−遊撃宇宙戦艦セリオン・第十九話『希望ゆえの悪夢/… 投稿者: 紫炎
「見えました・・」
「あれがエルクゥ艦隊・・かなりの数だな・・・」
「中心に見えるのが耕一さんの乗っている戦艦『ジローエモン』です」
セリオンより離れてから4時間24分・・柳川たちの乗るヨークはエルクゥの
艦隊の目前まで接近していた。
「ダリエリ・・どうする?」
(正面より突破する、ジローエモンまでの道はヤツが開けてくれるさ・・・)
「・・・そうだな・・柏木楓、異存はないか?」
「いえ・・別に・・」
「そうか・・しかしお前、何故耕一を裏切ったんだ?」
「なんですか・・急に?」
楓は不快そうに柳川を見た、
「俺はお前のことを覚えている・・実験体にされていたとき、お前は耕一の
横にいたからな」
「・・・・・あれは・・耕一さんじゃ・・ない・・」
楓はあえて柳川を無視して呟いた・・・・・


−遊撃宇宙戦艦セリオン・第十九話『希望ゆえの悪夢/哀れなるなる彼のために彼女は死んだ』−


「耕一・・お兄ちゃん・・・・?」
この子は誰だ・・・血塗れのこの子は・・・・・・
(お前が殺したんだ)
「なんで・・」
(お前はこの子を殺した・・・お前がやったのだ)
俺が・・何を?
「なんで私を殺したの?」
(その剣は何故お前の手の中に?)
俺は・・・・・・
(なぜ貴様の手は血で汚れているんだ?)
「耕一お兄ちゃん?」
知らない・・こんなこと俺は知らない!!
(なぜ『初音』を殺した?)
違うよ・・俺じゃない・・・!?
「どうして・・?」
(忘れるな、貴様は殺したんだ!貴様を兄と慕うこの少女を貴様は
殺したんだ!!)
「どうして殺したの、耕一お兄ちゃん?」
う・・・ああ・・

『何故私を・・・初音を殺したの?』

「うっあああああああああああ!!!!!!」
ガバッ!!
「うぅ・・ハァ、ハァ・・・・・・」
そこはジローエモンの戦艦内部・・耕一の寝室、
「もう少しだ・・後少しで・・・・元に戻る・・」
耕一は泣いていた・・だがその顔には笑みがあった。
「また会えるよ初音ちゃん・・だから待ってて・・きっと会えるから・・」
ピッ・・
『耕一っ!!』
「・・梓か・・どうした?」
耕一の寝室にあるモニターがつながり梓の映像が現れた。
『あれ・・耕一・・泣いて・・・』
「気にするな・・なんの用だ?」
『あ、ああ・・・今、火星の方角から楓のヨークが接近してるっていう報告が
あったんだ!』
「楓ちゃんが・・・そうか」
『どうするんだよ耕一?』
梓が心配そうに聞いてきた。
「他のヨークには攻撃させるな・・どうせ奴等はこのジローエモンを目指すだろう
からな・・」
『奴等・・・?』
「ダリエリ・・・やつの気配がする」
『ダリエリが・・・?』
梓の声がわずかに震えた。
「ちょうどいい・・こちらから出迎える必要がなくなったのだからな、
丁重にもてなすとしようか」
ダリエリの予想通り、耕一は柳川たちをジローエモンまで引き込んだ。

ガシャンッ!!
「あっけないな・・・」
(宇宙で我らが死ぬのは都合が悪いんだろうさ・・・)
柳川たちはそのまま、ジローエモンへ到着した。
「でもいいんですか柳川さん?」
「何がだ?」
「タリスマン・・私が持っていて・・・」
そういった楓の手には光り輝く結晶があった。
「それはヨークやエルクゥが持つだけでその力を倍以上に引き上げてくれる、
ひ弱なお前でもそれを持っていれば役には立つ・・」
「・・はい・・」
「それよりどうするダリエリ・・?」
「私は・・確かめたいことがあります」
(エディフィル?)
「ここからは別行動で行きましょう・・まとまってやられたらどうしようもない
ですから・・・」
「・・・そうか」
「はい」
楓は念入りに答えた、
「それじゃあな・・柏木」
「楓・・でいいです」
「ん?」
「最後になるかもしれませんから・・誰かに名前で呼んでもらいたいんです」
「・・・分かった・・それじゃあな、楓・・」
「はい、柳川さん!」
楓は寂しそうに笑ってその場を走り去っていった。
(あの娘・・・)
「どうした?」
(別の誰かに名前を呼んで欲しかったのではないかな・・)
「そうかもな・・・・・行くぞダリエリ・・」
(ああ・・)
「その必要はないよ・・柳川裕也!!」

ザッ!!

(この声は・・・)
「その波動、また貴様か・今度は殺すぞ!!」
「この前のようにはいかない、私は負けない・・・」
振り向いた柳川の目に映ったものは、異様なプレッシャーを放つ梓だった!


同時刻、ここはセリオン内部・・・
「う・・ううん」
綾香はベッドのなかで眠りについていた、その瞳には涙の後がある。
「うん・・・あっ!?」
ガバッ!
「・・・あれ、私・・一体?」
そういって綾香はキョロキョロと回りを見回した。
「あ・・そっか・・・私、泣き付かれて・・・」
よく見ると綾香の胸元には寝る前に持っていた写真が落ちている。
「ああ、端っこ折れてるぅ・・・ちゃんとしまっとこ・・」
そういって、写真をとると綾香は引き出しを開けた。
「んしょっと・・」
その時である、

グラッ・・

「へっ?」
ドゥゥウウウンッ!!
いきなり部屋が傾いたかと思うと綾香は思いっきり床に倒れた。
「・・て、いててて・・もうなによっ!」
ピッ!
突如、部屋の中にある外部モニターにセリオが写る。
「セリオォ・・どうしたのよ?」
『綾香さん、大変です?』
「?」
『敵が攻めてきました!!!』
「えっ?」
モニターの中にはエルクゥのなかでも精鋭の柏木千鶴率いる『リズエル艦隊』が写っていた。
今、セリオン至上もっとも過酷な戦いが始まる。


タッタッ
聞こえるあの人の鼓動が・・・昔と変わらないあの人の気配が・・・
タッタッタッ
多分、私は分かっていた・・あのとき逃げたのはあの人が変わったから
じゃない・・・
タッタッタッタッ
何も変わらないあの人が、私の知らない何かに変わってしまったような、
そんな不安に駆られたから・・
タッタッタッタッタッ
あの人の心が私から離れてく・・二度と届かないどこかにいってしまう・・・
その恐怖・・・そして変わらないあなたが起こした戦争・・・罪・・・

タッ

「ここだ・・・」

ただ願う・・・この扉の向こうにいる人が、私の知らない誰かであることを・・・

ガシャンッ!!


「耕一さん・・」
「よくきたね・・楓ちゃん・・・」
今、楓の目の前には耕一がいた。この船の構造のほとんどを楓は知っている、
ゆえに耕一のいる場所を当てることなど彼女には造作もないことだった。
「覚えてる?・・君がここを去ってから2年もたったんだよ・・」
「やっぱり・・・あなたは・・・」
「元気だったかい、楓ちゃん?」
「その顔で・・私を『楓ちゃん』って呼ばないで下さい・・・卑怯です」
「卑怯・・どうして?」
「あなたは・・耕一さんじゃぁ・・ない・・・・」
楓は顔を下に向けながら答えた。けっして耕一の顔を見ないように・・・・
「なにを言ってるの楓ちゃん・・俺は変わらないよ」
「・・・しゃべらないで・・・・決心が鈍りそうだから・・・・・」
「しばらくお休みよ・・・」
「私の心に触れないで!!!」

ダッ!

凄まじいオーラを放ちながら楓は飛んだ!
「タリスマン!?」
「消えてください、私のすべてからっ!!!!」
「でもそれじゃ駄目なんだよ・・」
耕一は手を天にかざした、
「出でよ・・我が剣『ネルフ』・・・」



ザシュッ…



「あ・・・」
「さようなら楓ちゃん・・・」
「こ・・ういちさん・・?」
やっぱり・・・変わらない・・・・こんなに願っているのに・・・・・
「こんなときでも・・私を殺しているこのときも・・・アナタは耕一さんなんですね・・・・」
「泣かないで楓ちゃん・・」
悲しくはない・・・ただ悔しかっただけ、だってこんなにも私を苦しめている貴方が
あまりにも変わらない・・貴方だったから・・・・


「嫌がらせなんです・・耕一さん・・それと・・」


そう、この涙もただの嫌がらせなんですよ・・・だから笑ってください・・そんな困った顔を
しないで・・・・・だって私は


「ただ会いたかった、あなたに・・・・」


ドサッ…


そして今、哀れなるなる彼のために彼女は死んだ。


続く・・・


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どもー紫炎です!
よーやく話も確信に迫ってきたかもしれない
第十九話、とりあえず次で折り返しっすかね?
まあマイペースでいきましょう(^^

おう、DOMさん復活おめでとーーー!!!

http://www.geocities.co.jp/Playtown-Spade/5164/