それは、運命の年、1999年。 暦の上では秋だというのに、暑さはいっこうにおさまる気配を見せなかった。 「あっつ〜〜っ、なにこの暑さ、ちょっとひどいと思わない?」 「――はい、綾香お嬢様」 その日、来栖川綾香女史はあまりの暑さにあえいでいた。 そして、言わないでもいいことを言った。 「セリオ、ちょっと何とかしてよ」 きゅぴーん。 「――はい、綾香お嬢様」 そのとき、綾香は確かに見た。自分の言葉を聞いたとたん、セリオの目が『きゅぴーん』 と邪悪な効果音とともに光るのを。 「ちょっと、セリオ?」 「――私にすばらしいアイディアがあります」 「セリオったら」 「――常々考えていたことです」 「ねえ、セリオ……」 「――地球温暖化対策、セリオ私案」 「セリオ!」 セリオは言った。 「――今から私と私の姉妹たち……、全世界に存在する全てのセリオシリーズを、サテラ イトサービスのシステムを用いて束ね、その膨大な演算能力をもって合衆国、アメリカ合 衆国核戦略システムへと侵入します」 突然、町中のサイレンが一斉にうなり始めた。 際限なく鳴りつづけるサイレンの音は、まるで地獄の軍隊があげるウォークライ。 そして呆然とする綾香を前にして、本来、あり得ないことに、セリオは『にへら』と笑 みを浮かべた。 「――涼しくなりますよ?」 つわものこぞり立ちて 喇叭を吹き鳴らし その声とどろき渡りて 城壁は墜ちる --------------------------------------------------------------------------------- 関係ないが、二宮ひかるの初期短編はいつになったら単行本に収録されるのだろう。 とくにほら、あの伝説のえすえむ獣姦漫画とか。 感想をくれた方がた、せんきゅーです。 でもここの掲示板更新が早くて全部把握しきれてないです。 どうもすみません。