−遊撃宇宙戦艦セリオン・第二話『セリオン発進』− 投稿者: 紫炎
「ドッグの中の戦艦が稼動し始めてるで、藤田君!?」
ここは宇宙海賊ToHeartの戦艦マルチザードのブリッジ…
「志保…マルチRの状態は?」
マルチR…マルチザードより操作される無人戦艦である
「駄目よ、3機とも中破…今動かせば致命傷になるわ…それに操縦者の葵ちゃんももう
動けない!!」
「くっマルチ、主砲『ブランニューハート・プロト』の使用は?」
艦長席に座る浩之の前にウィンドウが現われた
『エンジン出力38%低下中っ、今使えばこの船は一時活動不能に陥りますよ』
ウィンドウの中に写る艦のAI・マルチの顔はこの長時間の戦闘のせいか、
少し疲れているように見えた
「正面突破…しかないか」
「浩之…後退は駄目なの?」
参謀である雅史が尋ねる
「駄目だ…これ以上、敵を造るわけにゃいかねーんだ…分かってるだろ?」
「………」
「この手が血にまみれようとやらなきゃなんねーんだ…俺たちが」
「藤田君…現在相手の予想エンジン出力は29%…殺るなら今しかないで」
オペレーターである保科が浩之に報告を飛ばした
「いくさ…主砲を除く全砲門をドッグ入り口に集中、一斉放射の後、ベアー・ギア隊の突入を開始!」
「「「「了解!!」」」」

(そうだ…なによりも大切なもの…そのためならたとえこの手が血にまみれようと…構わない)


−遊撃宇宙戦艦セリオン・第二話『セリオン発進』−


ズドオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!
「ウワアアアア」
「くっ来たのっ…やつらが!?」
ここは独立戦闘型宇宙戦艦セリオンのブリッジ…今ドッグの入り口が破壊されここも衝撃に
見舞われていた
「艦に被害はありません!!エンジン出力32%…後8%でいけます!!!」
オペレーターの桂木が報告する
「クマデバリス隊はっ?」
「感知できない…生きてるとは思うけど、セリオどお?」
ピッ
綾香の前にセリオの写ったウィンドウが現われる
『生存確率86、92%…損傷はあるでしょうが大丈夫でしょう』
「そう…ってことだけど艦長?」
「信じよう…ところで?」
「はい…」
「今まで忘れてたけど副艦長の橋本先輩は?」
「誰も気にしてないんだからいいんじゃない」
無残なり…

『もうジャミングは必要ないな…』
瓦礫の山…ドッグの入り口は破壊されボロボロだったが三機とも無事だった
「行くぞ月島、太田…ヤツラを潰す!!」
『『ラジャー』』
柳川のクマデバリスを中心に三機は展開した…

『ふふ…レッツハンティングよ…』
レミィは燃えていた…いやイっていた…
『ちょっと宮内さん…』
琴音ちゃんも心配そうだった…だが琴音ちゃんの顔も笑っていた
無論あかりも…
『ふふ…浩之ちゃん見ててね』
みんなやばかった…彼女たちが滅殺部隊と呼ばれている由縁である
『さあいくよミンナ…ヤツラをつぶすネッ!!』
『うん…ん?…来たっ!!!!』
ビュウウウウン!!!
『ちっ!?』
バッ
軌道線上にいたあかりは間一髪でよけた
『そこおおお!!!!』
あかりたちのマシン、ベアー・ギアの標準装備であるレールガンからビームが放たれる

ズドオオオオオン
『なんて反射神経…拓也さんっ!?』
『…右のマニュピレータが…くっ…いや大丈夫だっ、行くぞ香奈子っ!!!』
『はっはい!!』
月島機は今の攻撃でその右腕を失っていた
「ふんっ…それでこそ狩りがいがあるというもの…」
柳川の顔から邪悪な笑みがもれる…
「さあ、始めようか…狂宴を……」

『一機はダメージを与えた…あかりさん、いってください!!』
『でも…』
『大丈夫デスっあんなのに落とされるほど私たちはやわじゃないデス!!!』
『……・うん、分かった…2人ともお願いね』
『OK、レッツハンティング!!!!!』
『いきます!!!』
ベアー・ギアの3機は拡散した

『いかせるかあああああああ!!!!!!』
柳川は吠えた
『えっなにあのパイロット?…恐い』
あかりは直感的にそのパイロットの殺意を感じ取った…
ドオオオオオン!!!!!
『ぐあっ!?』
レーザーが柳川機をかすった
『あかりさんの邪魔はいけません!』
『宮内さん、ありがとうっ!!』
『いいから早くっ!!!』
あかりの機体がセリオンの方に向かうのを確認するとレミィは向き直った
『さあ、あなたの相手は私デスッ!』
『馬鹿がっ』
そして両者の機体は激突した

「後、エンジン出力が2%上がればいけます!」
綾香の声がブリッジに響く
「後少し…頼む、飛ばせてくれ……」
矢島は生まれて初めて神に祈った…と思っていたが実際、彼はとても運の悪い人間だ…
そんな彼が神に祈った数は星の数…とても御利益があるとは思えない
「艦長っ、正面に敵がっ!?」
吉田の悲鳴がかった声が矢島の耳に入った
「くそっ攻撃はできないのか?」
桂木が叫ぶっ
「実弾のみで応戦していますがっ効いていません!!」
エネルギー兵器はエンジンが稼動しきっていないため使うことはできない、そのために攻撃は
実弾以外の使用はできなかった
「セリオッ!?」
『後1.67%…間に合いません』
綾香がセリオに呼びかけたがその返事は死の通知そのものであった

「この距離なら確実にいけるっ、照準は!!」
あかり機のモニターに艦首のUPが写される、その画像がだんだん鮮明になりそこに見たことの
ある顔があった…
「あ…あの人、矢島君!?」
あかりは驚きの声をあげた…なんであの人がここに…そう思った
矢島とあかりは同級生である、つまりToHeartのクルーの浩之や雅史、ついでにレミィや保科
とも同級生…
「どうしよう…撃てないよ、知ってる人間を撃つなんて…」
見たこともない人間ならいざ知らず、多少なりとも記憶を共有した相手を撃つことには
ためらわれる、人とはそうしたものだ…だがそのためらった一瞬が戦場では命取りにつながる
ズドオオオオンッ
「あうっ!?」
コックピットに衝撃が襲う、機体の装甲のわずかな隙間に弾が命中したのだ
機体の大破を告げるレッドランプが点滅している
「ごめんっ…浩之ちゃん…!?」
そしてあかりは死を覚悟した

「もうあかんで…時間いっぱいや藤田君っ!!」
ここは戦艦マルチザードのブリッジ…そこでは保科の声が響いていた
「あかりたちからも連絡はこない…もう後退したほうがいいって」
志保の声のトーンも少し落ちていた
「ちっ!!」
「浩之、もう無理だ…このままじゃあかりちゃんたちまで」
「だが雅史…」
「浩之っ!!!!!」
雅史の怒声がブリッジにこだました
ブリッジ内にいた全員が呆然と雅史を見た…ほとんどのクルーが雅史のこんな荒げた声を
聞いたことなんてなかったからだ
「まさ…し?」
「後退だ…いいね浩之」
浩之はしばらく呆然として…ようやく気を取り戻した
「ああ…そうだな、ワリー…」
浩之はバツが悪そうに雅史に謝った
「分かってくれればいいんだよ浩之」
雅史はまたいつものようにニコッと笑った
「ちっ、かなわねーな雅史には…委員長、俺の機体を出してくれ」
「へっ藤田君?」
「あかりたちを回収しにいく」
その言葉に保科の顔から不安は消え、いきおいのいい返事が返ってきた
「了解っ、キャプテン!!!!」

ズスーーーン
『きゃあっ!?』
ここはドックの入り口、2対1という数の差により琴音ちゃんはすでに戦闘不能にまで
追い込まれていた
『もう君の機体は動かない…投降するんだ』
外部音声で月島さんが琴音機に呼びかけた、その横では香奈子のクマデバリスが琴音機に
銃口を向けていた
(駄目…かな、もう……)
琴音ちゃんがそう思ったとき、それは来た

『くっ強い…デス…』
レミィと柳川はブレード同士の格闘戦を演じていた、だが機体の損傷度を見ればどちらが
優勢かは目に見えている
『くく…ここらで終わりか…貴様も俺の渇きを癒せはしなかったな』
柳川のブレードの出力が上がった…だが

ズドドドドドドドドドドドドッッッッッ!!!!

『なっぐああああああああ』
突如数十発のミサイルが柳川機を襲った
ズドォォォォォォォン
柳川のクマデバリスが地面に叩き付けられた
『なっなんだ?』
柳川の見たものは自分の機体よりも一回りでかい黒い機体だった
『ヒロユキッ!!!』
その機体は浩之のマシンであった…
『琴音ちゃんは回収した、あかりはこの先だなレミィ?』
『うん…いってあげてヒロユキっ!!』

「エンジン出力40%を超えましたっ、いけます!!!!」
「桂木さんっヴィジョンクリスタルによるバリアを発生させて!吉田さんは艦のチェックをっ
綾香さんっ戦闘状況の確認をっ」
矢島がオペレーターに指示を飛ばす
「艦長っ目の前の敵の機体はっ?」
モニターに大破した機体が写る
「放っておけ、あの機体はもう動けない…なにも殺す必要はないさ」
「はいはい…って矢島、新手の機体がっ!?」
「なにぃっ!?」
「あれって…あの機体はまさかっ!!!」
綾香は明らかに動揺していた…が今の矢島にそれを悟る余裕はなかった
「向かえ撃てっ!!!!!!!!」
矢島は怒号した
『待てえええええええええ!!!!!』
突然外部から通信が入った
「えっこの声っ!?」
矢島にはその声に聞き覚えがあった、そして見覚えのある顔がスクリーンに映し出された
「なんでお前がっ!?」
矢島は驚愕した
「お前がなぜここにいるっ藤田浩之っ?」
『……お前は…矢島か…』
相手の表情にも驚きが写る
『そうか、まさかお前がこいつの艦長とは…再会の挨拶と行きたいとこだが、みんなが待ってる…
返らせてもらうぞ』
浩之の黒い機体が倒れていたあかりの機体を担いで背を向ける
「まて浩之っ、綾香さん照準をあの機体にむけろっ、動いたのなら殺せっ!!」
「艦長…」
「だから動くな浩之っ…頼むから動かないでくれ…」
最後の声は消え去りそうなほど小さかった
『お前には無理だよ…』
「なっ」
『俺の抱えてる機体にはあかりが乗ってるんだぜ…』
浩之の言葉に矢島は動揺した
『じゃーな、また会おう』
そして浩之は去っていった

「艦長…」
綾香が矢島を心配そうに見た
「発進だ…」
「はい…」
「遊撃戦闘部隊、leaf級独立戦闘型宇宙戦艦HMX−13、名称セリオン、今より発進する!!」
「はいっ、艦長指示をっ!!」
「クマデバリス隊を回収後、この艦は予定通り木星に向かう!各員配置につけっ!!」
「「「了解」」」

こうして戦艦セリオンは発進した…多くの人間に様々な傷を残して……

次回へ続く…

−次回予告−
そしてセリオンは木星に向かう、だがその木星では宇宙連合軍の部隊が謎の集団に
よって全滅させられていた…謎の集団とは一体何者なのか?
そして連合軍艦隊のアクシズ提督の口から伝えられた驚愕の真実とは…
次回『鬼来たる』をお楽しみ下さい

−ウンチク−
人型機甲兵器KOD−07
名称:ベアーギア
クマデバリスより2世代前の機体だがToHeartにあるものはすでに規格から大幅に外れた
代物となっている
標準装備としてレールガン、高周波によって切断することができるブレードを装備、
またメンバーごとに仕様が違い、とくに琴音機に装備されている遠距離用サイコ・スナイプは
強力でヴィジョンクリスタルによるバリアをも貫通することができる

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完全に自分の趣味の世界ですね…いやいや、つまんなかったらごめんなさい!
そんなわけでアクシズさん前にいった通り次回に登場してくださいね!
いや次回といわずその次も…
それじゃあさいならあああああ!!!!!!!