【注意】この作品は今週発売の『バキ』のネタバレが存在します。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「あかり……」
「浩之ちゃん……」
今、正に初めて肌を重ねんとする幼なじみ二人。震えながらもふとドアの方を見ると、いつの間にか幻影のように立つ影があった。
「〜〜〜〜〜〜ッッ」
「え?」
驚愕に硬直する浩之を感じ、あかりもその視線の方向を追った。
「お、叔母さ……」
「お母さんッ!?」
無言ながらも狂躁の笑みを浮かべるあかり母に、二人の気負いは一気に押されていく。あまりに突然な展開に空間も時間も歩みを止めたかのようだ。無限に続くと思われた沈黙、しかしこの緊張状態を破ったのはあかりからだった。
「お、お母さん! 娘の情事を覗き見するなんて趣味悪いよっ!」
声を振り絞っての精一杯の非難。道徳的過ちが己達にあると認識していながらも羞恥の受け入れを拒む。
「クス?」
娘の不貞を嘆く糾弾が返ってくると覚悟していた二人に聞こえたのは、さも楽しそうに笑うひかりの押し殺しきれない声であった。
「クスクスクスクス……オモシロイことを言うわね、あかり」
何がそんなに、と二人が問い詰めようとする前に母親が台詞を続けた。
「挑んできた雄を役立たずにすることを情事と呼ぶなど、生物史始まって以来のことだわね」
浩之・あかりダブルショック。現状を忘れて自省に入ってしまう。
「(胸? やっぱり保科さんやレミィみたいな胸が無いのがいけないの?)」
「(ち、違う! 俺は益体無しなんかじゃ……ウワァァァァン)」
もはやトラウマ確定、ブルブルガタガタ震えているしかなかった。
終わり
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
この調子で楓・耕一編、名雪・祐一編などいくらでも作れそう……。