−遊撃宇宙戦艦セリオン・第十伍話『ロストナンバーズ』− 投稿者: 紫炎
カシャンッ・・・・
「・・・ん、誰?」
「日吉かおり・・ここから出るんだ」
セリオンの奥に位置するここは、捕虜や囚人などを閉じ込めておく
独房である・・・現在は捕まえられたエルクゥ、日吉かおりのみが
その場所に閉じ込められている。
「あなたは・・・・・ダリエリ様・・?」
「ダリエリは今、眠っている・・・俺は柳川拓也だ、貴様も知っているだろう・・」
「知っている?・・何を・・・」
ペラッ、
柳川は腕の裾をめくり、かおりに見せた。
「・・腕に数字が・1・・8・・・・・・・その番号・・・は、まさか!?」
「分かるだろう・・人工エルクゥNo.18・・俺はその生き残りさ」
そう言った柳川の瞳には怒りが宿っていた・・・・


−遊撃宇宙戦艦セリオン・第十伍話『ロストナンバーズ』−


「ロストナンバーズ・・・耕一様が実行していたあの実験体が・・なぜ?」
「すべて廃棄処分になったハズ・・なのにか?・・・」
人工エルクゥ化計画・・数年前、エルクゥの数不足を補うために実行
されていたプロジェクトである・・・・エルクゥの魂の宿っていない人間に
エルクゥ細胞を植え付け、リモートコントロールにより操作しようという
計画だった。
「そう・・・結局そのプロジェクトは実験体の暴走により失敗し、全面廃止と
なったはずなのに・・・・」
「だが俺は生き残っている・・分かるだろう、俺がエルクゥを憎むわけが・・」
「じゃあ、おまえはダリエリ様の転生した存在ではないというの?」
かおりの言葉に柳川は自嘲気味に笑って答えた、
「フンッ、ヤツが俺にとり憑いているだけさ・・利害が一致したから強力して
いる、それだけのことだ・・・」
「貴様が生きていられるのはダリエリ様のおかげだということか・・
それでなぜ私を逃がそうとする?」
「耕一に言づてを頼みたい・・」
「耕一様に・・?」

『グイン・・・それは・・・・』
『このエルクゥの集落の長である貴様なら可能であろう・・エディフィルを
殺し、ジロウエモンを焚き付けるのだ』
ここは暗く何もなかった・・そこは空間ではない、そこは何かの思念・・
ただ声だけが響いていた・・・・
『エディフィルは皇族・・あなたの眷族ではないか!?』
『もうよいのだ・・・再び世界を再生させる・・・そのために捧げよ・・・・』
『・・・あなたは・・・・我らに生け贄となれと!?』
片方の声が吠えた、
『王の決定だよダリエリ、君らには従う義務がある』
『く・・・だがタリスマンは・・・』
『この地球にすでに揃っている・・・これはすでに決定していたこと
なんだダリエリ』
『ならばこの星に不時着したのも、リネットのヨークが飛べなくなったのも、
すべては・・・・・』
グインと呼ばれた声は小気味よさそうに答えた、
『すべては・・我が名の元に・・ということさダリエリ・・従ってくれるだろう?』
『私は・・・』
『王の牙たる存在・・[ダリエリ]、君の名の意味だ、逆らうことなんて出来は
しないのさ・・くくく・・』
『・・・・最後に見る命の炎が同族のモノとなるのか・・・なんのために今まで・・』
『頼んだよダリエリ、誇りあるエルクゥの戦士よ!』

(1000年前のことだ・・・そしてグインの命令通り、我らエルクゥはジロウエモン
によって滅ぼされた・・・)
「それでグインの望みは果たせなかったんだろう・・・なぜだ?」
(グインは7つの協力なエルクゥの魂を望んでいた・・・このダリエリ、エディフィル、
アズエル、リズエル、リネット、フィレス、バルドエル・・・・その内、6人は死んだ・・)
「残りのエルクゥは・・?」
(リネット・・・ヨークに守られしあの者だけがグインの支配を受けずに生き残った・・
そしてジロウエモンと結ばれ・・血を残したのだ)
「リネットは・・今どうしている・・転生したのだろう?」
(死んだ・・・5年前の戦争のとき、グインに殺された・・現世では初音という少女
だったか)
「グイン・・・つまり、耕一が・・?」
(そういうことだ・・・)
「・・・ハッ、それであいつはあんたのなんだったんだ?」
柳川は『一人』、窓の外に写っている小型宇宙艇を見ていた・・
セリオンから逃げ出したかおりの載っている宇宙艇である。
(ジルエル・・現世の名は日吉かおり・・か、あれは私の娘だ・・アズエルとの
間のな)
「そうか・・・・・だが、また殺し合うことになるぞ・・・」
一瞬、柳川の影が揺らめいた、
(我が望みはジロウエモンとの死闘のみよ、同族への情など当の昔に捨てたわ)
「ふん・・その方がいい、他人とのつながりなんて持たない方が気が楽だ・・」
(お前を見ているとそう思うよ・・・それで見舞いにはいかなくてよいのか?・・
あの貴之とかいう男の)
「・・・・おしゃべりになったんじゃないかダリエリ?」
(昔のことを思い出していたせいかも知れんな・・)
「そーかよ、まあどうでもいいが・・・・」
(そういうことだ・・ん・・・誰かきたか?)
「ダリエリ・・出るなよ」
(承知・・・)

ザワッ、

途端にその場の空気がざわめき、そして静かになった・・
「柳・・川・・・?」
「なんだ来栖川か・・・どうした?」
「どうしたって、このテラス・・一番眺めがいいんだもの・・それとも
来ちゃまずかった?」
「別に・・」
綾香の問いに柳川はそっけなく答えた、
「あっそう・・そういえばあのエルクゥの娘、逃げっちゃった・・」
「残念だったな、それは・・・」
「ふーーん」
そういって綾香は柳川の目を見た、
「なんだ?」
「あなた・・・何か・・・」
「ん・・・?」
「・・・・・・いやいいわ、なんでもない・・邪魔して悪かったわ、
じゃあね!!」
タッタッタッタッ・・・
「なんだアイツは?」
(さあな、ジルエルのこと・・感付かれたのかもな)
「別に気にするほどのことでもないさ・・それよりダリエリ」
(なんだ?)
「俺は後どれくらい持つんだ?」


「ほう、ダリエリが・・・」
カツーン、
ここはエルクゥの母艦『ジローエモン』・・
「はい、一対一の勝負を望むと・・・」
「ヤツめ・・姿を見せぬと思っていたら・・・そういうことか」
セリオンより帰還したかおりは耕一に柳川からの言づてを報告していた。
「いかがいたしましょう耕一様?」
「千鶴さん・・『あの剣』は今地球にあるのだろう?」
耕一は横にいる千鶴に尋ねた、
「・・はい、楓とともに地球、宇宙連合軍本部『パティオ』にあるハズです」
「ならば急ぐとするか・・・この『ジローエモン』を出す」
「ジローエモンを・・ですか?」
耕一の言葉に千鶴は多少驚いたように答えた、
「遊びは終わりだよ・・・すでにこのヨーク、『ジローエモン』は完成している・・
そろそろチェックメイトといこうか・・」


続く・・・

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ども紫炎です!
まあダリエリは元々エルクゥの長だし、梓は皇族だったし…かおりもエルクゥの
血を引いてるらしいですからこういう親子関係になった。
別に梓は前世でジローエモンのこと好きだったわけやないしね!
んでわまたでーす!!!

http://www.geocities.co.jp/Playtown-Spade/5164/