それぞれの道 投稿者:白野佑凪
設定:To Heart
主人公:浩之
マルチネタっっっっ
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<それぞれの道>
 「マルチ、浩之君には私から言っておこうか?」
 「いっいえ、長瀬主任さん、ちょっと待って下さい…」
 「だが、マルチの一存で決められることでは無いぞ」
 「はい…分かっています。ですけど、もう少し、もう少し待って下さい」

 「ん、旨いよ。マルチ料理上達したな」
 「ありがとうございますぅーーー」
 マルチと浩之が同棲生活を始めて5年が経つ。
 浩之も就職をし、立派な社会人となっていた。
 メイドロボとの生活、結婚…いろいろな差別や嫌がらせにもあった。
 だが2人はそれを乗り越え、幸せな生活を営んでいる。
 「マルチ醤油……マルチ?マールーチー?マルチー?」
 「あっはいっ!えっと、おかわりですか?」
 「いや、醤油」
 「はわわっ、すみませーんっ!いま取りますぅ」
 「ん、ありがと。どうかしたか?」
 「い、いえ…何でもないんです…何でも…」

 仕事が早く終わった浩之はマルチのことで相談があると、来栖川研究所の長瀬主任を訪ねた。
 「最近、マルチがおかしいんだ」
 「プログラムにエラーでも出たか?」
 「い、いや、そーいうのじゃなくて。何か隠してるみたいな…」
 「ははははははは!そんな男女の間のことを私に言われても困るよ」
 「笑い事じゃねーんだ!なあ、なんか定期整備のときに何か聞いたり見たりしてないか?」
 「そんなこと言われても、我々は体の整備だけだ。記憶や気持ちのデータはプロテクトが掛かってて我々でも見ることは出来ないからな…」
 「そ、そうか…忙しいのに悪かった、それじゃまた…」
 浩之は暗い表情で立ち上がり、ドアへ向かって進んでいた。
 あまりにも悲しげで今にも消えてしまいそうなくらいだった。
 長瀬は深いため息をはき、心の中でマルチにわびた。
 「…浩之君、話しがあるんだが」

 「マ、マルチちゃん…本気なの?」
 そこには青い顔をしたあかりと、悲しげな顔をしたマルチがいた。
 「は…はい…」
 「…酷いよ…マルチちゃん…わたしの気持ち…知ってて…」
 あかりの体が振るえている。
 「ごめんなさい、あかりさん…でも、でもっ」
 マルチの瞳から涙がこぼれる。
 パァン
 乾いた音が辺りに響く。
 あかりが、マルチの、頬をぶった………
 「あ………」
 無意識に手が出たらしい、あかりはそんな自分に驚いていた。
 止めどなく流れる涙を止めることは、もうマルチには出来なかった。
 「わたし…わたしだって浩之ちゃんのこと好きなんだから!」
 「あかりさん…」
 あかりの目にも涙が浮かんでいた。
 「ひどいよ…ひどいよぉ…」
 「あかりさん…ごめんなさい…でも、でも…私も女の子なんです…」

 「なんだって!そんなバカな!」
 浩之は長瀬の胸ぐらをつかんで怒鳴っていた。
 「本当のことだ、何度でも言おう彼女には、マルチには子供を産む機能が付いている」
 あまりにも衝撃的なことに浩之は感情をどうすればいいか分からない。
 「マルチの女性性器はそのための物だ。まあ、試験管ベイビーみたいなものと思ってくれ」
 「だからって…だからって!!」
 浩之が混乱しているにも関わらず長瀬は続けた。
 「しかし、しょせんは機械。卵子を作ることは出来ない。どこからか貰ってこなくてはな」
 「………そ…それをマルチは…あかりに?」

 浩之は走った。
 「たしか、今日マルチのやつ公園であかりと合うって言ってた」
 来栖川研究所から、あの公園まではかなり距離がある。
 途中、靴が脱げコケて傷だらけになっても走った。
 「ばかやろう…一人で悩んで…ばかやろう…」
 だが、浩之の考えはまとまらなかった。
 マルチ あかり 俺 子供達 幸せ 世間
 色々なことが頭に浮かんできては消えていった。
 自分はどうしたいのか…それが一番分からなかった。
 それは子供は欲しい。愛するマルチの子供は…
 しかし、卵子はあかりのもの…自分とあかりの子供?
 育ての親、生みの親、生物学的な親…本当の親っていったい…
 あかりの気持ちは?マルチの気持ちは?そして俺の…
 やっと着いたとき浩之が見たのは。
 泣きじゃくるマルチと…
 マルチをそっと抱くあかりだった。

 「マーマ マーマ」
 「はいはいぃ、いい子ですねぇー。高い高いですぅー」
 「きゃっきゃっ」
 マルチの腕には赤ん坊が抱かれていた。
 「マルチちゃん、私にも抱かせて」
 「いいですよぉ。はい、あかりさん」
 そこには笑顔のあかりもいた。
 一つあかりが変わったところは、お腹が大きくなったことだった。
 「しかし、あかりと雅史がくっつくとはなぁ」
 「もぉ、あのころ私、浩之ちゃん好きだったんだよ?」
 「あー、あかりさん、ご主人さまは渡しませんよぉ〜〜」
 「ばっばか!マルチ、何言ってんだ!」
 「いいよ、わたしも雅史ちゃんに幸せにして貰うからっ」
 はい、末永く、お幸せに。
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(後がきっす)
 ふぅ、何となく無理のあるネタだから書けないかなぁとか思ってたけど(^−^;;;
 マルチになぜ女性性器がついているか?という疑問から出たSS
 ただのH目的のためにマルチが作られたとしたらイヤだから。
 女の幸せが子供を産むこと!とは思いませんが。
 マルチも女です。好きな人の子供は産みたいかなーって(^−^)
 雅史「ところで、僕の出番は?」
 なぎ「これだけ」
 雅史「しくしくしくしくしくしく・・・・・」