世界一幸せな結婚式 投稿者: シラタキ王
  浩之とあかりちゃんが今日結婚する。
僕にとって何者にもかえられない二人だ。
  すこし、ほんの少し悔しいような気もしたけど、そんな感情は
ほんのわずかな時間だけ僕の心の表面に小さな波紋を生んで、
すぐに消えた。
  だって、あの二人がどれだけ長い間お互いを見続けてきたのか、
誰よりもよく知ってるから。


「神岸さん、じゃなかった藤田婦人、もう少しじっとしててくれんかなぁ」
あかりちゃんにドレスを着せながら保科さんが言った。
「なあ、心配なんか?」
「決まっているでしょ智子さん。どんな花嫁も式の前にはドキドキするのよ。
私があの人と結婚したときなんかもっとひどかったわ。」
あかりちゃんのお母さんがそう返す。
「大丈夫よ、お母さん。ただ、志保にも来てもらいたかったなって思って、」
「長岡さんも仕事で忙しいみたいやしねぇ。私らも手ぇ尽くしたんやけど、
居所さえ掴めんかったわ。かんにんな。」
「そ、そんな、保科さんを責めてるつもりじゃ・・・
むしろ私なんかの為にそこまでしてくれるなんて、ほんとに感謝してる。
ありがとう。」
あかりちゃんと保科さんは強く抱きしめあった。それを見て、あかりちゃんのお母さんが
「お二人さん、とりあえずそういう事は着付けを済ませてからにしましょうね」
と言った。でも、その目は「良い友達に恵まれたのね、あかり」と語っていた。


「あかりさぁん、おめでとう御座いますぅぅぅぅぅ」
言いながら駆けてきたのは、マルチちゃんだ。世界で初めて、心を持ったロボット。
「ありがとうマルチちゃん。あなたが来てくれて本当に嬉しいわ。
最初は色々あったけど、もう昔のこと・・・私、あなたを本当に大好きだと思ってる。
マルチちゃん。信じてね。」
  以前、マルチちゃんの事で浩之とあかりちゃんがもめて、でも、浩之がマルチちゃんに
注いでいた愛が父性愛で、男として愛していたのはあかりちゃんだって解って一件落着って
事もあったけど、それも過去の話だ。
「も、もちろんですぅぅぅぅぅ。私もあかりさんのこと、大好きですぅぅぅぅ。」
マルチちゃんは感動で泣きながら答える。
「ところで、マルチちゃん。浩之ちゃんとも話したんだけど、正式に私たちの娘にならない?」
「え、で、でも、そんな、ご迷惑じゃないんですか?」
「浩之ちゃんも、私も、マルチちゃんと家族になりたいって思ってるの。だめかなぁ?」
「とんでもないです。よ、喜んでお受けしますぅぅぅぅぅ。」
二人はしっかりと抱き合った。あかりちゃんのお母さんと保科さんが、
「また着付けが中断されちゃった」と思いながら肩を竦めていた。


 そのころ浩之は、蝶ネクタイがうまく結べずにいた。式場をを見てきた矢島君が、
「おい、みんな集まってるぞ。まだか?花嫁のほうが花婿より先に準備を終えましたなんて
洒落にもならないぞ。」
なんて言ってくる。しかし、誰が結んでもうまく行かない。そもそも蝶ネクタイなんて
誰も結んだことがないのだ。
「もうだめだ。雅史、白状するけど今の気分に比べたらガディムと戦う時の方がまだ楽だぜ」
浩之のジョークもいまいち冴えない。意外と本音だったのかも。
そうこうしていると、長瀬さんが入ってきた。ちょっと貸してもらえるか?といって
蝶ネクタイを手に取ると、鮮やかな手つきで蝶ネクタイをきれいに作る。
僕たちは顔を見合わせて、意外な人に意外な特技が、と思った。
それを浩之に渡しながら長瀬さんは浩之に語った。
「私の娘を可愛がってくれて、感謝してます。これからも宜しくお願いしますね。」
「ええ、もちろん。約束します。」
そう答えた浩之は、僕の目から見ても本当に格好よかった。


  高校のころの友人達、とある一件で知り合った柏木家の人たち、長瀬君、月島さん、etc、etc、
たくさんの人が集まってくれた。浩之はもうステージで立っている。
  付き添い役の保科さんが、準備が出来たと合図をした。結婚行進曲が流れる中、まず保科さんが
ステージに上がった。
「藤田君」
「あ、委員長、何も言わないでくれ。今何か言われたら爆発しそうだ。」
「それは困るな。けどすぐ心が遠くに飛び立って、私が何言っても聞こえなくなるわ」
「何だ?それどう言う・・・」
浩之はすぐにその言葉の意味を理解した。あかりが父親と共にバージンロードを進んできたのだ。
今浩之の心の中にあるのはたった一言だけだ。
「ああ、あかりはこの世で一番美しい。」


「このサッシュは夫婦の絆を示すものです。神の前に為す愛の誓いであり、幸せなときも
辛い時も続く絆です。今日の結婚の誓いの言葉は新郎新婦が自ら書かれたものです。
『私が泣いていた時にあなたは私を見つけてくれました。
  私が打ちひしがれていた時あなたは私を救ってくれました。
  出会った日から私にはあなたがいてあなたには私がいました。
  それは昔もこれからも変わりません。
  幸せな時も辛い時もありました。ですが私たちの愛は常に耐えて打ち勝ちました。
  私は藤田浩之を私の夫とします。
  私は神岸あかりを私の妻とします。
  苦しみと情熱、悲しみと希望、そして死を、生を超え、
  明日に何があろうと私たちは二人で立ち向かいます。』
あなたがた二人を夫婦とします。
誓いのくちづけを。」
なんて素敵なくちづけだろう。
最初にはやし声をあげたのは綾香さんだった。最初に拍手をしたのは、恥ずかしながら僕だった。
二人をたたえる拍手はだんだん大きくなり、その場の全員が心を通じあわせたようだった。


  そして披露宴が始まった。バイキング形式の料理を取りながら話す二人がいる。
「耕一さんは、まだ結婚しないんですか?」
「そういう祐介君はどっちが好きなんだい?沙織ちゃん?瑠璃子ちゃん?」
二人は苦笑しながら、別れた。祐介君は三人分の、耕一さんは(なんと)五人分の料理を
取っていった。お二人とも頑張ってください。

「柏木耕一、そろそろ決着をつけるか?」
「おいおい、こんなめでたい席でそういう事を言うかねお前は」
「そういう意味じゃあない。お前も、千鶴を愛しているんだろう?」
「お前もって、お前、そうだったのか?・・・本気、か?」
「冗談、だ。俺もこの場の雰囲気に当てられたようだな。」
あの事件(LF97)の時に柳川さんと千鶴さんの間に何かあったらしい。同じチームだった
僕と長瀬君は、ある時を境にずいぶん柳川さんが丸くなったように感じていた。
千鶴さんの優しさが彼を変えたんだろうな。耕一さんには悪いけど、お似合いだと思います。

  時間がたつにつれ、静かなジャズが流れ出した。シナトラ、グッドマン、エルビスで
立て続けに踊った後、初音ちゃんは最初に音を上げた。それでもブーケを他人に渡すつもりは
無いようだ。投げられたブーケは、途中で力学を無視したような動きを見せ、琴音ちゃんの
手元に落ちた。琴音ちゃんが少々議論の余地のある手段を使ったらしい。浩之がそれを見て
大笑いしていた。

  次に浩之があかりちゃんの足からガーターをはずして投げた。あかりちゃんは反対したけど、
浩之が「やらないとコーイチさんが暴れるって言うんでね」と言うと、仕方無しに承諾した。
さっきのブーケの時以上に男性陣は盛り上がっていた。参加しなかったのは僕と柳川さんくらいだ。
でも、多分この後みんな各々の彼女に怒られるんだろうなぁ。
結局誰が手にしたのかは言わないでおこう。でも、耕一さん、変身するなんてずるいと思いますよ。

  ケーキカットの時、あかりちゃんが感極まって泣き崩れた。そしてケーキを浩之の顔に
ぶつけてしまった。でも、浩之はぜんぜん気にしてないようだ。

  そして、そろそろ披露宴も終わりという時、突然駆けつけてきた人物がいた。
ああ、やっと来たね。間に合ってよかった。
「「志保!!」」
新郎新婦の声がハモった。
「あはは、遅れちゃってごめんね、色々あってさ、大変だったのよ。二人とも、本当におめでとう。
幸せになりなさいよ。」
それ以上何も言えないようだった。いう必要も無いと思った。
「うん。世界一幸せになるからね。」
あかりちゃんは飛びっきりの笑顔で答えた。

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  始めまして。初投稿のシラタキ王と申します。
  アメコミのX−MENで、一回丸々結婚式の話というのがあったので、ついまんまパクリ(爆)を
書いてしまいました。長くなってすいません。
  今度はまんまパクリでは無い物を書きたいと思っています。