<最後の日> 投稿者: 白野佑凪
設定:To Heart
主人公:浩之
マルチネタ
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<最後の日>
 ・・・いつか見た日。忘れられぬ思い出。
 あの日、たしか夏。
 向日葵が綺麗だったのを覚えている。
 昼は蝉の声、夜は鈴虫の声、そして一日中聞こえていた・・・マルチの声。

 俺は孤立化していた。大学内で・・・。
 友達もいない。
 あかりも同じ大学だが、なるべく合わないようにしている。
 俺に近付くとあかりが不幸になる。
 あかりは優しいから、それでも俺によってきた。
 俺は・・・鋭い言葉であかりを遠ざけた。
 あかりのためだ・・・
 何十ものいやがらせ、何百もの偏見、何千もの噂が俺の周りにあった。

 変態・・・
 ロリコン・・・
 人間の女では燃えないやつ・・・
 実は不能者・・・

 俺が普通とは違うから・・・
 俺がマルチを愛しているから・・・
 最初はそんな噂を否定していった。
 俺がどれだけ本気か話して、理解を求めた。
 それでも分かってもらえなかった。
 喧嘩でボロボロになり、マルチにいらぬ心配をさせたりもした。
 マルチはいつも優しかった。
 ドジなところは直らなかったが、家事全般をこなすようになった。
 いつも笑ってくれた。俺の胸の中で。
 微笑みながらも身を切る思いだったんだろう。
 ある日、大学から帰ると、テーブルの上に手紙があった。

 ご主人様へ
 今まで、どうもありがとうございました。
 ご主人様は何も言ってはくれませんでしたが、私には分かっていました。
 私のせいで傷つき、悩み、悲しんでいるのですよね。
 それでも私を愛してくれました。
 私は幸せです。もう思い残すことはありません。
 こんなやり方でしか、ご主人様を救う術を知りません。
 最後まで不器用ですみませんでした。
 どうか幸せになって下さい。
               マルチ

 俺はベットの上で横たわってるマルチを見つけた。
 その顔は微笑みながらも、涙の後があった。
 データを消したのだろうか・・・俺には分からない。
 だけど、これだけは分かった。
 マルチの体は既に冷たくなっている。
 ・・・コレデ、スクワレル。
 そんな言葉が頭をよぎった。
 俺は否定したが、それも本音なのだろう。
 だが・・・俺のほほを伝う物の意味は・・・
 この涙の意味は何だ?
 この悲しさはなんだ?
 幸せになって下さい?馬鹿を言うな!お前なしでどうやって幸せになる!
 俺はマルチの冷たくなった体を抱き上げ、外に走り出た。
 まだ間に合うかもしれない!
 絶対に諦めない!
 俺は裸足のまま、来栖川研究所まで走った。
 ずっと涙は止まらなかった。
 悲しくて、くやしくて、やりきれなくて・・・
 足の痛みも罰だと思えた。だけど、こんなものじゃ足りない・・・足りるわけがない・・・
 栗栖川研究所について長瀬主任に泣いて頼んだ。
 マルチを助けてくれと。
 データ復旧作業には丸一日かかった。
 一部データが壊れたりもしたが、なんとかマルチは目を覚ました。
 目を開けたマルチの第一声はこうだった。
 「・・・ご・・・ご主人様ぁ〜・・・どうしてですか・・・ご主人様のバカァァァ〜〜〜」
 マルチにバカと言われたのは、これが最初で最後だった。
 その日から俺は変わった。
 どんな中傷や偏見も痛みに感じなくなった。
 一番、辛いことを知っているから。
 一番、幸せを知っているから。

 「そんな事もあったよな・・・」
 ベットの中で俺はマルチに話しかける。
 「そうですね。浩之さん」
 今では俺のことを浩之さんと呼ぶ。あの指輪の交換の時から。
 「今まで、ありがとうなマルチ。俺は幸せだったよ」
 自分の死期が近いことくらい分かる。
 何十年と生きていれば。
 「私もですよぉ。浩之さん」
 ベットの横に腰掛け俺の手を握り、あの学生時代といくぶんも変わらぬ笑顔を見せる。
 話し方も変わっていない。
 ドジなところも。
 「浩之さん、私も少し疲れましたぁ〜。私も、もうその時が近いです・・・」
 「向こうでも、また一緒になろうな」
 「はい!・・・でも、私に魂があるかどうか・・・」
 「マルチには心があるんだ、魂だってあるよ」
 「そうですね。浩之さんを看取ってから私も行きます」
 「ははは・・・かってに殺すなよ。気が早いな」
 「あ、ごめんなさいぃぃ〜〜〜」
 不思議に恐くはなかった。
 だんだんと体が重くなる。
 いよいよか・・・
 「マルチ・・・愛しているよ・・・」
 「私もで・・・す・・・・」
 消えゆく視界の中で、マルチが機能を停止したのを俺は見た。
 まったく、最後の最後までドジなんだからな。
 看取ってくれてもいいじゃないか。

 「ほらっ!マルチ、行くぞ」
 「あっ、ご主人様ぁ〜〜。待って下さいぃぃーーー」
 「こらっ、またご主人様って言ったな」
 「あ、すいませぇーーん」
 「まったく、じゃ、行こうか」
 「はい!浩之さん」

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(後がきっしゅ)
ううっ・・・親バカと呼んでください。
俺このSS・・・自分で書いておきながら、かなり好きなんです(;;)
書きながら目ウルウルしてます(俺、ほんとにバカ)
自分で書いた分、感情が入っちゃったんでしょうね。
とかなんとか言いながら、1時間半しか書くのに使っていない(^^;;;
仕上がりはずさんかも・・・
言葉足らずで分からなかった所は質問して下さい。何でもお答えします。
(態度でかくなってきたな)え?そうかな?(そうそう)・・すみません・・・(;;)
さてと・・・・明日からテスト(;_;)うぎゃぁぁぁぁぁ
と、いうわけで次回予告。
次は楽しくオチのあるやついきましょう。
でもテストだし・・・ベタネタで許してっ
ということで、次は レミィ遊園地へ行く(仮) ですっ。
(やっぱ態度でかいわ)・・・だからごめんって・・・