。
 
 確かに作りかけのような白壁があります。
 「これは先程の銅門を作るためのテストヘッドみたいですね」
 「試験的にですか?」
 「はい、今ではこれほどの和風建築を建てる事はそうはありません、それで、白壁を試験的に作ってみたらしいですね」
 「それを記念に残してあるのですね」
 「そのようです」

 近くにある建物に入ります。
 「ここでお城の入城券が買えるみたいです」
 「歴史見聞館ですか。ここも見ていきますか?」
 「そうしましょう」
 
 「名前どおり小田原の歴史を紹介しているだけのようですね」
 「セリオさん、こちらを見てください」
 「後北条五代時代を紹介しているみたいですね」
 「わぁ、すごいです」
 「紙芝居ですね。初代北條早雲の国盗りを描いたものですね」
 「戦国時代初期の戦国大名です。あまり初期すぎて『信長○野望』にも出てきませんね」
 「セリオさん、伏字になっていませんよ」
 
 「セリオさん、こちらは?」
 「三代目北條氏康の河越夜戦のようですね」
 「河越夜戦?」
 「日本戦国三大夜戦の一つです。北條家の台頭を快く思わなかった関東旧勢力が八万という大兵力を結集し河越城を包囲しました」
 「はい」
 「当時北條家主力は駿河、今の静岡県で今川義元、武田晴信と対陣中。急いで二家と講和し八千の兵を率いて駆けつけたのです」
 「はい」
 「到着後、日中は和平交渉をし、時間を稼ぎました。また、子の行為は包囲軍に対し楽観論を抱かせ、士気が緩みました」
 「はい」
 「やがて夜になり、北條軍は包囲軍に対して波状攻撃を開始し、包囲軍は士気の緩みもあってか大混乱、各個撃破されました」
 「ほうほう」
 「この勝利が関東における北條氏の優位を不動のものとし、また、関東における上杉謙信との対立を招くことになりました」
 「娘さんや、どこかのガイドさんかね」
 「いえ、違いますが」
 「そうか、わかりやすくて、上手だったのぉ」
 「お褒めに預かり光栄です。では」
 
 マルチさんはどこへいったのでしょうか。
 「セリオさーん、ここです」
 「心配しました」
 「すみませぇぇん。押し出されてしまいました」
 「大丈夫でしたか」
 「はい、頑丈だけがとりえです」
 それは取り柄ではないような。
 「次はここを見ましょう」
 「からくり人形による小田原評定ですか」
 
 「すっごいですねぇー。からくり人形さんたちがしゃべってましたよ」
 それでは私たちの立場は一体。
 「ああ言うのを小田原評定というのです」
 「小田原城で評定するのがですか?」
 「いえ、問題について、論議ばっかりに時間を費やしまとまらない事を言います」
 「私たちの知っている方ではいませんね」
 「あの人たちは思いついた事をすぐ実行に移しますからね」
 「それをはなんて言うんですか?」
 「思い立ったら即暴走」
 「そうなんですか」
 いえ、冗談ですよ。綾香様を除いては。
 
 「今度は江戸時代の宿場町としての歴史のようですね」
 「そうですね」
 「やはりありありますね」
 「はい?」
 「地方の名産と称してお土産の紹介です」
 「わぁ、どれを買いましょうか?」
 「体のいいCMですね」
 {?」

 「セリオさん、スタンプがありますよ」
 「マルチさん、そこに紙があります。押してお土産にしましょう」
 「そうですね」
 
 「ここだけでも十分楽しめましたね」
 「そうですね」
 そこで、見聞館を振返って見ます。
 「見聞館用に新しく作ったものではないようですね」
 「ここに説明が書いてありますよ」
 マルチさんにしてはなかなかやりますね。
 「・・・、元小学校の講堂だったようですね」
 「そうなんですか」
 「外観は今の体育館兼用の講堂と違い、こじんまりとしていい建物です」
 「そうですね。執事長さんはこういう建物に通ってたんですね」
 「そうですね」


 

 「あれ、まだ終わらないの?」
 「そうですね。あっ、ここに作者の手紙があります」
 「うん、何々。『しまった! まだまだ文が長くなりそうだ。まだ資料の写真できてないし』」
 「たいへんですね」
 「いいかげんね」
 「では最終編を期待して待ってください」
 「ほんとに終わるかどうかわからないじゃない」
 「まぁ、そうですけど」
 「でしょ。その辺を考えないと。と言う訳で、それじゃあね」
 「えぇっ、そっそれでは失礼します」
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