ホールの中心でアイを叫んだジグマ(笑) 投稿者: 美咲萌え紫陽
 久しぶりなので、人物紹介

 俺(紫陽)……筆者である。パチンコ物語に作者が出るのは、当然の事である。

 藤田浩之……ランスに匹敵する程の腕前(何が?(笑))。

 神岸あかり…パチンコに嫉妬し、現在マジランと過度に感応している。(笑)

 姫川琴音……超能力少女。“羽根師”という贈り名を持つが、
最近、磁石使いではないかと噂されている…。(笑)

 長瀬祐介……電波ゴト師。“歩く高感度メトロノーム”という贈り名を持つ。
何度も検知機に引っかかるが、道具を持っていたためしが無いという、不可思議な
男である。

 あらすじ…
 紫陽とパチンコ勝負することになった浩之。しかし、彼の彼女であるあかりに、
デートをすっぽかしてパチンコに通っていたことが、発覚する。
 マジカル・ランプでの勝負を引き分けという事で処理した二人は、名人戦に
向かうが、そこに居たのは琴音ちゃんであった…


 「え…姫川さん、私の事知ってるんですか?」
 「えぇ。プレイヤーの方ですよね。藤田さんが話すとき、
いつもいらっしゃいましたよね?」
 さすがは超能力者、たまげたもんだ…みえる筈の無いものまで見えてるなんて。
 「あ、姫川さん、こんにち…」
 ピー、ピー、ピー
 「な、なんだ!?」


	【ホールの中心でアイを叫んだジグマ(笑)】

 くるぅりと振り返ると、そこには長瀬祐介…。
大方、電波ゴトでもやって検知機に引っかかったのであろう…哀れ。
とか思っていると、コッチに気づき、目で助けを求めている。
 「おい、浩之…」
 俺は浩之と密談の体形をとった。
 「なんだ?」
 「アレ…」
 俺が親指で指差してやると、浩之も気づいたのか、目を背け、そして言う。
 「俺は…LF'97で、奴とで出会わなかった」
 「そうか、そうだな、それでいい…」
 俺様は浩之の肩をポンポンと叩くと、琴音ちゃんに対峙した。
 「ねぇ、琴音ちゃん」
 「はい?」
 「どうしてパチンコやってるの?」
 「生活の為…です」

 俺と浩之は再び密談の体形をとった。
 「おい、浩之…琴音ちゃんの超能力の秘密…知ってるだろ?」
 「あぁ…」
 「本当の事、教えた?」
 「いや…実はマダなんだ…」
 「琴音ちゃんは知らず知らずの内に電チューに玉を集めている…という事だな」
 「…」
 「どうする?今言ったら、彼女は罪悪感に…」
 「言わなければ良いこと…ってのも存在するよな…」
 「多分な…」
 「よし、決まりだ」
 「俺も、浩之も言わないって事だな?」
 「あぁ…」
 俺達はお互いの肩をポンポンと叩くと、琴音ちゃんうを挟むようにして、
台に座った。(この二つの台しか開いてなかった。他の台はシルバー席と化している)
 「じゃぁ、浩之、先に規定量終了した方が勝ち…な」
 「あぁ、判った」
 とそこで琴音ちゃんが口を挟む。
 「あれ、勝負なさってるんですか?」
 「え、あ、まぁな」
 浩之がたじろぎながら返事している。
 「わたし、お二人の勝負の邪魔をしないか…」
 くぅ…なんて哀しそうに言うんだ…そう言えば不幸の予知は克服してないって
事になるな…。それも可哀相だ。
 「大丈夫、琴音ちゃんは大丈夫」
 俺が左サイドから、琴音ちゃんの後頭部に向かって囁く。
 「え?」
 琴音ちゃんが振り返る。そうすると、今度は浩之が琴音ちゃんの後頭部に囁く。
 「長瀬の事は裏切っても、俺、琴音ちゃんの事は裏切らないから…」
 琴音ちゃんは浩之の方に振り返り、そして応える。
 「長瀬…さん?」
 余計な事言っとるぞ、浩之。
 「あー何でもない、何でもないから、琴音ちゃん」
 琴音ちゃんは再び俺の方に振り向く。
 「さ、勝負始めるぜ!紫陽!!」
 浩之の声に、琴音ちゃんは浩之の方に目を向ける。
それを見て俺はふふんと笑い、500円を入れた。

 1分と経たないうちに、俺の玉がVゾーンを叩く!!
 チャチャチャーチャーチャーチャチャチャチャチャー
 「へへへ…頂き…」
 「クソ…」
 浩之め、焦っているな…この機種は焦ったらお終いなんだよ…
 「駄目…」
 って琴音ちゃん何を…
 「紫陽さんの当たり…ワンパンで終わる…」
 がは。何て不吉な事を言ってくれる…
向こうで、浩之が笑いをこらえて、今にも吹き出しそうにしている…
しかしだ、如何に琴音ちゃんとはいえ、俺の腕は曲げられね…
 「げっ…」
 てっきり、玉にずらしを掛けてくると思ったら、俺の手を何かが思いっきり
掴んでいる…すごい力だ…こんなんじゃ打てねぇ…
 チャチャチャーチャチャチャチャチャーチャー
 「うぞ…」
 琴音ちゃんの予言通り、俺はワンパンを喰らってしまった。しかも賞球無し。
 「はうぅぅぅぅ」
 「ごめんなさい、わたしのせいで…」
 「いいよ、琴音ちゃんのせいじゃない…」
 「そうだぜ、琴音ちゃん。こいつの腕が悪いせいだからな。」
 浩之、調子に乗るなよ…
 「でも…」
 「いいよいいよぉ、琴音ちゃんはカワイイから許す」
 俺は琴音ちゃんをなでなでする。
 「あ…紫陽さん…」
 そう言うと、琴音ちゃんは自分のドル箱から、玉を手で掴み…
 「これ、あげます。良いですよね、藤田さん」
 浩之が『あぁ』とうなずくのを確認してから、俺の受け皿にそれを入れてくれた。
 「あぁ、ありがとう琴音ちゃん」
 「いえいえ…」
 さっきから、『お客様同士での玉の貸し借りはご遠慮下さい』
という、ホールアナウンスがうるさい。
 「へっへっへ、紫陽、羨ましいなぁ…」
 と言っている浩之の台は、ピカピカと点滅している。
 「ちっ」
 俺は舌打ちしながらも、琴音ちゃんの方を見やる。
 「良かったですね、藤田さん」
 だって…。でもさ、ほら、不幸の予知をしないと…
+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
 ジャラジャラジャラジャラ
 「結局…」
10R終了まで、琴音ちゃんは何も予知してくれなかった。はう。
 「…」
 俺が無言で打っていると…
 チャチャチャーチャーチャーチャチャチャチャチャー
 「ふぅ、やっと来た…」
 「あぁ、紫陽さん!!」
 って琴音ちゃん反応早すぎ。
 「何?」
 「その…あの…」
 「まさか、また…ワンパン?」
 「えぇ…」
 ガク…

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 一時間半後…

 「どうして…どうして…」
 俺は頭を抱えた。
 「どうして、名人戦に2万円もつぎ込まなくちゃいけないんだ〜」
 途中まで、琴音ちゃんは快く玉をくれたが、すぐに交換の時がやってきて、
俺はあえなく現金投資…
 「紫陽さん…ごめんなさい」
 申し訳無さそうに謝る琴音ちゃん。
 「いいよ、琴音ちゃん。琴音ちゃんはカワイイから許す」
 そう言うと、琴音ちゃんの頬は少しだけ紅色に染まった。
 「へっへっへ、紫陽…とりあえず俺の勝ちだぜ…」
 浩之はもう上機嫌である。
ちくしょう…いつか『ハイル、ネ□ス!』と言わせてやる…
 「待て、待て、もう一戦だけ付き合ってくれ…」
 「いいぜ…」
 浩之は上機嫌の為、もはや断る理由が無いようだ。
 「次は何だ?」
 「これ!!」
 「ホー助くんですね」

 俺達はさっきと同様、琴音ちゃんを挟んで台に座った。
なぜ琴音ちゃんも一緒に打っているのか判らなかったが、それはそれで良しとしよう。
 「3時間後、出玉勝負でいいな?」
 「あぁ…」
 「えぇ、結構です」
 って琴音ちゃん…
 「一緒に勝負するの?」
 俺はイチジク大の汗を従え、琴音ちゃんに尋いた。
 「えぇ、面白そうですから」
 「…カワイイから許そう」
 そう言って俺は琴音ちゃんを照れさせる。
これで不幸の予知の驚異は、何とか遠ざける事が出来るはずだ。
琴音ちゃんが幸せを感じている間は、それが起こりにくい事を俺は知っている。
 「じゃ…始めましょう」
 何故か琴音ちゃんの照れ隠しの仕切りで、勝負はスタートした。
に見えたが…
 「さっきはよくも無視してくれたね…」
 って…祐介。よりにもよって俺の隣か…。
 「いやいや…気づかなかったからさ、俺…」
俺は何とか弁明するが…
 「げっ、長瀬!さっき…」
 浩之が壊してくれた。
 「あれ、長瀬さん…って、何処かでお会いしましたっけ?」
 「えぇ、ガディムとの戦いの時…」
 「あぁ…お久しぶりですね」
 琴音ちゃんは、やっと思い出したようだ。
 「今、勝負してるんですよ、長瀬さんもどうですか?」
 しまった。琴音ちゃんは本来明るい娘だから、上機嫌になると饒舌になるのだ。
かといって、不幸の予知の驚異を無視は出来ないが…
 「ふふふ…僕はいいよ」
 って殺気に満ち溢れているぞ…どうか、浩之の方へ…
 「そうですか…じゃぁ、皆さんもう一度仕切り直しで始めましょう」
 その言葉は、実に幸せそうだ。
 「そうだ、そうだね、ははは、始めよう」
 俺は焦がりながら喋った。
 「そう…しようぜ…」
 浩之も焦っているらしい…そりゃぁ、電波は恐ろしいからな…何をされるか
わかったもんじゃない。

 ピロリロリロリロ…
ピィーンピィーンピィーンピィーン
 チャーラーラーラーラララー、チャーラーラーララララー
チャラララララチャラララララチャラララララチャラララララ

 初めにVが来たのは俺だった…しかも“1”これは…
 「ふふふ、オカルト攻略法を見せてやる」
一番最初に大当たりが来たとき、6個入れアタッカーフルオープンで、
連荘率が大幅にアップするという、オカルト攻略があるのだ。
 俺は順々に6個入れる…よし…ってあれ?
 キィィィィィン
頭が痺れる感じ…で、7個入れてしまった…。
 俺はとっさに祐介の方を見る。
彼は相変わらず涼しい顔をしていたが、口元だけが微妙に笑っている…ちょっち怖い。
 「う…」
 間違いない、電波だ。

 「なんだい、失敗したのかい?」
 祐介が白々しく訊く。
 「うぅ…」
 俺はうずくまる。
 「どうしたんですか?」
 「ん、なんだ?」
 琴音ちゃんも浩之も不思議そうにこっちを見ている。
二人とも、オカルト攻略法は知らなかったようだな。
 「オカルト攻略法さ」
 そして祐介は、先ほど俺が失敗した攻略法を説明している…
 「なるほどな…」
 浩之の顔が苦笑っている。
 「それ、やられてたら俺、かなわなかったろうな…」
 「うぅ…」
 「紫陽さん、大丈夫ですよ…ほら、無制限じゃないですか」
 琴音ちゃんの慰めが心に響く…なんて優しい娘なんだ…
 「よし、俺…がむばる」
 その時、祐介がニヤッと笑ったのを、俺は背中に感じた。

○▽○▽○▽○▽○▽○▽

 3時間後…
 「おのれ、ロゴダウの異星人め!!」
 俺は思わず叫んだ。
 「なんだ、紫陽…無制限なのに全然玉が無いじゃないか」
 浩之め、てめーは3箱も積んでやがる…1万5千円か…
 「紫陽さん、がっかりする事ないですよ」
 そういう琴音ちゃんは6箱…俺の失敗した攻略法を使ったのだ。
 「おやおや、どうしたんだい?」
 祐介よ、交換スタートで何故12箱も積む〜…6万だぞ、6万
 「てめぇ〜、ず〜っと俺の台に電波送ってたろ!!」
 「なんだい、それって言いがかり?ヤだなぁ…」
 祐介、お前、いつから性格が月島拓也になったんだ!?
確かに、相手が電波では証拠はない。
 しかしだ、10回もVが目を走っていて、一度も来ないというのは不自然だぞ
(まぁ、不調の時にはこういう外れかたは多いけど)。そして、挙げ句の果てには
 「紫陽さん、人のせいにしてはいけませんよ」
 と琴音ちゃんに言われたり…
俺は、ヨロヨロとその場に砕けた。結局6万呑まれたのだ…勿論全財産だ…。

 「とりあえず…この勝負は、琴音ちゃんの勝ちだな…」
 そんな浩之の声がどこからともなく聞こえてくる…

 「待テ…」
 「???」
 突如喋りだした俺に、楽しそうだった周囲は静まる。
 「俺は…俺は…」
 「…」
そして、呆気にとられて俺の事を見る。
 「俺は、まだ闘えるぞ!!」
 そう言って、俺は背中の翼を大きく広げる…
 「まさか…」
 祐介が驚愕の声を上げる
 「竜神人…」
 「うおおおおぉぉぉぉ」
 そして俺は外へと飛び出し、天高く舞い上がる。
そのまま帰ってくる事はなかろう。

 残された3人は呆然としていた。琴音ちゃんがやっと口を動かす…
 「これって…もしかして、オチ…なんでしょうか」
 エンディングテーマが流れる。菅野よ○こ作曲のものだった。
 「スタッフロールが流れてるから、恐らくな…」
 浩之が答えた。

 エンディング

 「さぁて、帰るか…」
 浩之は言う。
 「そうですね…」
 琴音ちゃんも言う。

 外はネオンが一杯だったが、昼のそれとは違い、寒い。
浩之は琴音ちゃんの肩を抱く。
 「あっ…浩之…さん?」
 琴音ちゃんが驚いた…という顔で浩之の顔を見る…
 「琴音…ちゃん…」
 「はい…」
 そして二人は目を閉じる…
二人の我慢して、敬遠してきた熱い想いが、やっと通い合った…そんな感じだった。

 エピローグ

 二人は唇を離す…。
目を開けてみて、ものすごく長いキスだった事を実感する。
ホールからは蛍の光が流れ出していたのだ…
 俺はそれをBGMにもう一度琴音ちゃんに、キスをせがむ…。
もう一度瞳を閉じようとしたその時…

 「あ、浩之ちゃんちょうど良かった、このペンってどうすれば…て、あ…」
 あかりだ。ストレス解消後のスッキリとした顔が、やがてこわばる。
 ヤバイ、ヤバ過ぎ…
 「おぉ、あかりじゃねーか…」
 俺は出来るだけ自然に言ってみる。
 「…」
 あかりの表情はビクともしない。
 「スゴイなーおい、黄色のが20本もあるじゃないか…」
 「…」
 それでもあかりは止まったまま。
 「それって交換所に持っていけば、10万円だぞ…おい」
 「…」
 イカン、黙ったままだ。しかも、琴音ちゃんが
 「どうしたんですか、藤田さぁん?」
 と言って、俺に甘えてくる。
 俺は、しばらく黙ってみる作戦に出た。
 沈黙が続く。
しかし、その沈黙の間に、琴音ちゃんもようやく状況を把握したようで、
俺から離れ、険しい視線を俺に向けている。作戦は完全に失敗だ。
俺は逃げる準備を始めた。
 「…」
 「…」
 「…」
 「浩之ちゃんの…馬鹿」
 そしてあかりは黄色20本と、緑3本、白4本のペンを軽々と折ってしまう。
ベキ、ベキ、ベキ…さらさらさら…
 何度も何度も折り、粉々になっていく景品のペン…跡形もない…。
 パンッパンッパンッ…
 あかりは手をはたくと、そのまま
 「あたし、帰る」
と言って、つかつかと歩いていった。

 「ふぅ…取り敢えず、危機は切り抜けた」
 と…そこで俺は、後ろにあかりの比ではない殺気を感じた。
俺は人形のようにガクガクと、後ろを向く…
 「藤田さん…ありがとうございます」
 見ると、琴音ちゃんの髪が天を向いて、ゆらゆらと逆らっている。
 「な…ななな何、琴音ちゃん?」
 俺はすっかり怯えてしまった。
 「わたし、今気づきました、藤田さんのお陰で…」
 「な…何に?」
 「わたしの力がサイコキネシスだって事に…」
 「そ、そ、そう、それは良かったねぇ…で…?」
 「わたし、今からその結果を藤田さんにお見せします…」
 「け、けけけ結果って…?」
 「滅殺…です」
 「わわわわわ、待って、待つんだ、落ち着くんだ、琴音ちゃん!!」

 うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ…

 夜の街にこだまする、浩之の断末魔。(笑)
 仕事を終えた土方の兄ちゃんが、それを聞いてつぶやく…
「日本って平和で良かったよなー」

………その後、浩之は、二度と日の目を見れなかったという…(笑)

Fin