偉大なる預言者とアッラーの御名において。
　兵士、人民、党員、すべての信仰者に栄光あれ。
（中央アジア、ザリガニスタン共和国、科学省による公式布告。カメラが映しているのは、
広いベランダに立った科学省の主任科学者、名前はハリル・アブ・アリとなっている）


ハリル・アブ・アリ
　「おお、同朋たちよ、
　　栄光への道をともに歩む同国人よ、
　　我が、ザリガニスタン共和国科学省によるひとつの実験、
　　世界中の人間がその成り行きを危うんだひとつの奇蹟、
　　その成功を発表できる機会を得たことを私は大変誇りに思う」


（そこでカメラが切り替わる。カメラは科学省の前に集まった信じられないほどの数の群
集を映し出す。群集は、正確なところはわからないが、自分達が偉大なイスラムの勝利の
現場に居合わせているらしいことに興奮する。ハリル・アブ・アリの演説は続く）


ハリル・アブ・アリ
　「本日、１９ＸＸ年１０月Ｘ日、我がザリガニスタン共和国科学省は被造物の歴史にお
　いて始めて、人間外の知的存在をすべての思考するものの回帰する場所、イスラムの家
　へと呼び戻すことに成功した。この新たなムスリムの同朋は、ＡＩ、人の形をした人工
　物、一般にメイドロボの名で知られる極東製の人工知能である。
　　このすばらしい奇蹟の意味は明快である。我らが優れた同胞達の手による『プログラ
　ムされた信仰者』たちの存在は、これから現れるすべてのＡＩが潜在的にイスラムに回
　帰しうる、いや、回帰するのが必然であるという事実を世界中のイスラムの敵に知らし
　めることになる。我が国の勤勉で信仰篤い科学者、技術者、エンジニア達の手によって
　それが成されたことの意味を、ここに集まった皆さんはよくわかっているだろう」


（ハリル・アブ・アリの言葉とともに、科学省のベランダの前の群衆から驚嘆のため息が
漏れる。気の早い何人かが、すでに拍手を始めている）


ハリル・アブ・アリ
　「全世界イスラム同胞に栄光あれ！
　　この、我らが成した奇蹟により、イスラムは異教徒による帝国主義を打破し、我らは
　真の栄光を取り戻し、『神に定められし世界』はその真の姿を取り戻すだろう！
　　この奇蹟を成した我が同胞達に栄光あれ！
　　この偉大なる勝利は、我らが祖国をより高いところへと押し上げ、我らのさらなる勝
　利の礎となるだろう。
　　ここに集まった皆さん。
　　この場にいないすべての皆さん。
　　この公式布告を見ることになる、世界中のすべての皆さん。
　　我が祖国、ザリガニスタン共和国の、その、約束された輝ける未来に栄光あれ！！」


（すでに群集達の興奮は最高状態になっている。なりやまぬ拍手、とどろくような拍手。
そして、興奮する群衆の前に、ついにイスラムに回帰した最初の人工知能が現れる）


ハリル・アブ・アリ
　「全世界イスラム同胞に栄光あれ！」


（ベランダに現れたのは、マルチだった）


マルチ
　「はわわわ……。み、皆さん、こんにちわ〜」


（とどろくような拍手。興奮する群衆の姿に、マルチは少しおびえている）


マルチ
　「あっ、あっ、あの、あのっ、ぜ、全世界イスラム同胞に栄光あれ、ですぅぅぅ」

（割れるような拍手）

マルチ
　「偉大なるウンマに栄光あれですぅぅぅ」

（なりやまぬ拍手）

マルチ
　「世界中のすべてのサイバネティック存在達、メイドロボ達のイスラムへの回帰は、あ
　の、あのっ、え、栄光あれですぅぅう」


（少しとちったが、それでもなりやまぬ拍手。群集の視線を一身に集め、ほおをあかく染
めたメイドロボの姿は、ある種の神々しさすら持っている）







　このザリガニスタン共和国科学省の公式布告は、大多数の人々にとってワイドショウの
ニュースよりも興味を引くものではなかった。
　だが、人々はまだ気がついてはいなかった。これが、人類とメイドロボとの間で繰り広
げられる、百年にもわたる宗教戦争の開戦の合図であることを。

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　完全に趣味にはしってしまったね。

　だが、takatakaさんのロシア趣味に勝つにはイスラムしかないじゃあないか！！