−遊撃宇宙戦艦セリオン・第二十二話『今そこにある危機』− 投稿者:紫炎
「梓が消えた…?」
「はい、強化人間たちととものアズエルで行ってしまいました」
 ここは戦艦ジローエモンの中心、『エバーグリーン』と呼ばれている
場所である。そこは緑豊かでその中心には巨大なクリスタルが
そびえ立っていた。
「…セリオンか…アイツがこの宇宙で狩るべき存在はもはやアレ以外に
ないからな」
「妹は私が連れ戻します。」
「いや俺が行きますよ千鶴さん…アナタはここで待っていてください」
「……耕一さん」
「もうすぐなんだ…後少しで願いは叶う、そうでしょう千鶴さん」
「…はい……」

 
 そう言うとそのまま耕一はこの場から去っていた。残された千鶴はただ中心の
クリスタルを眺めている。
「どうして…どうしてあんなことを教えてしまったの、耕一さんはもう私達の
ことなんて見てはくれないわ。アナタが…アナタさえ何も言わなければ…」
 千鶴はそのクリスタルの中に向かってなおもしゃべり続ける。
「でももう遅いのね、この手はすでに汚れてる。耕一さんもアナタも楓ももう
引き返せない処に行ってしまった。でも、あの子だけはまだ何も知らないのに…
ただエルクゥの本能に支配されているだけなのに…それでも……それでもやるんですか…耕一さん?」
 そのクリスタルの中で眠る少女『初音』は何も語らない。

「梓を殺すんですか?」


−遊撃宇宙戦艦セリオン・第二十二話『今そこにある危機』−


「どういうことだ…?」
「セリオンは元々僕らのマルチザードとのドッキングによって真の力を得るんだ。
ここから先は僕らだけでやる…君らはおとなしく見ていて欲しい」
 雅史はその腕の中にある銃を矢島に向けながらゆっくりと後ろに下がった。
「冗談だろ…俺達はまだ戦える。お前らの都合で勝手にされてたまるかよっ!?」
「そういうと思ってたからこそこうして銃を君に向けてる…セリオンの乗組員は
すでに全員捕らえたよ。君たちはここで終わりだっ!!」

「ふざけっ…」


 ドォォオオオオオオオオオンッッッ!!!!


「っと、うわぁあああっ!!」
 突如、この施設内に衝撃が走った。
「なっ、管制室どうしたっ!?」
 雅史の声と共に、ホログラムヴィジョンが現れる。
そこには青い顔をした保科がいた。
『大変や、エルクゥがっ、エルクゥがこの衛星にっ!?』
「なんだって!?」
「エルクゥがっ、まさか俺達が付けられてて…」
「違う、タリスマンだ……」
「!?…」
「奴等にはわずかだがタリスマンを感知する能力がある。この衛星には
そのタリスマンが2つもあるんだ…なんでそんなことを僕はっ!?」
 雅史は歯ぎしりして、自分の迂闊さを呪った。だが無情にもそうしている
今この瞬間にエルクゥはこの施設内に進入してきているのだ。



「これもアナタの計画通りのことですか?」
 緒方の言葉に芹香は何も答えなかった。モニター上には何体ものエルクゥが
壁を破って進入してくるのが見える。
「アナタはエルクゥが進撃してくることも、あの欠陥兵器ではエルクゥを倒せな
いことも知っていたハズだ!…アナタはなんのためにこんなことをしているんだ?」
「………」
 だが芹香は何も語らなかった。
「…何も言わない…か。いいだろう、だが僕の邪魔はしないでいただきたい」
 そういうと緒方は入り口に向かって歩き出した。
「どのみちこの衛星は陥落する、ならばわずかな時間だけだが最後はともに
戦った彼らと死にたい」

 緒方はそういってこの部屋から出ていった。
「…………」
 
 ピッ、
『ハハ…緒方さんも短気だな。』
緒方が去った後現れたモニターの中の人物、それは現在地球にいる長瀬
祐介であった。
『まあ、アナタの計略とはいえ、部下を大量に殺られたんだ。本来なら自分
1人ででも特攻をかけたい気分なんだろうけど…』
「………」
『そんな目で見ないで下さいよ来栖川さん…これはアナタから始めたことだ』
「………」
それでは、こちらはこちらでやります。よろしいですね?』
「……(コクッ)」
『でわまた会いましょう、来栖川さん』




『梓様、現在A地区、及びB地区まで占領しました』
「ふん…相手は人間だぞ!何を手間取っている!?」
 来栖川の人工衛星に進入を果たした梓は面白くなさそうに前線にいるかおり
の報告を聞いていた。
『そ…それがヤツラの中にかなり手強い相手がっ…』
「何を馬鹿なことを、人間だぞ!我らエルクゥにどう対抗しようってんだい!」
『そう…ですがっ…アイツら本当ににんげっ…!?…うっうわぁああああ!!!!』
「かおりっ!?」

 プチッ…

 その回線を最後にかおりの送信は途絶えてしまった。
「馬鹿なっ、かおりがやられた?…アイツらだと……一体」
「梓様…」

 カタン、

 かおりからの通信が途絶えたことに動揺した梓に後ろから声を
かけたのはESPだった。
「ん…お前は……」
「現在、かおり様がいたポイントにvlad,アクシズが向かっております。
『人』相手ならば我々にお任せください」
「ふ…ふふ、そうだな。人間は人間同士で殺しあえばいいさ…そうでなければ
お前らを飼っている意味がない、かおりを頼んだぞ」
「はっ…救って頂いたこの命、いまこそ使いましょうぞ!」
 そういって『エルクゥ』の細胞を移植され、強靭な力を手に入れた強化人間
『ESP』は不敵な笑いを浮かべた。
 

「また会ったわね…」
「ぐっ、ゴホゴホ…あ、アンタは!?」
 突然の攻撃に無線機を落としたかおりは、その攻撃を仕掛けた相手を
見て驚愕していた。
「セリオンの中にいた女!?」
「来栖川綾香よ、覚えておきなさい!!」
 そう言い放って綾香はかおりを見下ろした。
「あのときは捕虜だったから見逃したけど、今度は逃がさない」
 カシャッ…
「!?」
 かおりが綾香の裏を見ると2体のエルクゥがゆっくりと忍びよっていた。
「今、私は…」
「(アイツは気付いてない…これなら…)」
「ムチャクチャ…」
「今だ、殺れぇぇえええ!!!!」

 ダッ!

 かおりの言葉に一斉にエルクゥたちが飛び出した!
「ぐぉぉおおおおあああああああああ!!!!!!」
「機嫌が悪いんだぁぁぁああ!!!!!」


 ズドォォォオオオオオオオンンンン!!!!!!!


「なっ!?」

 一瞬でエルクゥたちが壁に叩きつけられた。だが叩き付けた当人は素知らぬ顔
でかおりを見ていた。その表情は固い。
「なんでエルクゥが人間に勝てないのよ」
「弱いからに決まってるでしょ…」
「わ、私たちエルクゥは人間なんかよりもはるかに高等な生物なのよっ!」
「ならばその言葉、自身で証明してごらんなさい!」
 そういって綾香は構えた。だがかおりは進むことが出来ない。なぜなら
かおりには綾香が仲間たちを倒した時、『何』をしたかさえ見えてないのだから、
このまま行けば負けるということはあたりで倒れているエルクゥたちが証明して
いる。
「…くっ、人間が…人間がぁああ」
「来なさいっ!!」
「うわぁぁあああああああああああああ!!!」

 一瞬にしてかおりは飛び出した。ちなみに副官クラスであるかおりが瞬時に
出せるスピードは時速180KM、当たれば即死である。…が、
「ひゅう…」
 瞬間、綾香は腰をしゃがめ、構えを取った。
「(くく、人間が止められるわけないだろっ!)」
 凄まじい速度でかおりの正拳が飛ぶ。だが綾香は瞬時にその腕を流れるように
つかんだ。
「!?」

 ギュルンッ…ズッドォォオオオオオンッッ!!!!

「うあっ!!」
 瞬き1回分ほど過ぎた時間がたったとき、攻撃を仕掛けたハズのかおりが床に
伏せていた。時速180KM、いやそれ以上の速度で床にめり込んだかおりに次の
攻撃に転ずる力はない。
「…あ、うぐ…なんだ今、世界が回った…ような……」
「今のは…合気道ナリか」

「!?」

「一瞬で力の軸を見極め、相手を円の動きで飛ばし、その吹き飛ばす際の
回転力によって生み出される破壊力でエルクゥを倒す…どうやらこの衛星
には化け物がいたようだな」
「誰っ?」
 綾香は瞬時に視線を通路の奥に向けた。
「ぐ…お前達は……」
「ああ、動かない方がいいナリよ。いかにエルクゥといえどその身体では
再生が追いついてないナリ」
「あ、アンタ達の気配、まさか人間…?…でもその腕は!?」
 通路の奥から現れた人物、彼らはその右腕に強大なエルクゥの腕を
付けていた。
「我々はエルクゥの力を移植された強化人間、人工エルクゥNo.105、
vlad」
「同じく、人工エルクゥNo.106、アクシズナリ」

 ザッ…

二人はゆっくりと間合いをとり、綾香に対して構えた。
(…なんてプレッシャー…この二人は…強い)
「ふふ、我々はアンタの力を過小評価するつもりはないナリ」
「全力で行かせてもらう!」
「ふんっ……上等!」

 その言葉を最後に3人は飛び出した。互いを滅ぼし合うために…

続く…

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ども紫炎です。
そういやここらの回のイメージとしては、

綾香=グラップラー渋川
葵=源 双烈(スプリガン)
九品仏 大志=朧(スプリガン)

となってます、能力的にですけど(^^
綾香以外は次回以降の登場ですがエルクゥ相手だと
どうしても化け物みたいに強くないと闘えないです(笑)


>狗福さん
 感想どうもで〜〜す!
三つの影ってのはSS作家の方々でした。
許可はとってありますんで(^^
現在の梓はジャバウォックをイメージしてる故、エコー入りでも
いいでしょうな(^^


>えるくぅ家族カシワギ4〜It's a 狩猟 time〜 
>七草武光さん
 柳川………(笑)
妙に空回りしてるな彼奴は(爆)
そういやクリームレモン、ポリゴンで新しく出すらしいとのこと。
プロのAV女優などを使ってやるらしいが…どうなる?(笑)



これにてサラバ!!

http://www.geocities.co.jp/Playtown-Spade/5164/