鬼神祭 投稿者:ざりがに
予告編


音のない映像。
高所から、おそらくヘリコプターから撮った市街。
半壊した建築物、所々で吹き上がる炎、逃げ惑う人々、銃を撃つ警官たち。
そしてうごめく異形のものども。
本来あるべき銃声も悲鳴も、この映像からではわからない。


音のある映像。
ニュースなどで見慣れた、東京のとある主要テレビ局の内部映像。
冷静なことで知られる女性キャスターの混乱した声。
「……現在、本局は何者かによる襲撃を受けており、ちょっと化け物って何よ、
警備のセリオタイプはどうしたの、え、一人? たった一人で」
そこで壁を突き破って出てきた、異形の何か。
手には頭部が半壊したセリオタイプの警備員。
「ひいぃっ」
逃げようとする女性キャスター、カメラにたたきつけられるセリオの残骸、
映像が激しくゆれて、横に倒れる。
難なく女性キャスターを捕まえた『化け物』は、カメラを持って自分を映す。
大写しになった『化け物』の顔。
「……これはお前達人間への宣戦布告だ、我々、狩猟者から、人間たちへの」
そう言って『獲物』を持ち上げる異形の化け物、悲鳴を上げる女性キャスター。
化け物は片手で女性キャスターを頭上に持ち上げ、
ばしゃり。
頭をつぶすと、その血を大きくあけた自らの口へと注ぎ込む。


夜。
一定の間隔でつづく街灯の下を歩く少女。
肩から下げた胴着、短く刈り込んだ髪、強い意思を秘めた瞳、鍛えられた筋肉。
「……高校生か」
突然の声に振り向く。暗がりの中から出てきたのは、二十歳そこそこの、まだ、若い男。
不信に思い、構える少女。
「……しかも格闘技をやっている。同族に迎えるのにおあつらえ向きだ」
話し合いの通じる相手ではなさそうだった。
悠然と近づいてくる男に対し、少女は、いきなり、蹴りを放つ。
男はそれを難なくかわすと、後ろに回りこみ手刀で少女を昏倒させる。
くずおれた少女を支えて、男は地に落ちた胴着を拾う。そこにかかれた名前を見て、
「坂下か。いい同族になれそうだ。狩猟者に。変えてやる。俺の血を飲ませて」


水門。
ざあざあと流れる川の音。
おかっぱ頭の少女。細い手足、細い身体。
後ろから近づいてくる女、顔立ちは、少女と似ている。
「楓」
女が言った。振り返る少女。
その表情を見て、女は、少女が全てを知っていることを悟る。
それでも言葉を続ける女。
「……耕一さんの居所がわかったわ。行って、止めるの」
こくりと、小さくうなずく少女。立ち上がり、女とともに歩き出す。
水門の入り口のところには、残り二人の彼女の姉妹。
厳しい顔をした姉妹たちと歩きながら、ふと空を見上げる少女。
月が出ていた。
「耕一さん……次郎衛門」
彼は制御できなかったのだ。


自らの血を用いて新たな眷属を生み出す鬼人、柏木耕一。
他愛のない日常に潜む狂気の萌芽。
ダリエリ達エルクゥの亡霊による無差別憑依攻撃。
それにより相互不信に陥り殺し合いを始めるかつての隣人。


    生き残るのは、

      日本か、

        エルクゥか


窓に格子の入った病院。
『太田』と入り口に掛けられた病室。
「か、香奈子ちゃん!?」
ベッドの上に身を起こした人影。
「瑞穂、私、……呼んでる」



   近日公開

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どおも、はじめまして。
みなみなさまのssを読んでいて思わず自分もこんなのを書いてしまいました。
こういうのも、アリじゃないかと。