月の幻惑 投稿者:健やか

 月が、出ていた。
 見るモノを何故か引きつける、太陽の光を、暗闇の中で反射するそれは・・・。
 ・・・満ちていた。

                 ・
                 ・
 俺は帰路を急いでいた。バイトの帰りに、友達と長く遊びすぎた。
 もう、十一時を回っている。自転車の、ペダルを踏む力が強くなる。

 「こりゃ、今日はあいつにこってりと叱られるなぁ」

 一人呟く。呟きと共に、白い息が舞い上がり、気温の低さを痛感させる。
 ・・・冷たい。顔に張り付く夜の気は、俺の表情を固めさせるに十分だ。

 「うーっ、コタツが恋しいぞ」

 また、呟く。正直、かなり大きな声だった。どうして大きめの声を出すか、
 というと・・・。
 恐がりなのだ、俺が。特に、広い場所で真っ暗の状態の所などは特に嫌いだ。
 僕が住んでいるところは、市の中心からかなりの郊外にある。だからそういった
 状態の場所が多い・・・というか、道路に外灯もほとんどなく、住宅よりも田畑が
 多い位なので、まさに暗がりと言って申し分ない。女性の夜の一人歩きは厳禁と
 いって良いだろう。しかも、通学に距離もある。騒音などは全くないのだが・・。

 「全く、中途半端に田舎だぜ」

 もう一度、呟く。やっぱり恐い。恐がりだなんだといわれても、恐いモノは恐い。
 しかも、どうしてか分からないが、今日はいつも以上に暗がりが恐く感じられる。

 俺は、夜を照らす月を見上げた。
 満月だった。それに、何だか赤みがかっているようにも見える。
 しばらく見上げながら自転車を走らせていたが、流石に危険だと思い、前を見た。
 寸前に、人がいた。

 「!!!!!!!!!」

 ガッシャーーーーーーーーーン!!!
 ハデな音を立てて自転車が転ける。どうやら直接轢いてしまわずに済んだようだ。
 だが、かごの荷物が相手に直撃している。

 「テテテ・・・あの、すいません。大丈夫ですか?」

 俺は、その人に近づき、様子をうかがった。
 ・・・女性だった。荷物にぶつかり、地面にぺたんと座るようにしている。
 よく見ると、かなりの美人のようだ。
 月明かりなので断言は出来ないが・・・そう見える。
 内心、”ラッキー”などと思いながら、その人に怪我がないかを確かめる。

 「あの、怪我はないですか? 痛いところとか・・・」

 こちらから話しかけても、その人は黙ったままだった。
 少し様子が変に感じたので、顔を近づけて、聞いてみる。

 「大丈夫ですか!?」

 ・・・にこり。
 笑った。大丈夫なようだ。俺はほっとして、自分の自転車を立て直し、もう一度
 確認しようと、その人の方を振り向いた・・・。

 「あの・・・・あれ!?」

 ・・・消えていた。今までそこにいたはずの女性が消えていたのだ。
 彼女が座り込んでいた場所には、俺の鞄だけが転がっていた。
 ・・・まるで・・・初めから何も無かったかのように・・・。

 それが、俺―阿部貴之と、彼女―来栖川芹香の出会いだった・・・。


                               < 末 >

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筆者あとがき
 全国の柳川&貴之薔薇ファンの方、並びに先輩ファンの方、すいません(笑)。
 しかし、珍しい組み合わせの上に、続きがあっても良さそうですが、ありません。
 全くのプロローグだけですが、いずれ書くでしょう。今は駄目だ・・・。
 今連載を増やす気はないんで・・・。書いたら書いたで、また、ドバッとまとめて
 出すようにしますので・・・。しかしこのSS、キャラは誰でも良かったんじゃな
 いか? というつっこみは無しね(笑)。まだプロローグだし(逃げ口上)。

>で、最近の『Lメモ』を見ていて、どうも僕の相手キャラが見つからない(笑)。
 ま、僕も最近「萌え萌え」などと言ってなかったので、ちょっと書きます。

 まず、シリーズごとに好きなキャラ。
 「to heart」1.来栖川綾香 2.長岡志保 3.委員長(名前忘れた(爆))
 「痕」1.柏木梓 2.柏木千鶴 3.耕一の同級生(名前忘れた(爆))
 「雫」1.太田香奈子 2.新城沙織 3.なし

 という内訳です。で、トップスリーの中では・・・。
 太田香奈子 > 来栖川綾香 > 柏木梓 という順番です。

 何故こうなのか、というと、僕は基本的にダチっぽく付き合える子の方が好きなの
 です。で、太田さんは文句無く一番(笑)。かわええ〜(笑)。ええ子やし。
 これで彼女は僕のもんでしょう(笑)。
 で、次に梓が三位。何故か。それは乳がでかすぎるから(爆)。大きすぎるの駄目な
 のよ(超新星爆)。ということで、こういう結果になりました。『Lメモ』作者の皆
 さん、宜しくね(何を?(笑))。でも、よく見ると久々野さんとよく似てたりする。
 ま、争わないで済みそうだから良いけど。問題は・・・奴(月島)か!!!!
 
>以下レス&その他
>無口の人さん
 『楓先生』面白いです。昔、MSXでプログラムを組んで遊ぶゲームで、蛇のキャ
 ラを使ったモノを思い出しました。そのキャラは喋る度に「〜にょろよ」とか、
 「〜にょろね!!!」などという口調でした(笑)。あれは面白かった。
 ・・・すいません。意味無い感想で(自爆)。

>西山英志さん
 シリアスな新作・・・。これで・・・勘弁してつかぁさい(笑)。全然シリアスぢゃ
 ないですが、今までに無い形のものを書いてみました。如何でした? って、この
 SSはあまり内容無いんですけどね(笑)。楓ちゃんも出てないですし(爆)。

>ゆきさん
 「欲望の続き」期待してます。良いモノに仕上げて下さい(大笑い(何故!?))。

>久々野彰さん
 いやぁ、凄まじい感想を有り難うございます。あれは感想と言うより、既に考察、
 推論の域にまで達していますね。参りました。そこまでして頂けるとは・・・。
 しかも、あの情報の少ない稚拙な文章からあそこまで読まれるとは・・・。

 「降参(犬だったら腹見せるでしょうな(笑))」

 一応、出来る限りのことをレスします。これで貴方が納得されるとは思えませんが
 多分何かの足しにはなるでしょうから。

 で、初めにマルチですが、確かに「殺してしまった」のではなく「殺した」です。
 明らかに、意図的に行っているモノです。生きるために殺してきたと僕も考えてい
 ます。「第三世界の争乱」と書いたときに、アンドロイドが戦闘に用いられた以上
 マルチの意思に関係なく人間はアンドロイドを敵視します。ということは、否応な
 くそうなるわけで、ブシブシ刺しまくらないといけなくなったという事です。

 で、空を殺した(僕は死んだと思ってないのですが(笑))経緯ですが、マルチは過去
 の知人を求めて来栖川へ行き、芹香とは別人の空と出会うわけですが、空は現在の
 人間です。過去のマルチの知人ではない為、思い出として良いモノが浮かばないの
 です。「現在=敵だらけ」という感情が動いたと思って下さい。ですから、これは
 突発的な殺人です。

 長瀬の方は、その通りです。そのままですね(笑)。
 最終的に、何をマルチが望んだのか・・・・。

 『人』のいる世界・・・ですかね(何か偉そうだぞ(笑))。

 空少年のことはどうやらお眼鏡に適ったらしく、嬉しかったです。いやぁ、目標の
 一つがこのことだったんで、一安心ですな。

 で、次は感想です。『a tear』ですが、僕にはセリオがものすごく自己主張してい
 る様に思いました。「私じゃ駄目なの?」「マルチじゃなきゃ駄目なの?」って。
 もう、このイメージが頭にこびり付いちゃって、他の考えが浮かびませんでした。
 情けなや・・・。セリオに・・・心は・・・。

 『背中』は、久々野さんの作品の中で、一番癖のないSSだったと思います。純粋
 で良かったです。いつも書かれていたデンパマンや、名作「自虐〜」なんかは、必
 ず
 一癖あったように思いましたから(失礼!(笑))。

>レスがまた長くなりましたが、これにて。