命(みこと)・・・第5章 投稿者: 紫炎
第5章『死に抗う者−マリオネットの心−』

消えた…我が意志を封じし者は消えた……私は…まだ……
存在…意志…ここならばまだ生きていられる……この領域ならばまだ…
存在を許される…光を…たとえ私が否定されようと…
私は死なない…私は生きる…私は…私の名前はっっっっっっ…


「警部、これ…どうするんです?」
校庭…雅史の名を名乗った者であった肉塊はまだそこにあった…
「ん…なんでもそのすじの研究所に持っていって調べるんだと…」
「そのすじ?」
「ゾンビの研究でもしてる研究所でもあんのかね?」
「それって変じゃないですか?」
「まーな、なんか上でごたごたしてやがんだよ…どーもこの事件叩けばほこりだらけって感じがするぜ…」
ゴシュッ
「んっ」
「警部…今何か…」
ガショッ
「おっおいおい…こりゃ…」
「死体がっ!!!」

ドクンッ

「あーあ、どーなってんのかしらね世の中…」
公園…いつも俺たちが溜まり場にしていた公園に志保は一人でいた…
「よっ志保!」
「あれっヒロじゃない…どーしたの?」
「どーしたのっておめーこそ何暗い顔してんだよっ」
「……ぁ…あんたねえっなんでそんな平気な顔してんのよっ」
「志保…?」
「知らないのっ雅史死んじゃったって…」
志保は泣きそうな顔をしてた…本当は泣きたいんだろうが俺の手前…泣くに泣けないんだろう……
「志保…聞いてくれ…」
「なに…よ?」
「実は……」
ドサッ
その時、おれがしゃべりだそうとした途端、何か巨大な塊が俺達の前に落ちて来た…
「!?」
シュウウウウウウ
「なによ…これ…」
俺達の前に落ちて来たもの…それは…激しく変色しゲル状になった人の形をしているものだった…
「…グッ…ウグッ…ギキキキ…」
「なっなんなんだよっ…!?」
それは俺達の方にむかってゆっくりと近づいて来た…
「ギイィ…ヒ…ロ…ォ…ユ…」
「えっ!?」
「いっいやあああああああああああっ、化け物ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」
「ガッ…」
志保の悲鳴が響いた途端、そいつの歩みが止まった…
「ワタ…シ……ハ…ウギッギギィィ…」
ザシュッ
志保に化け物と呼ばれたそれは逃げ去るように去っていった…
「まさか…あれ、あかりかっ!!!!」
「えっなにっ?…ちょっとヒロ、あんた何いってんのよっ」
キキィィィィ!!!!!!
「あっ綾香っ!!」
突如猛スピードでやってきた車から綾香が顔を出して来た!
「ちょっとぉ、浩之っ今のやつ何よっ、もしかしてっ!!」
「ああ…銃で撃たれたあとがあった…多分あいつだ…あいつっまだ生きてたんだっ!!」
「そう…こっちもやばいことになったわ…」
「えっ」
綾香の顔にも焦りがみえていた…いったいどうしたんだ?
「来栖川バイオニクス開発…その研究所が何者かに放火されたの…」
!?
「なん…だって……」
「火のまわりが早くて…何も残らないだろうって……」
そんな……全部、一からやり直しかよ…?
「それじゃあ、あかりや雅史の手がかりはっ!?」
綾香は何も言わずに首を横にふった…
「ウソ…だろ…」
すべては失われたのか…ようやく希望を持てたってのに…
「ヒロ…」
「ん…?」
ガッ
「しっ志保…?」
志保が俺の襟首をつかみ…詰め寄って来た…
「あんた…さっきからなんの話してんのよ…あかりと雅史がどうしたって…?私にも話さないで何やってるのよ、今っ!!!」
「志保………」
俺は綾香の方を見た…今回のことは来栖川が大きく関わっている…どこまで話していいのか正直分からなかったからだ…
「うん…浩之、その子も車に乗せて…これまでのこと…それと分かったことを話すわ…志保…さんだっけ…あなたもそれでいい?」
さすがの志保も無駄口をたたくこともなく…ただ頷いただけだった…

「これで…良かったんだよね…雅史ちゃん……」
「うん……浩之には…全部終わってから話そう…それでいいんだよ…ねっ来栖川先輩…」
走るトラックの中…外を覗けば遠くの方で空一面に広がっている黒煙が見える…
「……(こくん)」
「つらいでしょうが我慢して下さいといっています…」
トラックの奥にいる芹香の横にホログラムで構成されたマルチが芹香の翻訳をやっていた…
「うん…マルチちゃんも人格プログラムだけでも取り戻せて良かったね!」
「はい…ありがとうございます、神岸さんっ!!」
マルチはとても嬉しそうに微笑んだ…
「それで…次はどこへ……?」
雅史の質問に芹香は静かに語り始めた………

「ハア…ハア……」
薄暗い下水道の中…それは存在していた……全身の腐食が始まり、もはや人の形すら留めていない肉塊は呟いた…
「ヒ…ロ…ユキ…チャン…ドコ……ココハクライノ…サビシイヨ」
グロテスクなそれ…肉体はかつて雅史として存在し…その魂はあかりと名づけられていた…ただその精神はすでに崩壊し、一つの思いが『彼女』をここに縛り付けてる…その思いとは……
「アイタイヨ…ヒロユキチャン……」

続く……


おまけ

志保「そんなわけで志保ちゃんとーじょー!!!!私だけのけものにしよーたってそうはいかないんだからっ!!」
浩之「あーうるせーのが来ちまった…せっかくシリアス調に話進んでたのに、これでこの話ドタバタコメディになんのは確実だな」
志保「どーいう意味よ…?」
浩之「まんまだろーが…自覚ねーのかお前は」
志保「あんたにだけは言われたくないわよっ」
浩之「んだとぉー」
志保「なによー」
マルチ「とゆうわけで命(みこと)は今回で終了、次回からは魔法少女マルチィ サミーが始まります!みんなお楽しみに…」
浩之&志保「それはないっ!!!!」
マルチ「あうーーーーー」

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紫炎です…続けてだします・・・やっぱおまけ書いてるときが一番楽しいです…いつかやってみたいです『魔法少女マルチィ サミー』を…まっこの話が終わったあとにでも…
俺がこの話でやってみたかったことは日常に生きる人たちが非日常の世界に踏み入れたとき、どういう反応を示すのだろうということです…ギャグ畑のキャラである志保(おいおい)も今回の話で見事にシリアスしてました(まー親友2人も死んだと思ってたんだから当然でしょーが)…俺的にはかなりいい感じになったと思います!まーでもおまけこそ本来の姿ですね…あと出てないキャラは、葵、委員長、琴音、理緒、レミィくらいですかね…全部出ます、なにせ『プロジェクトTo Heart』は彼女らとリンクしてるんですから…中枢である浩之の意のままにファンネルのごとく動きまわります(うそです)…にしても偽あかり、あいつだけですね、1、2章の雰囲気引きずってんのは…もっとも書いてて辛いキャラです、身体は化け物、心はあかり(まったく同じものと思っていいです…)なんてTHファンなら耐え切れるもんやないしなー、けっして幸せにはなれない残酷なキャラ…テーマは『悲哀』、いったいあの子はどこへいくのでしょう…それといま第7章書いてます・・・第6章はもう少ししたら出します・・・んでわっ!!!