−遊撃宇宙戦艦セリオン・第十四話『虚像世界(レプリカワールド)』− 投稿者: 紫炎
セリオンの機能はほぼ停止していた、
もはやマルチザードの攻撃を防ぐ手段はない…
そう、ここに勝敗は決した……
はずだった。

−遊撃宇宙戦艦セリオン・第十四話『虚像世界(レプリカワールド)』−

「ヒロ、セリオンは完全に戦闘力を失ったわ」
「よし…後は回りを飛び回る虫だけか…」
志保の言葉に浩之はモニターを見回した…
「あかり、琴音ちゃん、レミィ、相手に降伏勧告をっ!!」
『ガ…ガガ…浩之ちゃん、こっちはっ…キャァア!!!!!!』
「!?…あかりっ!!!!」

「くくく…貴様の命の炎を見せてみろぉぉぉおおおおおおおお!!!!」
『すでにセリオンは落ちました!!止めて下さい!!!!!』
浩之たちの考えが甘かったのである…柳川たちは降伏のことなどに
耳を貸そうとはしなかった!
『香奈子…いけるか……』
『はい、あの船を落とせばいいんですね』
『そうだ…この距離ならいける…』
ビュンッ!!
そして二人はその肉体も意識も瞬間的に飛んだっ!
「ははははははははははははははははははははははっ!!!!!!」
柳川はただ狂っていた!!!
だがそれは彼の本能である…『エルクゥ』である彼の本能とは『闘争』、『殺意』
といった類のもの…彼が対峙していたあかりでは歯が立つものではない…
『いい…いやぁぁぁぁああああああああああああああ!!!!!』
クマデバリスのリミッターが飛んだ…柳川機の速度はすでに人の耐えられるもの
ではなかった!!
「消えろぉぉぉぉおおおお!!!!!」
ヒュンッ…

『あ……』

ドスッ

柳川機のブレードはあかり機のコクピットをわずかにそれた…だがそれでも機体内部を
白熱化させるには十分だったのである…

「あかりが…」
マルチザードのブリッジ…艦長席にいた浩之にはあかり機が柳川機に刺されるのを
よく見えていた…
「藤…た…く…!?…ああ、佐藤君…まずい……」
保科が震えた声で『雅史』に言った…
「マルチちゃんっ!!」
『さ…細胞が変質化してます……雅史さん、このままだと……』
「浩之…」
ピキ…パキ……
「くぅ…ああああ…ああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
メキ…
浩之の身体はすでに変色し、その身体は徐々に人から何かに変わろうとしていた、
(あかりが…死んだ)
『限界点、突破しました!!!!』
(あかりが……)
「カプセルを閉じて冷凍ガスを使うんだっ!!」
キィィィイイイ……ガシャンッ!!!!!!!!
(あのときと同じ……)
一瞬にして艦長席が強固なカプセルで覆われ、白いガスが噴出される…
「グァァアアアアアアアアア!!!!!!!」
(駄目だ…俺はあかりを助け……)
ガンッ、ガンッ!!!
徐々に冷却されてくも浩之であったものはただかたくなに一点を見つめ、進もうと
していた…
「藤田君……」
(あのとき…?……そうだ、もうあかりは…そして俺は……)
瞬間、浩之の意識は消失した。

「マ…マルチザード、後退しました……」
信じられないような顔で吉田が答えた、
「なんで…?」
『解析不能です…』
「それと艦長、クマデバリス隊が着艦を求めています!」
「ん…分かった、着艦を許可す……!?」
答えかけた矢島はモニターの柳川機のもっていた機体を見て愕然とした…
半壊しているその機体の肩にはくまの刺繍がしてある、そうあかりの機体で
ある……
「…ああ…まさか……」
「えっ、艦長!?」
矢島はその場を飛び出し、甲板に上がっていった!
「艦長……」
『おい…着艦するぞ……』
不機嫌そうな柳川の声が響いた。
「え…は、はい…着艦許可します!」

タッタッタッタッタッタッ…
(まさか…あかりさんが……まさか…)
バッ!!
矢島が甲板にでた…そこには今帰ってきた三機と崩れ落ちたあかり機があった。
「あ、あかりさぁぁぁん!!!!」
タンッ…タタタタッ…ズダンッ、カツカツ…タッタッタッタッ!!
矢島はすごい勢いであかり機のコクピット前まで駆け寄った…
コクピットのすぐ真横には先ほど柳川機にやられたブレードの後がある…
「ゴクッ…」
矢島の顔は青ざめていた…

キュィイイイン…
クマデバリスのコクピットから柳川が出てきた。
「ん…おい艦長、その機体は……」

キィイイイッ…
矢島が自力でコクピットを開いて行く…
「あかりさん…あかりさん、生きてて下さい!!」
ガシャンッ…
コクピットが開いた…中はケムリで満ちていて、ゴムの焼けた匂いがした…
「あか…!?」
コクピットの中はブレードによって数百度の熱に見舞われていた…
無論人間などが生きていられるハズもない、が…矢島が驚いたのは
別のことである……
「あかり…さん……?」
そこにはなにもなかった…コクピットにあかりが…人が乗っていた形跡が
なかったのである……
「まさか…無人機……?」


「…ちゃん、浩之ちゃん……」
「……う、うん…」
「浩之ちゃんっ!!」
ガバッ…
「あかりっ!!!」
浩之が目を覚ましたのは白い、病室だった…
「……あかり…あれ、あかりは死ん……」
「私はここにいるよ浩之ちゃん…」
「あかり……」
「ああ、そうだな…あかりは死んでない…なんにも変わってないんだ…なにも…」
「うん、そうだよ…浩之ちゃん……なにも変わらないんだよ…」
あかりはそっと浩之を抱きしめた…

カタ…
病室を覗いていた葵が扉を閉めた…
「藤田さん、気がついたようです…」
「そう、ありがとう葵ちゃん」
「…で、どうなんや佐藤君…ホントのとこ……」
「どうって?」
雅史は保科の目を見据えて聞き返した。
「とぼけるんやないで、藤田君…いつまで持つんや?」
「…うん…後、5ヶ月…それで終わる」
「それまでに『タリスマン』を集めるんですね……」
「そういうことだよ…」
琴音の言葉に雅史はうつむいて答えた、
「本当に藤田君は助かるんやな…」
「信じるしかないさ…来栖川さんの言葉を……」
(…けどなぁ佐藤君…)
「ん、なんか言った、保科さん?」
「なんでもないわ…・・」
(けどな…あんなホログラムの人形に囲まれて…偽りの恋人と
抱き合って…本当に幸せやろうか、藤田君は…)
保科たちと壁一枚の浩之のいる部屋からは今も、楽しそうな『合成音』の
声が響き渡っていた…


続く・・・


*****************************
がひーーーん、鮫ネタを久々野さんに使われてしまったのねん(笑)
というわけで、どもでーす紫炎です!
いや、上のは別に対したことじゃないです、さすが久々野さん、お目が
高いっつーことです(笑)

リレー小説、うむ紫炎は現在スランプの模様…どーしませう(汗)
明日にでも書き上げられるとええな俺…ふう。

そーいや、マイHPに絵のコーナー作りやした。
よろしかったら来てやってくらさい、でわさいならーーー!!

http://www.geocities.co.jp/Playtown-Spade/5164/