−遊撃宇宙戦艦セリオン・第二十四話『強者(つわもの)』− 投稿者:紫炎
「何、なんなのよこの部屋…」
「オー、ワンダフル!まるで私たちのいた高校そっくりです」
「そっくりって…同じよこの風景、まるっきりあの頃のままじゃない!?」
 そう、志保は目の前の風景に愕然としていた。4年前と同じ光景が今まさに
目の前にあったのだから…ホログラムによって学生までもが存在し、早朝の
登校がそこには再現されていた。
「いったいどういうことだ?」
「こっちが聞きたいわよっ!一体なんの冗談でこんな…」

『ヒロォッ、早く来ないと遅刻だかんね〜〜!!』

「えっ?」
 この騒がしい朝の登校…その中でもその声は大きく響いていた。
「お、おいアレは…!?」

「うっせーなぁ、学校なんてもう目の前なんだから走らなくたっていいじゃねーか!」

「嘘…嘘でしょう、ねえなんで…」
 志保は何か信じられぬ目でその光景を見ていた。なぜならそこには…
「なんで私が『そこ』にいるのよっ!?」



−遊撃宇宙戦艦セリオン・第二十四話『強者(つわもの)』−



「ふう…ふう…」
 綾香は静かに腰を落とし、それに向かって構えた。
「1人ジェットストリームアタァァアアアアック!!!!!!!!!!」
「!!」
 アクシズが綾香に向かって攻撃を仕向けた瞬間、それは綾香とアクシズの距離が限りなくZERO
に近付いた瞬間、勝負は決まった。



 グシャッ…


 一瞬の間の後、鈍い音と共にアクシズの額は床に叩き付けられ砕けた。
「…終わった。」
 そう言って、綾香はその傷だらけの腕を引きずりながらゆっくりと座り込む。直接的なダメージはない。
だが、時速200KMのスピードを捕らえるために集中力を限界まで使い、かする程度でも痣が出来た。
ゆえに精神的にも肉体的にもピークに達していたのだ。
「…あ、葵は…」
 綾香は疲れた身体に無理をしてもう一つの闘いに目をむけようとしていた。心配ということもあったが、
純粋な格闘家としての好奇心が綾香を突き動かしていた。

「………」
「…………くっ…」
 綾香が目をむけてみると、いまだ二人は一歩も動いてはいなかった。いや動かなかったのは正確には
葵だけでvladは『動けなかった』のではあるが…
(なんだ、この女の気配は…)
 vladが動けなかった理由はただ一つ、この目の前にいる少女に『得体』のしれない何かを感じている
からだろう。エルクゥとして人間としての本能がその存在に対して警告を発している。
(たしか…この感覚は…そうだ……)
「話で聞いた柳川という男に…似ている」
「柳川っ!?」
 突然、綾香が後ろから声を出した。
「あなた柳川を知っているの?」
「…柳川は…ウチの大将に唯一勝った男だからな…もっともその後すぐ死んでしまったらしいが…」
「…そっか…柳川、願いかなったんだ…」
 綾香はわずかに安堵した。アイツが死んでしまったのは分かっていた。ただ気がかりだったのは望みを
果たして死ねたかどうかだったのだから…
「…その柳川さんは私と共に修行をしてきた仲間です」
「「!?」」
「セリオンに来る前、ここに運ばれてきた柳川さんはこの衛星の中で私の師匠に気功を学び、
そして去っていきました。」
「…師匠?」
「柳川さんは私とほぼ同格の腕だった…つまりアナタはアナタの総大将と同じ実力の相手と闘う
ことになります。」
「!?」
「そして…今アナタたちの仲間が集結している場所に向かっている私の師匠ですが…」
「まさか梓様のところにっ!?」
「私の100倍は強いですよ」



 グシャッ!?


 飛び散る血、砕ける骨、人に対しては絶対的な者であったハズのエルクゥは自らが神では
ないことをいまさらながら思い知らされていた。そう、この衛星に来て初めて彼らは生命の危機と
いうものをたかだか人間から感じさせられていたのだ。それもたった1人の人間によって…
「なっ、なっ、なんだ貴様はっ!?」
 その場にいたESPは吠えざるをえなかった。普段なら自分らがその立場にいるハズだったのに…
一方的な殺戮を演じ、矮小なる人を嘲笑うハズだったのに…今目の前にある光景はただひたすら悪夢
だった。
「ふふん、吾輩に名を尋ねるか愚か者…この九品仏大志っ、貴様らに名乗る名などないわっ!!!」
(なっ名乗ってるぅぅぅううう!?)
 その男は突然現われ、その圧倒的なまでの力で持ってその場にいたエルクゥたちを皆殺しに
していた。
「貴様らに俺の怒りが分かるのか!!!」
「なっ!?」
「貴様らが戦争を仕掛けてきたおかげですべてが終わった。テレビ東京以外のすべてがっ!
CCさくらもターンAガンダムもすべてがっ!!!」
 ちなみにこの2300年代のCCさくらは初代さくらから数えて8代目である。現在はクローンで復活した
初代さくらとの熱いバトルを演じているらしい。
「3代目は初の実写だったのだが、あれは最低であったぞ。役者がロクなのがいなくてなあ…」
「なんでテレビ東京はいいんだ?」
「戦時中でもやるぞアソコは…」
 そうなのか?
「まあそれはともかく…貴様ら、吾輩の手に入れるべき世界を勝手に荒らしおって。」
「はあっ?」
「貴様らは泣かぁぁあああああああす!!!!!!!!」
「!?」
 一瞬にして大志がダッシュし、ESPまでの最速距離に向かってエルクゥの進んでいった。
「馬鹿なっ、こちらにはまだ30ものエルクゥがっ!?」
「愚か者、この吾輩がショッカー程度に負けると思うかっ!?」
 そう一瞬の間合いに入り、大志は次々と手刀でエルクゥの首を切り落としていった。
「う、うぬぬぬぬぬぬ…」
「レリーズッ!!!!」
 
 ブシュッ!!

 最後の一体が床に倒れた。しかし最後の言葉は…
「ふふん、どうしたマイブラザー、怖じ気づいたか?」
「くっ、なめるなよ貴様っ!!」
 ESPの腕が膨れあがり、エルクゥのモノに変化する。
「強化人間か…哀れな、自ら鍛えることも忘れ人としての誇りも捨てるとは…」
「黙れっ、貴様ごとき人間に我らが『力』の価値が分かるかっ!?」
「知らんよ、そのような価値はさくらの1/1スケール着せ替え人形に遠く及ばない」
「なんだとーーーー!!!」
 ESPは怒った。だがこれでも大志は最大限の譲歩をしたのだ。でなければさくらの人形を
引き合いに出すようなことはないだろう。それが九品仏大志にはちょっとショックだった。
「うぉぉおおおおおお!!!!」
「!?」

 ブゥウンッ!!

 一瞬、ESPがブレたかと思うとその身体が4体に別れた。
「これは…」
「「「「くくくくっ、これはあるTVゲームを見て思い付いた技だっ!!どうだ貴様はこのスピードに
着いてくることはできま…」」」」
「………」
 大志はゆっくりと足を伸ばした。

 ガシッ…

「あっ…」

 ズドォォオオオオン!!!!!

「…分身ね、コンマ1秒のズレを利用し残像を作り出す。確かに人がやるには難しいが、そんなものは
ただの大道芸でしかないな。馬鹿が!!」
 大志はただ、たんに足を引っかけただけだった。たしかに馬鹿だ…いや大馬鹿だろう。ボーか?
「くっ、だが俺にはまだ999の技を持っている。この程度で…」
「黙れ…」

 ガッ…

「ぐっ!?」
 ESPが瞬き一つ行ったスキに、大志は間合いに入りその首を掴み上げた。
「吾輩の同志を殺してくれたそうではないか…」
「は…離さ…な」
「アイツはアシスタントとしても十分にやれたヤツだったのに」
「離せぇぇえええ!!!!」
  
 ドンッ、ガッ!!!

「なんだ!?」
 ESPは力任せに思いっきり大志のボディに拳を叩き付けた。だがその身体はまるで分厚いタイヤを
叩いているかのようにダメージを与えられない。
「…硬気功という…貴様程度の力では傷一つ与えることは出来んよ」
「ば…化け物……」
「ふん、この程度、人ならば修行によっていくらでも身につく。貴様のその醜い腕とは違ってな」

 ゴキッ!!

「カハッ!?」
 大志が力を込めるとESPの首から鈍い音がした。
「それで貴様らのボスはどこにいる?」
「あ…梓様ならとっくに…ここから離れておいでさ……残念だったな」
「そうか」
 そういうと大志は冷めたようにESPから手を離した。
「ならば急がねば…」
「くっ、行かせるかぁっ!!」
 ESPは手を放された途端に大志に向かって突っ込んでいった。だが…
「…!?…カッ…ハッ…」
「ふふんまだ向かってくるとは、貴様は多少見所があるようだ。」
 気付いた時には心臓に向けての掌底がESPに決まっていた。そしてそのまま『氣道』を絶たれた
ESPに何をするすべはなかった。

「また闘える日を…」


 そして最後に聞こえた声はその言葉…



 続く。


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 ああああ、大志出せたぁぁあああ!!!!!!
なんかサクセス同人でもメインだし、ハマるキャラです(^^



>こみっくパ〜ティ〜 「彼は果たして出演できるか?」 
>アルバトロスさん
もしかして闇狩う…いやなんでもないです(笑)
必殺仕事人ですかね(^^

>LF98(27)
>貸借天さん
>最後の、美咲の寂しさ云々は必要ないような気がする……。
いやいや、今後どうなるかは分からないが、そこはあった方が深みが出るダニ(^^

>鬼狼伝(38) 
>vlad さん
この話はあいかわらずやってくれてますね(^^
個人的には後なん話延びるのかも楽しみにしています(邪笑)



今日はここらへんで、さよなら、さよなら!(淀川風)