大雪の日 投稿者:ジーク・リーフ 投稿日:1月23日(火)12時09分
 雪が降っていた。
 重く曇った空から、真っ白な雪がゆらゆらと舞い降りていた。
 
 それを横目に見つつ、歩いていた。
 珍しいなと思いつつ、歩いていた。
 
 だってここは首都圏だから・・・。


 その日は稀に見る大雪の日だった。
 都市交通網は麻痺し、多くの人が寒い中待っていた。
 
 そう、この姉妹も。

 「お嬢様、まだまだ時間がかかるようですな」
 「・・・」
 「あっ、そうですな。綾香お嬢様です」
 「なんか見た事ある、こんな日に相応しくない車があると思ったら」
 「・・・」
 「電車もバスも止まってるらしいわ。だからセリオとマルチを見つけてどっか寄ってこうかなって』
 「・・・」
 「そうですな。このままこの狭い車内より、外で休憩なさったほうがよろしいと思います。
  道が空き次第お迎えに上がりますので」
 「そうよ姉さん。さぁ行こう」
 「・・・」


 そう、この姉妹も。

 「バス来ませんね」
 「そうですね。このままですと研究所に戻るのも早くて明日の未明ですかね」
 「それは大変ですぅ」
 「それにこのままこう待っていれば、駆動部などに大きな負担を掛ける場合も考えられます」
 「そうなんですか。どうしましょう、セリオさん」
 「このまま待つより、少しでも行動に移るほうが得策と思います」
 「あっ、いたいた。セリオ、マルチ、まだバス待ってるの?」
 「芹香様、綾香様、どうしたんですか?」
 「この天気じゃ、車も動かないし、商店街にでも寄ろうかなって」
 「・・・」
 「そうですね。たまには寄り道もいいと重いしますしぃ」
 「ではゲームセンターでも行きますか」


 「おぅ、寒い」
 まったく寒い日だぜ。この調子だと明日も雪だな。先輩来れるのか? 
 まぁ、あの爺だし何とかするんだろう。
 それにしても寒い。灯油は入れたし、後はずっと炬燵にでもくるまっとるか。

 ピンポーン

 ったく、こんな寒い日に誰だ。あかりなら勝手に入ってくるだろうし。志保かセールスだろう。無視無視。

 ピンポーン

 しつこいなぁ。

 ピンポピンポピンポーン

 はいはい、わかったわかった。でればいいんだろ。

 バタン

 「浩之、遅い、早く開けなさいよ」
 「何だ先輩と綾香とセリオと、マルチか」
 「・・・」
 「ごめん、セールスか志保かと思って」
 「それだとしても早く開けるべきでは」
 「ともかく早く入れて」

 「爺の車も止まって、バスも止まって、その上吹雪いて屋敷にも帰れんって?」
 「ハイ、そうです。この地区と違い、建物の密集率が違いますので風を遮蔽できません」
 「それで家に来たのか」
 「そーです」
 「セリオ、お茶」
 「ハイ、お嬢様」
 「マルチ、お茶菓子」
 「はい、浩之さん。まだありましたか?」
 「この前買いに行ったのがまだあったはずだがな」
 「浩之さん、お湯ガもう無いようです。沸かしておきます」
 「すまんなセリオ』
 「・・・」
 「セリオ、まだぁー』
 「ひとつ言っていいか。綾香?」
 「なによ?』
 「なに人の家来て偉そーにしているんだ」
 「だって寒いもん』
 「寒いもんじゃねぇ!』
 「・・・」
 「わかりました芹香お嬢様。浩之さん、昆布茶ありましたか?」
 「知らんぞ」
 「そうですか、あかりさんは知ってますか?」
 「それならここにあるはずだけど」
 「有りました」
 「あかり、何時の間に来た?」
 「えっ、ちゃんとお邪魔しますって言ったんだけど」
 「すまん、聞いとらんかった』
 「いいよ、浩之ちゃん」
 「神岸さんは何もしないで入れるの? へぇー」
 「綾香、何が言いたい?」
 「別にー』
 「ひっ、浩之ちゃん、土鍋持ってきたんだけど」
 「おう、そうか。カセットコンロ出してくるから冷蔵庫の勝手に使っていいから」
 「わかったよ」

  
 その後鍋をつつきながらみんなで楽しくワイワイやった。


 次の日はうちの高校は休みになったらしい。まああんな坂の上にある学校だ。当然だな。
 だから充分雪遊びを堪能した。先輩はとても楽しそうだった。
 それにしても、全長10米の雪だるまを作るなんぞ、ほんと人間離れしてるな、綾香とセリオ。


 追記 爺はあの後次の日の未明まで閉じ込められたらしい。 

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 ほんと、都市部は少しの雪で簡単に交通網が麻痺しますね。
 いつもだと車で15分くらいの場所も帰るのに1時間半かかったらしいし。
 この前の大雨もそうだけど最近異常気象が多いですな。