−遊撃宇宙戦艦セリオン・第三十話『鬼の力』− 投稿者:紫炎
「貴様が藤田浩之か、そこで何をしている?」

 すでに頼る者はなく…

「授業…一時間目の……」

 夢に身を投じて…

「もう戻れぬよ、貴様は」

 帰らぬ人…



−遊撃宇宙戦艦セリオン・第三十話『鬼の力』−



「耕一ィィイイ!!!」
 反射的に雅史の銃口が耕一に向けられる。
「…ふん、お前には用はない」
「黙れっ!!」

 ッゥゥウウウン!!!!

 銃弾が発射される、だが…
「遅い!」
「うあっ!?」
 銃がはじかれる、一瞬の反射力で雅史は耕一の攻撃を逃れたが
衝撃によって後方に吹き飛ばされた。
「雅史っ!!!」
「…貴様が矢島か?」
「!?」
 矢島が雅史の方を向いたときにはすでに耕一は裏にいた。
「お前らには散々世話になったよ。」
「…そいつはどうも…」
「邪魔くさいゴミがっ!」
「っっっっぁああ!?」
 耕一は矢島の腕を掴みひねりあげた。その場で鈍い音が木霊した。
「今、ゴキッ…って」
 志保は顔を青ざめて耕一を見る、今の音は間違いなく折れた。
この男はわずかに力を込めるだけで人を一瞬で壊すことができるんだ…
改めて志保はエルクゥの恐ろしさを認識した。いやせざるをえなかった。
「お前らには千鶴さんや梓も手痛い目を見せられたからな…」
『人にしてはよくやったが』
「もう終わりだ!」

 ガシャァァアアアアンッ!!

「何っ!?」
「貴様ぁああ、そこにいたのかぁあああ!!!!」
 その窓ガラスの割れた音とともにあの男の叫びがあがる。
「吾輩は貴様らを倒し、夏コミまでにはすべてを終わらすぞぉお!!」
 無理である。
「ストナサンシャイン!!!」
 蹴り…だ。耕一はわずかに上体をそらし、その攻撃をかわした。
「シャインスパーーーーーーク!!」
 パンチ、無論よけられる。
「舐めているのか?」
 そうした単純な九品仏大志の動きに耕一は苛立ちを覚えた。そのとき、
「ふん!」
 一瞬で耕一の腕を大志が掴んだ。そしてそのまま折ろうとするが…
「無駄だっ!」
「あぐぁっ!?」
 耕一はその体勢から横腹に蹴りを入れ、大志を吹き飛ばした。
「九品仏さん!?」
 雅史が大志の吹き飛んだ方向を見る。
「ぁ…大丈夫だ、吾輩がこんなことでやられるわけがないだろう?」
「お前…」
 耕一は大志に蹴りを見舞った時の感触に違和感を感じていた。
あのゴムを蹴ったような妙に手応えのない感じ…この男ほどのものでは
ないにしろわずかにだがかつて戦った男も同じ感触がしていたハズだ。
「いや、もういい…」
 あの男のことを思うと心の中にあるものがザラつく、それはイヤなことだ。
一瞬の思いの後、耕一は飛んだ。
(大気を…感じろ……)
 大志は耕一への攻撃へと転じるために意識をさらに高める。目で捕らえられぬ
ほどのスピードならわずかな大気の流れと読みに頼らざるをえない…そして大志
にならそれを可能にすることができる。
「そこっ!!」
「よけた!?」
 大志の頬を耕一のパンチがかすめる、風圧だけで首が持っていかれそうな
威力…
「っぁぁああああ!!!」
 連続で耕一はパンチを繰り出す。だがわずかな差で大志には当たらない。
そしてそのわずかな差こそ格闘家としての耕一と大志の絶対的な差だ。
(おかしい…)
 だが大志は思う。
(この男に先ほどの威圧感はない。たしかに凄まじい鬼気を放ってはいるが…)
 あの精神の根底を覆すような絶対的な恐怖を感じられない。いやわずかに
感じてはいるのだが、少なくともこの男から感じているモノではない。
「なんだ…いったい?」
「ぁぁぁあああああああああああああああああああ!!!!!!!!」

「!?」


 ッガァァァアアアン!!!!


 一瞬の油断の後、大志は再度吹き飛んだ。
「ハァ…ハァ……」
 だが大志は平然と立ち上がり耕一を見据えた。油断して受けた攻撃とはいえ
完全にインパクトを外し、さらに硬気功で固めた大志の身体にはさほどのダメージ
はなかった。
「………どうした?」
「…………」
「そんなものが貴様の力だとでも言うのか?」
「…ふん、所詮エルクゥの力など<それ>だけのものだったってことだ。
いかに表面上寄生した生命の力を限界まで高めようと…真に鍛え上げられた
オリジナル(人間) には勝てない…」
「……?」
「我々はただの犬だよ、ただの…」
 
 ブワッ!!!

「なんだっ!?」
 鬼気、そう呼ぶのも生易しいほどの気が耕一であったモノの身から吹き出した。
『ただの…』
「こ…こいつは!?」
『私の犬だ、この真なる王である<グイン>のな…』

「!?」

 瞬間、大志は飛び出した。全身をバネにして一瞬で耕一との間合いをゼロに、
そして…双羽掌、かつて中国ではそう呼ばれていた技を繰り出した。

 いや…繰り出したハズだった。なぜなら大志の掌底は確かに耕一の水月に
ヒットしていた、そして手応えを感じていた、だが…


『ふふふふ…』
「…馬鹿…な…」
大志の顔に鮮血がかかる。ただし、その血の出元は大志の腕からだった。

続く…


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 これは宇宙戦艦セリオンとその艦長矢島の物語である。


む〜〜〜〜〜〜〜〜〜、いつ頃からそうでなくなったのじゃろう?(笑)
14話くらいではまだ闘っていたなぁ…20話くらいでは脇役入ってたかも…
現在ではセリオンはすでに10話くらい出来てねえし、矢島もベストオブ脇役
だし…まあ、矢島だからこれで正解なのかもしれんです(笑)

http://www.geocities.co.jp/Playtown-Spade/5164/