「漢の戦い」(笑) 投稿者: 紫陽
「漢の戦い」(笑)

筆:紫陽

 「ふふふ、やっと見つけたぞ!!」
 冒頭で何の前置きも無く、セリフを喋り出したのは、俺様、紫陽である。
 「な、な、何だお前?」
 たじろぐ浩之。まぁ、無理もあるまい。
 「ふっ、おぬしは知らぬであろうが、俺は貴様のプレーヤーである!!」
 これは十分に爆弾発言である。
 「何だって、俺のプレーヤー?ふざけるんじゃねぇ!!」
 「ふざけてなどおらぬ!!俺は復習するために、3年間貴様を探し続けていたのだ」
 「復習…何のことだ!?」
 「さっきから『何』『何』うるさいわぁ!あの時の事、忘れたとは言わせぬぞ!」
 「あの時…?」
 「浩之ちゃん…この人、危ないよぉ…」
 今まで脇で見ていただけのあかりが、やっと口を開いた。
 「何を言う!今から説明してやるから、よぉく聴いてろ!!」
 俺様は渇をいれると、身振り手振りで話してやった…
 「…いいか、そういう訳で、俺は芹香先輩エンディングの手前まで来た。
それなのにだ…それなのに、貴様は何たることか…
         『まだ先輩の気持ちには応えられない』
だとぉ!…そ、その時の俺の気持ちが、貴様にわかってたまるか!」
 しかも、お前は大学であかりと結ばれやがって。
 「ふぅん…思い出したぜ!」
 浩之の奴が、笑みを含めて話し出した。
 「だがな、あれはお前がマウスの操作をミスっただけじゃねーか?」
 「な、何?そんな事は無い!!たしかにポインタは、是の方を差していた!!」
 「ど〜だかな〜」
 「本当だ!貴様は俺の指示に背いたのだ!!重罪だ!!!」
 「何ぃ、てめぇやるってのか!!」
 「浩之ちゃん…あぶないよぉ、やめようよぉ…」
 思い出したようにあかりが喋りだした。
 「ふっ、いいだろう。お嬢さん、これは男の勝負だ、女は横で見てな」
 「でも…」
 不安げなあかり。
 「そうだぜ、あかり。俺を心配する気持ちは解るけどな、こんな奴イチコロだぜ!」
 ちっ、浩之のやつ…ガッツポーズなんて取りやがって…勝った気でいるな。
 「うん、わかった。浩之ちゃんがそこまで言うんならいいよ。応援してあげる。」
 「ふふふ、状況は開けたようだな。ならば、勝負はこれでつける!」
 俺様は、勝負の舞台…もといホールを指差した。
 「な…」
 たじろぐ浩之。
 「え…」
 目を丸くするあかり。
 「ふふふ、『パチンコ』こそ優劣を決するのに、最適ではないか!!」
 俺は自信満々で語った。
 「…」
 「…」
 ふふふ、驚きのあまり声も出ぬようだな。
 「ばーかばーかし、帰ろうぜ…あかり!」
 「うん、やっぱり、あぁいう人とは関わらない方が、良かったんだよ」
 げーっ、こういうオチかよ。んもう、がっかりだぜ。
 「ままままま待て、こら、逃げる気か!」
 「逃げてなんていねぇ。あきれてるんだ。」
 げーっ、クールに左手だけを上げやがって!せめて振り返れ!!
 「浩之ちゃんは、逃げたりなんかしないもんね」
 あかりまで…こっちは完全無視って奴?
ちょっと待てよ…おぃ…ぉぉぉぉおおおお
 「何故争おうとしない!!何故俺と戦わないのだ!?」
 俺は異星人よろしく喋りだした。
 「!?」
 驚いて振り替える浩之&あかり。
 「俺は貴様を倒すため、今年で2度目の通信制高校4年生を迎えたんだぞ!」
 ふふふ、驚異の事実だ。(笑)
 「そ、そうだったの?大学にも行かず、卒業もしないで一体何を…」
 とまどうあかり。
 「□-ンソで…いや、パチンコで金を稼ぎながら音楽を…」
 俺はちと焦ってきた。
 「おめぇ…」
 もはやあきれかえっている、浩之…だが、彼はこう続けた…
 「わかったよ」
 「へ?」
 俺は間抜けな声を上げた。
 「まさか、そこまで思いつめていたとはな…。」
 浩之は、真剣な表情で俺を見つめていた
 「ふははは、じゃ、とにかく勝負じゃ勝負じょ!!」
 俺は、半ばなげやりな笑い声を高らかに響き渡らせた。
 「よしっ、いっちょやるか、あかり!!」
 「うんっ、浩之ちゃん、がんばろう!!」

 そうして俺達はホールの中へと入っていった。
 「…ルールは、先に3回当たりを引いた方の勝ち…」
 俺は条件を話しながら、目的の機種へとあるいた。浩之はうなずきながら
後をついてくる。あかりに関しては、ホールは初めてなのか、キョロキョロ
しながら何度もイスにぶつかって、あやまりながらついてきている。
 そして、俺は目的の機種の待つコーナーへと着き、振り返った。
 客がそこそこしかおらず、また、特にドル箱を積んでいるわけでもない、
その機種は…
 「ま、まさか」
 浩之が、汗ばんだ表情に変わった。
 「ふふふ…」
 俺は思わず、笑みを浮かてしまった…

次回、「せめてパチンカーらしく」に続く。(笑)