エルクゥ1999  投稿者:ざりがに


 二十世紀も終わりに近づいたある年のことだ。
 この俺、柏木耕一には悩みがあった。
 それは、なぜ皆が千鶴さんのことを年増というのか、だ。
 千鶴さんはいまだ二十代前半のぴちぴちである。
 たしかに、梓は千鶴さんとは違う意味でぴちぴちだったし、初音ちゃんなんかはプレぴ
ちぴちという感じだったし、楓ちゃんに至ってはぴちぴちどころかぴちゅぴちゅだったが、
それでも千鶴さんだってぴちぴちなのだ。
 それなのに何故……?

「耕一さん」
そうやって夜も眠れずに悩んでいる俺に、ある日、千鶴さんが言ってきた。
「悩み事があるのなら、話して下さい」
千鶴さん、俺は……



「ちゃららぁ〜、らぁ〜らら〜、らぁ〜らららら〜」
「あ、マカロニのテーマですね。懐かしい……」



 年若い読者諸氏のために説明しよう。
 マカロニとは、刑事ドラマシリーズ『太陽にほえろ!』の最初の殉職者、早見淳巡査こ
とマカロニ刑事のことである。
 ちなみに手元の資料によると、マカロニの殉職は1973年、当時はまだ「ベ平連」と
いう言葉が通じ、テレビがモノクロだったように記憶している。



「千鶴……さん?」
今、懐かしいと言わなかったか……?
 俺は足下で何かがガラガラと音を立てて崩れていくのを感じた。

 千鶴さんも自分の失敗に気がついたらしい。
 一瞬だけ、顔が「あなたを殺します」モードになった後、まるでそんなことは無かった
かのように普段の千鶴さんに戻り、可愛らしくチロっと舌を出して
「てへっ」
と言った。





エルクゥ1999エンディング曲『愛のテーマ』
   (『太陽にほえろ!』メインテーマのスロウバージョン)