ある日のこと。 「なあ、セリオ。マルチの目は普通の人間と変わりないらしいけど、おまえはどうなんだ?」 浩之は、前々から疑問に思っていたことをセリオに聞いていた。 「はい。私の場合は、およそ20倍までのズームが可能になってます」 「へえ。 じゃあ、あの看板になんて書いてあるかわかるか?」 浩之が指差したのは、100メートル以上は先にあろうかという、店の前にある小さな看板 である。普通の人間には判別は不可能だろう。 「はい、少々お待ちください・・・」 しかしセリオはそう言うと、そちらをじっと見つめ── ウィーンという機会音と共に、目がにょっきりと飛び出して長くなった。 『確かにズームだ・・・』 あまりの衝撃にその場を走り去りながら、浩之はそれだけを考えていた。 「カメラ、お買い得! いまだけ30%引き! ・・・ですね」 そう言いながら、その内容を浩之に報告すべく、あとを追って行くセリオ。 ・・・頼むからそのまま走らないで・・・ ---------------------------------------------------------- お久しぶりでございます。体調を崩したりして、約2週間ぶりの笹波です。 実は、現在入院中の身でありまして、「マルチ」の話のほうは、一時、休載させてもらい ます。すみません。短編ギャグの方は、無理しない程度に上げて行くつもりです。 また、上記の様なわけで、過去ログをとっていないため、感想、レスなどは申し訳ありませ んが、なしとさせていただきます。 それでは、また!