朝。 晴れの日、雨の日、曇りの日。 どんな日でも、彼は自転車で登校する。 私は毎朝、風に思いを乗せて挨拶をする。 おはよう、と。 すると彼も、私を見て応えてくれる。 おはよう、今日も元気そうだね、と。 よく晴れた日。 彼は昼休みになると、私の膝元で昼寝をする。 彼が入学して以来、日課になっていると言って良い。 私は。 そんな彼を見つめて、微笑むのだ。 太陽の陽射しは、暖かく私たちを見守っていてくれる。 風の妖精達は、心地よく柔らかに私たちを包んでくれる。 私は彼が好き。 例え、永遠ではない、期限の定められた関係であっても。 私は構わない。 彼が好きだから。 彼の思いは分からない。 でも、いい。 いろんな時に声を掛け、触れてくれるから。 理由なんて、いらない。 だって、彼が好きだから。 ・ ・ ・ ある夏の、台風の日。 私はいつも通り、何も変わらずそこにいた。 今日は誰もいなかった。 強い風が、私を揺るがす。 飛ばされた空き缶が、必要以上に大きな音で、私にぶつかる。 私は立っていた。 一生懸命に。 負けたく、ないから。 いつもは優しい友達の、豹変した力の前に、私は強く思った。 負けない、と。 彼の笑顔が見たいから。 もう一度、私の元で、可愛い寝顔を見せる彼と逢いたいから。 ・・・でも。 もう、限界みたい。 その日、一番強い風が吹いたとき。 私は・・・折れてしまった。 ・ ・ ・ 昨日の台風は、翌日にはすっかり遠くへ行ってしまった。 僕は、いつも通りに学校へ行き、そして、異変に気付いた。 木が・・・一本の桜の木が折れていた。 それは、自転車置き場の側にある、桜の若木だった。 昨日の強風に煽られて、多くの葉っぱがもぎ取られていた。 そして、無惨にも、幹の中程から・・・折れていた。 僕はこの木が大好きだった。 僕が入学した日。 あまり大きく無いにも関わらず、見事に花を咲かせていた。 ひと目で、惚れた。 以来、僕は昼休みの多くを、この木の側で過ごすようになっていた。 晴れた日の昼は、ほとんど此処にいたと思う。 ・・・それに。 この木も何故か、僕の来るのを楽しみにしていた、そんな気がした。 僕は、折れた木の枝の中から、一番枝っぷりの良さそうなものを選び、 持ち帰ることにした。 接ぎ木をすれば、まだ生きるかも知れない。 そう思った。 ・ ・ ・ 七十年後・・・。 私は、生きている。 彼が、私を救ってくれた。 あの後、自宅の庭に、私を植えてくれたのだ。 私は、大きくなった。 彼は、少し小さくなった。 でも、以前と同じ。 大好き。 そう、ずっとずっと、好きだった。 彼は結婚もしたし、子供もいる。 でも、昔からの彼を知っているのは私だけ。 これからも、そう。 それに、年を重ねる程に、意思がより強く伝わるようにもなった。 私の思い。 彼の思い。 お互いに、お互いを見ながら、生きてきたから。 「お前も、随分大きくなったものだなぁ・・・」 そういう彼に、私は、サラサラと葉音を立てて、応えた。 < 終 > ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 筆者あとがき 「桜の木の下には、死体が埋まっている」「桜が綺麗に咲くのは、その下にある死 体の血を養分にしているから」・・・そんなことを、何か忘れたけど、聞いたことっ て、無いですか? 僕も、誰がどんな風にしていったか分かりませんが、このような 事を聞いた覚えがあります。・・・別に、このSSがそれに影響されたから、という わけではないのですが・・・(何じゃそりゃ(笑))。 一応、このSSは僕の心が多少なりとも入っています。SSとしては良い物ではな いかも知れませんが、僕はこういった類の物が好きなんで・・・。 それにこれ、全然リーフキャラ出てないし(笑)。はじめ読まれた人は、太田さんか 来栖川先輩かと思われたのではないでしょうか? だとしたら、ちょっと嬉しい。 やっぱり、意外性のあるモノの方が面白いしね。 あと、書き方は結構こだわりました。おかげで少し縦長になりましたが、読みやす く、詩的な感じがしているのではないかと思います。これは、西山英志さんに影響を うけています。 以下レス&その他(長くてすいません) >久々野彰さん dyeさんの「シリウス」に関する質問の答え、有り難う御座いました。 たしか、dyeさんの作品の中で、あの時一番のお気に入りだと書いてらっしゃいま したよね? 作者さん総評で。質問のお答えを読んだとき「ふーむ」と思いました。 僕のイメージの中での久々野さんという方は、サクシャマンの方でも書きましたが、 とても掴みきれていません(当然でしょうが)。なぜなら、貴方のモノを見る視点は、 いつも位置が違うと感じるからです。いくらネタが豊富でも、ワンサイドな物の見方 をしていてSSを書いていると、絶対にパターンが同じ(キャラが違っても)になると 思うのですが、貴方はそれが全然無い。それに、キャラクターに対して、真っ正面か ら向かい合っている(と読み取りました)、と書かれていらっしゃいましたので、それ が更に貴方のイメージを鮮明にするのだと思いました。 だから「シリウス」を読まれても、あれだけのモノが書けるのでしょうね。僕には 無理です(笑)。dyeさんの作品が良すぎたために、僕の中であれの上を行くモノは 書けないですから。でも、これは僕自身としては有り難いことです。自分の一番好き なキャラクターを、自分のイメージ通りに書けないで投稿するよりかは、余程助かり ます。逃げてると思われるかも知れませんが、他の方でも、僕のイメージにピタッと はまる作品ならば、僕はその作品以上のことは書けませんから。 あと、他の方が最近書いたキャラを書かないという点で、三つ理由を挙げていらっ しゃいましたが、それは同感です。現にこのSS、リーフキャラは一人も出ていませ ん。最近キャラネタはもう自分の中で枯渇した気がして、別分野を模索中です。面白 い分野が開ければよいのですが・・・。 最後(長くてすいません)。「アトラク=ナンタラ」の件、了解です。ですが、僕も ア○スの会員になっていないので、HPでユーザー様専用は見れません。で、此処に 載せてしまいました。しかも此処の人達は人が良いので、つい調子に乗ってしまいま した。どうも、すいませんでした。 >るーちゃん(Runeさん) いや、どうも、有り難うね、レス。メールで連絡すりゃ良かったかなー。もう、あ のSSを投稿したときはちょっと狂っていた(笑)んで、突っ走っちゃった。すまぬ。 あと、サクシャマンは事前には送らない・・・と思います。今、「例の物(君の後書き にも出ていた)」が、完成です。それを見て貰いたいので。それに、サクシャマンは 『お気楽極楽あほあほお遊び、みんなの交流深めよう駄文SS(笑)』なので、とても るーちゃんに「どう?」なんて聞けないよ(笑)。というわけです。 あと、「Lメモ」の性格設定、かなり当たっています(笑)。特に卑屈、というか、 陰で負けず嫌いだからな、僕(笑)。表面には出さないけど(出てる?)、闘志を内に秘 めるという・・。こう言うとかっこいいけど、用はるーちゃんみたく正面切って言い 切る度胸が無い(苦笑)。ま、しょうがないね。性格だもん(笑)。 では、SSメールを送信しておきます。これを先に見られたら、確認しましょう。 で、色々あるけど、頑張っていこう。と、最後にまとめときます(なんやそら(笑))。 >ゆきさん いや、どうも初めまして。こうしてまともなレスを返すのは初めてですね。 「おそらくそれは 歪んだ愛」が、ゆきさんの投稿されていた中で一番良かったです。 かなり溜まっていて、ゆきさんのSSも大量にあるのですが、これが脳に強烈なイン パクトを与えてくれました。人ってやっぱり色々ですし、どれが歪んでいて、どれが まともな愛なのかなんて分からない。その意味でこのSSは良かったです。 次の作品も、楽しみに待っております。 >dyeさん 「天使共鳴1、2」送っていただき、有り難う御座いました。で、感想ですが、良 いですね、楓ちゃんが。きっとこの子は美人のはずだ(笑)。じゃなくて、相変わらず 展開の仕方が上手ですよね、話の。卒論を書かれて、文章力もアップされたのではな いですか?(笑)。更に、「天使共鳴3」。これのラスト、引っ張りすぎ(笑)。もう、 これはなるだけ早く次の作品を投稿しないとダメで御座いますよ。でないと、半年に 一回出るコミックみたいになります(笑)。は、話覚えとらん・・!の状態。 ああっ、気になる気になる気になる木ぃー(笑)。 >西山英志さん こんばんわ。これが僕の新作です・・・って、前の「Good Morning」 も一応新作ですよ(笑)。ま、まさか連載のことを言っていらっしゃるのではないです よね? ね? ね?(笑)。これからは、こういった単発SSを多く書いていこう、と 思っています。それにこの文章の書き方、貴方に影響されたものです。影響された、 などというのは押しつけがましいですが、いつも拝見する文章は、綺麗な書き方をな さっていらっしゃるので、真似ました(笑)。用は。で、西山さんの新作はどうなんで す? あの暴走の後ですから、息が切れていらっしゃるかも知れませんが・・・(笑)。 >その他の方々(特に一月ぐらいから来られた、お新しい方) どうも初めまして。何人ぐらいいらっしゃるのか、今はまだ把握していません(笑) これから次々とレスするつもりです。古いネタもあるやも知れませんが・・・。 だいぶ長くなりましたので、今日はこの辺で。それでは、また。