サービスデー 投稿者:七草武光
「それじゃ浩之ちゃん、わたし買い物していくから」
「おう」
「7時前には家に来てよ?」
「分かってる」

今日はあかりの家で夕飯だ。
なんでも、俺のうちに夕食を作りにいくと
予算制限が厳しくて作りたいものが作れないんで、
欲求不満なんだそうだ。

つまるところ、今日は豪勢な夕食がいただけるというわけで。
期待に胸を膨らませている。はっきりいって。
……ちなみに両親は旅行で留守らしい。
これまた期待に胸を膨らませている。違う意味で。

ぴんぽーん

「うぃーす、来たぞ、あかりぃ」
「あ、浩之ちゃん、……本日はサービスデーだよ」

なんだと?
いきなり何の前触れもなく、あかりはそう切り出してきた。

「あん? 何の特売だ?」
「違うよう、『浩之ちゃんサービスデー』だよ」
「なんじゃそら」
「だから、日ごろお世話になってる浩之ちゃんに感謝の意味を込めて……」

……ははあ。

「……作りすぎたな?」
「あう」
「何人前だ?」
「えーと……」
「……」
「……多分4人前くらい」
「ったく、しょーがねーな」
「……ごめん」

すると、俺の割り当ては3人前か。
まあ、3人前くらいなら食えん事もないだろ。はらぺこだし。

「サービスデーなら仕方ない。腹一杯食うとしますか」
「うん、たくさん食べてね!」

・
・
・
・
・

「……おい」
「う」
「4人前?」
「……う」
「誰の?」
「…………うがんだ」

ぺしっぺしっぺしっ

「あうあうあう」
「せめてホンジャ○カの石塚と言え!」
「うん、今度から気をつける」

ぺしっ

「あう」
「反省する場所が違う!」

……まったく、こりゃどう見ても8人前はあるぞ。
まあ、豪勢でうまそうなのは確かだが。

よし。

「あかりの割り当ては3人前だ」
「えええっ!?」
「責任持って食えよ」
「でもでもっ、今日は浩之ちゃんのために一生懸命作ったんだから、ここは一発
  7人前一気にバーンとォ!」
「……鬼かおまえは」

何はともあれ2人は黙々と食し続け……


あー

いやー

食った食った


「ごちそうさまー……」
「おそまつさまー……」

いや……なんかこう……精魂尽き果てたわ……
まだちょっと残ってるが。

「あ、そうだ」
「あん?」
「デザートにプリンあるけど、食べる?」
「絶対食わん」
「ぱくぱく。おいしいのに」
「――ってまだ食うんかい!」
「甘いものは入るとこ違うもんっ」

これだから女って奴は……

「浩之ちゃんは、デザート食べないの?」
「だから食わんっちゅーとろーが」
「そうじゃなくて」
「……そうじゃなくて?」
「あかり丼」
「………」

ぐわばっ

「うおっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「きゃあっ!?」
「今すぐ食う、すかさず食う、てってーてきに食うっっ!」
「ひ、浩之ちゃん、そんなに慌てなくてもおっ!」
「やかましいっ! 今日は『浩之ちゃんサービスデー』だろうがっ!
 きりきり念入りにサービスせんかぁい!!」
「あ〜〜れ〜〜〜」
「……いまどき上げんぞ、そんな悲鳴」

(例のBGM)

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   ・
   ・
   ・

さすがサービスデー、今日のあかり丼は特上大盛り。


しかもつゆだくだった。


……いやまあ、それはいいのだが。

「う」
「どうしたの?」

ばたばたばたばた……

「ひ、浩之ちゃん?」

けろけろけろけろ……

「うええええええええ……」
「どうしたの、浩之ちゃん。……つわり?」
「んなわけあるかいっ!
  ……あんだけ食った直後にあんな激しい運動したら、普通はこうなるっつーの」
「自分から激しくしたくせに」

そうゆうこと言うか。今のでおまえのファン20人は減ったぞ。

「しかし、おまえは大丈夫なのか?」
「うん、大丈夫だよ」
「……よく平気だな」




「だってほら、入るところが違うから」


おあとがよろしいようで。