−遊撃宇宙戦艦セリオン・第三十二話『真なるレザム』− 投稿者:紫炎
「俺は俺を取り戻す…」
『そんな時間がお前にあるというのか?』
「…生きてる限り、チャンスなんていくらだってあるさ!」
『どうかな?』
 対峙する二人、やがて終幕の音が鳴り響く。


−遊撃宇宙戦艦セリオン・第三十二話『真なるレザム』−


「浩之!!」
「よお雅史、調子はどうだ?」
「最悪だよ…」
 だが雅史は笑っていた。
「………」
「……おかえり浩之」
「ただいま」
『さてどうする?』
 再会を喜ぶ二人の前にグインが立ちはだかった。
「グイン…つったけ? 俺の中に芽生えたエルクゥの記憶にもその名前はある」
『………』
「グイン…エルクゥの王、真なるレザム…<母星>としてさえも存在している
モノ…すべての始まりにして終わりの存在…つまりは神か」
『母星、そうだエルクゥのすべてに存在している星…だが現実には
存在していない星……常に流浪として星々を渡るエルクゥたちにとって
の安らぎとして生み出された妄想…そして仕えるべき象徴…』
「だがエルクゥはその仕組まれた本能には逆らえない。だからこそ
お前は『王』として存在できるんだ!」
 浩之は駆けた、その瞬発力は柳川や九品仏の比ではない。
『ジロウエモン!?』
 ズガァァアアアアンッ!!
「くう…」
『この力…ジロウエモンと同等…耕一とは比べるまでもない…か』
 浩之とグインの拳がぶつかりあう。
『一瞬の命の煌き…それが貴様の力の秘密、おとなしく我の剣を
受け入れよ!』
「いやだねっ!!!」

 ビュンッ!

グインの剣が横に一閃される。だが浩之には当たらない。
『ちいっ!!』
「浩之!?」
「当たるかよっ!」
『くうっ!?』
 浩之はグインの攻撃を次々とよけていった。
(見える、今ならまだいける)
『ひゅうっ!』
 瞬間的にグインはしたから突きを繰り出した。
「うっ、とお!?」
『なんという反射神経…貴様に残された時間はもはや…』
「…ごちゃごちゃいってんじゃねえぞ、勝負はこれからっ」
『!?』
「だぁぁあああ!!!」
『うぐぁっ!?』
 浩之の拳によってグインのからだは吹き飛んだ。

 ザサッ…

『ぐう…まさか我と対等以上の力を出すとはな…』

(龍生流奥義…)

『!?』
「ッ聖狼!」

 グキィッ!!

『貴様もかっ!?』
 聖狼…気を扱うことを基本とした型を主としている龍生流の中でも
シンプルにして最大の威力をもった技…身体のひねりを利用し、瞬時に
関節を破壊する奥義…それが今『倒れていた』ハズの九品仏大志によって
グインに決められた。

 カランッ…

『ネルフっ!?』
 同時にグインはその手に持っていた剣も手放してしまった。
「…この剣は…」
『それにっ』
「奪い取れ矢島っ!!」
『触れるなぁあああああ!!』
 カシャンッ…わずかな音とともに矢島は剣を握りしめた。
『ぐうぅっ…』
「これであの剣の主は矢島だっ!」
『藤田、そうかエルクゥの記憶が余計なことをっ!?』

「師匠!!」
「あれ、矢島ぁ?」

「葵ちゃんに綾香?」

『くっ!?』

「ふう…間に合いました、逃がしはしません…」

「姫川さんっ!?」

「さて役者は揃った」

『貴様は……』

「緒方さんっ!!!」
「よお少年、どうやら間に合ったようだな」
 そう、矢島の前にはあの緒方英二がいた。
「まったく俺抜きでこんなに盛り上がるなんてな…ひどいとは思わないか?」
『貴様の役は当に終わっているわ、連合が滅んだあの時からな』
「どうかな、幕を下ろさなければならないのはお前の方じゃないのかね?」
『ふん…』
 グインはまわりを見渡した。矢島、葵、綾香、大志、藤田、雅史、志保、琴音…
その全員の瞳に『力』が宿っている。負けるとは思わない、だが…
『たしかにここは退くべきかもしれんな』
「言ったハズです、逃がしはしませんと…」
 琴音はサイコスナイプを構えて言った。
『ふん、だがいいのかね?』
「?」
『君らが守っていた<彼>はもう限界みたいだが?』
「えっ!?」

 ドサッ…

 突然、琴音の裏で人の倒れる音がした。
「浩之っ!?」
『確かに我がここにいる必要はもうなくなった。エルクゥの力の薄れた貴様では資格が
ないからな』
「貴様ぁっ……!?」
「ッいない」

『…その男の目覚めは一時的なもの、最後のかがり火…もはや助かる道はない。』
「デタラメを!!」
「出てこい、浩之になにをした?」
『くくく、我は地球で待っている…我を滅ぼしたければそこまでくるがいいっ!!』
「まてグイン、浩之を、浩之をっ!!」
「…もう…いいんだ雅史…」
 叫ぶ雅史に浩之はゆっくりと呟いた。
「分かってたことなんだ…俺のからだがもう持たないってことは…」
「…!?」
「ワリイな…時間切れだ」


続く…




〜ウンチク〜


エルクゥ殺しの剣
名称:ネルフィクト=アンブラ

 通常ネルフと呼ばれている剣、実際にはネルフィクト=アンブラといいエルクゥの
言葉で『終わりと始まり』という意味である。この剣そのものに殺傷能力はないが
エルクゥにとってはその肉体をも滅ぼしてしまう恐るべきシロモノ。
だが剣が滅ぼすのはその肉体だけで、エルクゥの本質、いやそのものとでもいうべき魂は
霧散するだけである。そして霧散したエルクゥは静かにいつか肉体が再生されるまで眠りにつく。
またある特殊なレヴェルのエルクゥの魂はタリスマンと呼ばれているクリスタルの中に昇華される。
一体この剣の存在目的がなんなのか…それを知るのはグインのみである。

 

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 ああ、疲れた…ようやく終わりに向かったな、この話。
とりあえず今までの話はウチのページにもまとめてあります。
出羽出羽〜〜〜♪

http://www.geocities.co.jp/Playtown-Spade/5164/