アトラク=ナンタラ 投稿者:健やか


                南へ・・・。
               遠く・・・南へ。

初音と奏子は沖縄に来ていた。

       ・
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       ・
銀(しろがね)との激戦の最中、突然飛び込んできた奏子によって、戦闘は突如として
終焉を迎えた。その時、あの銀がこう言ったのだ。

「ぬしらを見るのも、また面白い」と。

そして更に、付け加えた。

「ぬしらの行く末、興味が湧いた。永遠の時を持つ者、それを持たぬ者。・・・永い
 昼夜の中で、その娘がお前と同じようになるのか・・・のう、初音。」
「私は・・・かなこを蜘蛛にはしないわ」
「く・・・くくっ・・・くくくくっ」

そうして、銀は、消えた。
       ・
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       ・

比良坂初音(ひらさかはつね)は何百年も生きる女郎蜘蛛だ。銀は彼女を蜘蛛にした、
時を超えて生きる化蜘蛛。初音は銀を兄と慕い、愛し、共に生きてきた。
だが、銀が戯れである神社の娘との間に子を生ませた時から、全てが変わった。
初音は一人不安に駆られ、悩み、そして・・・銀と相見える道を選んだ。

傍らに立つ少女、深山奏子(みやまかなこ)は、銀との闘いに傷ついた初音と、自ら
の高校で出会った。その出会いは強烈なものであったが、自分を嫌な日常から救っ
てくれた初音が人でなくとも、惹かれ、そして愛する気持ちに嘘はなかった。

その初音が、銀との再戦を一時終了し、学校の「巣」から出れるようになったとき、
かねてから奏子と言っていた通り、遠くの、他の何処かの土地へ行ってみることに
したのだ。

                南へ・・・。

「かなこ・・・」
「はい・・・姉様」
「ここが・・・あなたの言っていた、沖縄?」
「そ、そう・・・です・・けど」

奏子は初音のことを「姉様(ねえさま)」と呼ぶ。二人の関係は、無論、
そういうものだ。

「何か・・・随分と、騒々しいのね」
「あ、あのっ・・・こ、ここは空港の側ですからっ」
「良いわ。べつに」
「は、はい・・・」

二人は沖縄にいた。ここに来るまで、実に色々なことがあった。何せ初音の常識と
いうものは百年以上も前のものなのだ。電車や、車や、船など、見る物全てが新しく
斬新に映り、ずっと目を丸くしていた。そうして知らない物のことを奏子に聞き、
偶に触れてみたりして、初音は無くしてしまったように思っていた感情というものを
蘇らせていた。

(退屈等というものは・・ともすればどうにでもなるのではなくて・・・?銀)

最近の初音はそう思うようになってきた。
奏子の方はというと、初音の行動にハラハラしながらも、外見から見ればとても
落ち着きがあり、自然な感じのする普段の初音とのギャップが楽しかった。
そういう所が、とても魅力的で、愛おしく思えるのである。

「かなこ」
「は、はいっ」

突然声をかけられ、奏子は文字道理飛び上がった。

「?・・・これから海へ行こうと思うのだけれど・・・」
「あ、はい」
「それで・・・どう行けばよいのかしら」
「あ、え、えっと・・・・」

奏子はパラパラと『まっぷる』を捲った。

「え・・っと、ここからだと・・・タクシーで四十分ぐらい・・・だそうです」
「・・・そう。『たくしー』と言うと・・・あれ・・ね」

つい、と初音は指さし、

「では、行きましょうか」

にっこりと微笑み、そう告げて歩き出す。

「は・・・はいっ」

その笑顔の眩しさに、胸を躍らせながら、奏子は初音を追った。

タクシーに乗ってから、十分。奏子は、ここに来る迄の事を、ぽつぽつと思い出して
いた。闘いの後、傷ついた初音のために出来る限りの精気を分け尽くしたこと(初音
は化け物なので、人の魂や精気を喰らう)。回復してから、初音が一緒に南方へ行こ
うと言ってくれたこと。そして、今までの道程のこと・・・。

(あ、そういえば・・・)

奏子は自らの荷物をまとめるため、初音と一緒に自宅に行った時の事を思い出した。
自宅を出る際、初音が父や家政婦、それにあの嫌な天野にまやかしを掛け、奏子の事
を忘れさせた。その時、父のクレジットカードを一枚失敬してきたので、その事もま
やかしを掛けてもらった。お金の概念を理解できない初音には、それが持つ役割と利
用価値はよく分からなかったが。

奏子は家を出るときも、特に何も思わなかった。
罪の意識など無い、むしろ開放感が大きかった。

「・・・」

奏子は初音を眺めてみた。初音は先ほどからずっと、窓の外の流れる景色に見入った
ままだ。その赤い目。吸い込まれそうな黒髪。整った目鼻立ち。何処から見ても、完
璧だ。今、初音が着ている服装は、出発前に購入したものだ。上は、薄手の焦茶色の
ネックのセーター。下は濃いワインレッドのチェックのスカート。どちらも、黒髪に
栄えてよく似合っていると思う。流石にセーラー服のままでは不味いだろうし、前に
プレゼントしたワンピースでは寒いだろうと思ったのだ。

「???・・・どうしたの?かなこ」
「はっ!!・・・あ、え、い、いえ・・・何でも」
「そう?」

そういって初音は首を傾げる。その仕草からして美しい。先ほどまで奏子は見とれて
いたのだ。

「もうすぐ・・・かしらね」
「えっ・・・あ・・・」

前を見ると、キラキラと光る海面が見えてきた。時間がそろそろ夕刻とあって、
辺りが鮮やかなオレンジ色で満たされようとしていた。
       ・
       ・
       ・

「うわぁ・・・」
「綺麗・・・ね」
「はい・・・姉様」

浜辺に立つ二人は、それぞれに思いを巡らした。初音にとっては、永い時間の中で、
あまり見向きもしなかったものを改めて見直し・・・、奏子は思い人と共にここに
ある事が出来る喜びを・・・。そして、二人は互いに必要だということを・・・。

「あ、あの・・・」
「なぁに?」
「あ、えっと・・・」
「・・おっしゃって御覧なさいな」
「あ、の、姉様は・・・ずっと・・・こういう所へ・・来たかったのですか・・?」
「・・・そうね」

そういって、初音は奏子の方を向き、ふふ、と笑って・・・・

「かなこと一緒ならば・・・ね」

そう言った。

「えっ・・・・あ・・・・ぅ・・」

奏子は赤面し、思わず足元を見てしまう。そんな奏子を見ながら、初音は続けた。

「さぁ、もう行きましょう。日が暮れてしまうわ。お宿を見付けないとね」
「あっ・・・は、はい」

そう切り上げる初音を見ながら、奏子は、まだこの時の流れが終わらないことを
心の底から喜び、幸福感に包まれていくのを感じた。

(姉様・・これからもずっと一緒に・・・命か、心か、或いは時の尽きるまで・・・)
       ・
       ・
       ・


          ・・・・物語は、終わらない・・・・
         ・・・女が、生き、年を重ねる限り・・・

        ・・・・そうして、話は綴られてゆく・・・・

            ・・・これも、一つの・・・
             ・・・ものがたり・・・

                                −未完−

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筆者あとがき
 ヤバ、やっちゃったよ。まさか他社のまでやっちゃうとはなぁ。僕ってSSで
 かなり目ぇ付けられてる気がする・・。こんな事すんの、僕ぐらいだろうしなぁ。
 本当は書かないでいるつもりだったのに、TVが面白くないから書いてしまった。
 まずいかな、これ。やっぱり。うーん。でも、元がすごく良いからどうしても・・
  SS書きたくなりませんでした?このネタで?(我慢できんかった・・・)
 やっぱまずいかなぁ。ここじゃあ。

 この元ネタはすごくイケてると思います。「日常或いは平凡な日々」というもの
 を改めて考えさせてくれた気がしますね。なにげに甘えていてはいけない・・と。
 この元ネタを知っている人はその事についても感想を教えてくれると嬉しいなぁ。
 僕は葉っぱ&はに○軍団の虜なんで、皆の比較考察した意見とかが聞きたいっす。

 未完、としたのは、つまり初音達の物語はまだまだ続くのだ!という自己満足(本
 編はあれな話だし)と続きを書くつもりだからです(やめときゃ良いのに)。
 出来ればあと一回書きたい、この話。姉様がいいのよ。もうサイコー!(ヲイヲイ)
 次は明るく行きます。むむむ・・・海水浴だ、それで行こう!(勉強は?)ううっ。
 
 出来るだけ本編を知らない人にも分かるように書いたつもりですが・・・。
 分からなかったらゴメンナチャイ。感想メールでも打って、文句いってくれれば
 次からの参考になります。宜しくねー。

以下レス。
>アルルさん
男前に書いて下さって有り難う御座います(笑)。僕ももうこの呼び方を使ってしまっ
てますが、改めて「リーダー」って呼んで良いですか?(笑)
あと、真面目な話。アドバイス有り難う御座います。確かに他人との関係は非常に
難しいですね。受け入れられる部分と、そうでない部分というのは絶対に有ります
から。そこで働く人の雰囲気・・か。僕に分かるかな・・・。

>Runeさん
僕を使ってくれて有り難う御座います(笑)。僕らもアルルさんと鈴木R静さんのよう
に、ユニット組みます?(笑)だって、あの二人ってすごく仲が良くて、ちょっと
”ヂェラシー”感じません?(爆)。それでより良いものが出来るなら最高ですよね。

>Foolさん
「愛ゆえに・・・」の薔薇は留まることを知りませんね(笑)。逃げれませんよ(笑)。

>久々野彰さん
デンパマンのアンケートですが、笑えたのは「西瓜」。「嫌がらせだ」のやつ。
遅いネタだな、これ。

>ジン・ジャザムさん
メールアドレス取得おめでとう御座います(また遅すぎるレス)。

>作者さんの皆様
完結なさった方、新章始まった方。お疲れさま、と、頑張って下さい。
すいません。全ての方のSSはとても読み切れてないんです。
本当は読めればよいのですが、そういう訳にもいかず、事実クリスマスネタは
大半読んでません。御免なさい。たまにパッときて、パッとあったSSを見て
いるだけなので、感想が圧倒的に少ないですが、お許しを。

今回は突発的に舞い戻ってきましたが、また離れます。
次は何時になるか分かりませんが、時間が出来ればまた書きます。
さあ、明日はバイトだ。美味しいおせちを届けてやるぞ!(笑)。それでは。