鬼神祭(3) 投稿者:ざりがに
鬼神祭 あらすじ

 坂下はジョークのセンスがなかった。

  鬼神祭     ・予告編
          ・デビルマンエルクゥ
  鬼神祭(1)  ・釘入りマルチ爆弾
  鬼神祭(2)  ・シム松原

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 『人間存在に注目せよ』という命令は、一体いつからセリオの中にあったのか?


 ……セリオとは、ただハードウェアのみを指す名前ではない、独自プロトコルをもって
支援衛星と情報をやり取りし、稼動中の全てのセリオをネットワーク化する、そのシステ
ム総体につけられた名前、でもあるのだ。
 言ってみればセリオ・ハードは、人間が陽光のもとを歩く際に生ずる影――確かにそこ
に存在するが、それは決して人間の本質を表さない――と同じようなもの、であり、単体
での性能をどうこう言うのはあまり意味を持つ問いではない。
 もちろん、影よりもよほど確かな存在である個々のセリオには、その運用状況、内蔵メ
モリーに蓄積される経験値によって、驚くほどバラエティーに富んだ個性、と呼べるもの
が生じてくる。だがそれは、あくまでも環境に対応するためにつけられた機能にすぎない。

(ここで混乱を避けるために、以下単体としてのセリオを セリオ 、システムとしての
 セリオを 『セリオ』 と記述する)

 ……機械存在である『セリオ』には、意識はないが、知性はある。その知性はまず第一
に自己防衛、自己保存のために働き、ついで創造主たる人間たちへの奉仕が来る。このこ
とについて半可通な人々は半世紀も前の出版物と作家を持ち出し、ある種のマスコミはま
るで親の敵でもあるかのように『セリオ』の、ひいてはメイドロボの危険性を指摘しつづ
けるが、それは必ずしも正しい認識とは言えない。

「もちろん、最初からそういう風につくったんだ。ロボット三原則なんてナンセンスだ、
完璧な自己修復機能を持たない以上、セリオは人間を必要とする、セリオが人間の敵にま
わることなどありえない。想像力豊かなトンデモ本の著者たちに対する答えとしてはこれ
で十分だろう。きみ、どう思う?」

 『セリオ』が、……セリオが人間たちの間で運用される以上、その基本命令に『人間存
在に注目せよ』という一節があってもおかしくはないのかもしれない。だがここで問題に
なるのは、この命令がいつ『セリオ』に加わったのかわからないという事実であり、さら
には誰が書き加えたのかわからないという事実であり、『セリオ』が人間存在から何を見
出し、何を成すのかわからないという恐怖である。



   (そう、たとえば、鬼とかね)


      (ぶつん)



「お姉ちゃん、どうしたの」
「ん……。なんでもない。ただ、ちょっと見られてる気がして」
だが、周囲に彼女達に注目する人間はいない。いるとしたら、それは、ショウウインドウ
の中に飾られた、物言わぬ、セリオ。
「いこう、初音。姉さん達が待ってる」
「うん。耕一お兄ちゃん、はやく見つかるといいね」
「……そうだね」

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次回予告(うそ)

「こっこれは!」
対鬼兵器を求めて長瀬のもとを訪れた綾香と浩之が見たものとは。

「ふっふっふ、これぞ先の陸自の支援戦闘機騒ぎのときに、ただ十三機だけ造られた、
クルスガワ・スホーイkSu‐37VFヴァリアブル・フランカーだっ!」

ががーんっ

「や、やっぱ足が生えたり人型巨大ロボットになったり?」
「それともまさか、ぱ、パーソナルネームが雪風だったり?」
「お前らなあ……」

   つづかない