−遊撃宇宙戦艦セリオン・第十六話『終結』− 投稿者: 紫炎
「セリオンに地球帰還の命令が来たって?」
「うん・・軍から来栖川側を通じて正式に要請が来たらしいわ」
「地球・・それほど危ないんですか?」
吉田が不安気に尋ねた・・・
「違うわよ、勝つ見込みがついたんですって・・新しい兵器が出来たらしいわ」
「兵器・・?」
「これで地球は救われる・・戦争は終わるのよ!!」
エルクゥとの戦争が始まって一ヶ月、運命の歯車は終わりを迎えようとしていた。


−遊撃宇宙戦艦セリオン・第十六話『終結』−


『我々は再度にわたってエルクゥの進撃に敗北してきた!!』
宇宙連合軍本部『パティオ』、そこでは総司令官 緒方英二による演説が
行われていた、
『それは何故か?・・簡単だ、戦闘能力の差である。我らは奴等の力に対抗
できずに負けてきたのだっ!!だが今は違う、ついに我々は奴等に勝つ『力』
を手に入れたのである!』

オオオオオオオオオオ、

兵士たちからどよめきが出る。
『もはや戦場で我々がエルクゥに遅れをとることはない!成すすべもなく倒される
恐れもない、さあ見よ、我らが新しき『力』、それはこれだっ!!』

バッ!!

緒方英二の横にあったシロモノに被せられた布が剥がされ、新しい戦艦が
その場に現れた!!
青いカラーに包まれ、そのボディの腹には形式番号であるHM−13の文字が
刻まれている。
『その名も『アクアプラス』、我らが最強の剣!これがエルクゥを滅ぼすための『力』だっ!!』

バッババババババババババババ!!!!!

本部『パティオ』上空に次々とアクアプラスが現れ出した・・

『これより、このアクアプラス1500機を持ってエルクゥに進軍する!!
全軍、配置につけっ!繰り返す、これよりエルクゥに向けて進軍する。
勝利を我が手にっっっ!!!』
そういった緒方英二の表情には確信めいたモノがあった。


「勝てる・・」
誰が言い始めたのだろう・・
「俺たちは勝てるぞ!!はははは、緒方司令ばんざーーい!!」
次第に兵士たちは声をあげ始めた、
「緒方っ緒方っ緒方っ・・・」
そして緒方コールがすべての兵士たちの口から流れた。

「すごい人気ですね・・」
「この若さで総司令なんてやるにはなかなか大変なんだよ・・」
公演台を降りてきた英二に横で見ていた楓が声をかけた。
「それよりいいのか楓ちゃん?」
「はい・・覚悟はしています、気にしないでください」
「そうか、今日中には出発する・・用意をしていてくれ」
タッタッタッ・・・
「お・・緒方司令っ!!」
「・・どうした篠塚さん?」
突然秘書の弥生が緒方の元にやってきた、
「エルクゥたちが地球に向かって進軍を開始してきました!!」
「・・そうか、ちょうどいい・・アクアプラスの威力を見せてやろうじゃないか」


「耕一さん、連合軍が動き始めました・・」
「気にせずに進軍するんだ」
「はい・・・・」
戦艦『ジローエモン』の中にあるブリッジ・・その中央の席に座っている耕一の瞳
が妖しくきらめいた。
「せいぜい奮闘してくれよ、緒方英二・・・」

同時刻・・地球、ラグランジュポイント・・・・
「緒方司令、エルクゥの軍団が月軌道ラインを越えました」
「アクアプラスの砲撃射程圏内についたな・・フェルニオン砲の準備を開始、
篠塚さん各艦に通達してくれ。発射準備が整い次第、一斉に発射する!」
「はい・・了解いたしました」
ピッ・・ピピピピ・・・・
緒方司令の専用戦艦『アクア・プラス・ウィル』のブリッジのモニターにウィンドウ
が次々と現れる、各艦の発射準備カウントである。
「楓ちゃん、一ヶ月という短い期間で終われたのは全部君のおかげだ・・感謝するよ」
「この剣のおかげです、私は何もしていません」
ポワンッ・・
英二の横に座っている楓がかざした『剣』がその言葉に反応したように淡い光を放った。
「来ていますね・・耕一さん」
「緒方司令、カウントZERO・・行けます!」
弥生が緒方にそう告げた、
「よし・・全艦に通達」
「はいっ」

ピッ・・

「トワイニング艦長、いよいよですね・・」
「ああ、アクシズ様・・見ていてください」
戦艦アクアプラスの一隻にはかつてアクシズの副官を務めていた
トワイニングがいた。
「あ、来ました!緒方司令から発射命令がっ!!」

ここはセリオンのブリッジ、矢島たちも一挙一動とこのエルクゥと
連合軍の戦いを見ていた。
「ああ、もう間に合わないかな・・どう綾香さん?」
「地球まで後、半日はかかるわね・・」
「間に合わない・・というわけか・・ちっ」
柳川は歯がゆそうに言い放った・・
「あれがアクアプラスか・・ヨークの防御壁を完全に破壊する
フィル二オン砲を装備した戦艦・・」
「始まるわよ」

「始めようか・・アクアプラス全艦隊、目標敵艦隊中央、出力100%、
一斉に正射ぁぁああああああ!!!!!」

カッ・・

緒方の声とともに、一斉に各艦隊から光が飛び出していった・・
地上にいる人々には光の帯が大空に広がるのが見えたハズだ。
そしてその光の先からはいくつもの光の球が現れ始めた、
それはいうまでもなくヨークの艦隊の爆発によるものである。
「エルクゥ、現在10%消滅・・緒方司令、成功です、
エルクゥたちをこのまま壊滅させられます!!!」
弥生が珍しく興奮した様子で報告した。
「・・そうか・・これで終わるな・・我々の勝利だ」
緒方は安堵したようにゆっくりと椅子にもたれかかった。
「・・・・・・」
「どうしたの楓ちゃん?」
「いえ、勝利を目前とした状況の割には・・妙に落ち着いていますね」
「安心しているのさ、これ以上部下たちを殺さずにすむからね」
(本当に・・・この戦いでは死人が出過ぎたな・・戦争なんてここ5年
なかったから・・)
「・・・・し・・司令・・!?」
「ん・・どうした篠塚さん?」
「フィルニオン砲撃の中心部に・・せっ戦艦の影がっ・・・」
「なんだとっ!!」
緒方がモニターに視界を移すとそこには巨大な戦艦の形が
あった・・・


「少しは満足しただろう・・偽りの勝利・・その後にあるのは・・絶望かね?
ふん・・まあどうでもいいさ・・・」
「耕一さん、それでは・・」
「『ジローエモン』出撃だ・・目標『宇宙連合軍全艦隊』・・すべてを殺せ!!」

ィィイイイイイイイイイイイイン!!!!!

ジローエモンのジェネレータが叫び始めた!

カッ・・

瞬間、その戦艦はその場より消えた・・


「ロッロスト?・・緒方司令、敵戦艦が消失しました!!」
「なんだって?」
「あれはまさか・・!?」
「楓ちゃん、何か知っているのかい?」
緒方は驚愕の表情で楓を見た。
「オリジナルヨーク・・でもあれはもう死んだハズなのに・・」
「司令、右方向より戦艦が出現しました!!」
「なっなんだとぉぉおおお!?」

ズドドドドドドドドドドッ!!!!!!!

一瞬にして右方向にいるアクアプラスの艦隊が爆発していく・・
その数は10、20では効かなかった・・数百という単位で消滅していく、
その多くは自分たちがなぜ死んでいくなどとは理解できなかっただろう。
「なんだ、なにが起こっているんだぁ!?」
「うぁぁああああああああ!!!!」
「どおいうことなんだっ」
「俺たちは勝っているんじゃないのかっ!!」
秒単位で数千の命の炎が消えてく・・

「司令っ、これはいったい・・!?」
悲鳴とともに次々と回線が閉じていく、
「ば・・馬鹿な・・こんな・・・」
「緒方司令・・!?」
「今度はなんだ?」
弥生は青い顔でモニターに写るヨーク艦隊を指さした!
「よ・・ヨークが変体していきます・・フィルニオン砲・・完全に遮断されました・・」
「そ・・・んな・・・」
「このままでは我が艦隊は壊滅してしまいます・・緒方司令、指示をっ!!」
「離脱だっ・・フィルニオン砲の効かない今、我々に残された道は・・・・あ・・ああ!?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・

『ハハハハ、お気に召したかな・・緒方英二・・・さあチェックメイトだ』

緒方英二の目に映ったもの・・それは『アクア・プラス・ウィル』の前に転移し
現れたヨーク『ジローエモン』だった・・・この瞬間、終戦は決定した・・
多くの人々のもっとも望まなかった答えを出して。


続く・・・


−ウンチク−
leaf級強襲型宇宙戦艦HM−13
名称:アクアプラス
対エルクゥ用に造られた宇宙連合軍の切り札というべき戦艦、
軍仕様となってはいるが来栖川によって設計されたもので、系統と
してはセリオンの量産機となっている。
もっとも対エルクゥ用のフィルニオン砲を主体として造っているために
対通常戦艦としては従来の戦艦とあまり性能は変わらないようである。

leaf級強襲型宇宙戦艦HMS−13
名称:アクア・プラス・ウィル
旗艦用としてアクアプラスをカスタマイズした戦艦、能力的には機動力
が1,2倍、装甲が1,8倍あがっただけで、その他は通常のアクアプラスと
変わらない・・これは開発期間が短時間だったことによる開発陣の手抜き
だと見られる。

オリジナルヨーク
名称:ジローエモン
時空転移を行える数少ないヨーク、通常のヨークよりも2まわりほど大きく、
その力は最強と呼べるものであろう。
なおこのヨークのみは他の最近製造されたヨークとは違い、かつての
リネットのヨークを媒体としたものである。またこのヨークのエネルギーは
『タリスマン』と呼ばれる結晶体から吸い出している。これはセリオンと
同一のものと思われるがエネルギー比率はジローエモンの方が上で
ある。


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というわけでセリオン16話でした!!
ふにーー、これ書いたのってけっこう前だったなぁ…とりあえず20話までは
連続で続きます、よろしく!!!


http://www.geocities.co.jp/Playtown-Spade/5164/