ホワイト短編2 不思議な時間 投稿者: しもPN
ホワイト短編2 不思議な時間

<注意事項>
 ネタばれは含まないと思います。
 後、設定はゲーム以前、由綺と仲良くなる少し前の話です。

<<不思議な時間>>

 プロローグ

「サアッーッ」雨がいつ果てるともなく降り続いていた。
 外はまだ夜7時だと言うのに静まり返り、たまに
行き交う車の音だけが場違いに鳴り響いている。
 それ以外には鳥や虫達はもちろん人の足音すらしていなかった。
 もちろん人影などどこにもないのであろう…音がしないの
だから…。

 1
 
「昨夜11時半頃、OO区の路上で女性が倒れているのが
発見され、付近住民の方が通報されましたが病院に運ばれた時
にはすでに遅く死亡していたとのことです。
 担当医の話しでは、体に外傷が見られず死因は現在検査中
であり…プッ」
 さっきまで居間でテレビの音が雨の音と一緒に旋律のように
鳴り響いていたのだが、今はテレビの音は消え、
雨音だけが鳴り響くだけである。
 8畳くらいのその部屋には、端に家具とテレビ、真中に机、
机の周りを囲むように4脚の洋風椅子、下に絨毯という間取りで
、その1脚のところにさっきテレビを消した高校生くらいの少年
が腰を下ろしていた。
「最近ここら辺で物騒な事件が頻発しているよなあ」
「由綺さんも養成所通いで夜が遅いし、気を付けるように言って
おかないとなあ」
 少年は地べたにごろんと横になり、天井を見ながら、
心配そうにそう言っている。
 周りには、雨音以外ほとんど音が無くなり、ただ2人くらいの
人の気配だけがするだけである。
 しばらくすると少年は、疲れていたのであろう、
ゆっくりとした規則正しい寝息をしだす。
「リリリン、リリリン」
 だが、彼の睡眠は突然の電話によって、掻き消された。
それは一本の奇妙な電話だった。
 少年は父親が周りにいないのを不満気にそれでも眠い目
を擦りつつ電話にでる。
「はい、もしもし藤田ですが…」
 少年がいつもの調子で苗字を告げると電話からは、
雨の音だけが聞こえてきた。
「すいません、誰でしょうか?」
「サーーーッ」そして、しばらく雨の音だけが続いた後、一言
だけ声がする。
「冬弥君…3丁目の…橋のところに…いるから…」
「ゆ、由綺さんですか…」
「プッ、プープー」
 それは小さな声だった。声の主は彼の知っている
タレント養成所に通う髪の長いあどけない少女に似ていたが…
それは、あまりにも小さいぞっとするような声だった。
「まあ、行って見ればわかるだろう」
 少年はそのまま父親に遅くなると書置きだけを残し、夜の街に
出ていった。

 2 

 あの声は由綺さんの声だったのだろうか、確かに声から言えば
彼の知っている彼女に間違い無かった。
 だが、なぜこの時間に…、なぜ俺の家に…。
 だいたい彼女は今、養成所でのレッスンの最中のはずである。
 静寂の街を歩きながら、彼の心の中はそんな疑問で一杯であった。
 それと同時に彼はいくつもの不思議な光景に出会う。
 人のいない公園、人のいない商店街、人のいない駅前、別に人の
存在を気にしながら歩いたというわけではないが、少年は彼女の
待つという3丁目に向かう途中で誰一人として人に会わなかった。
 それは、彼だけをそこに誘うかのように…。
 また、彼以外の全てを拒絶するかのように…。
 ペープメントの上はただ無音の空間だけが存在していた。
 そして少年は彼女の待つ橋の上にたどり着く。そこも人の
気配すらしない奇妙な場所になっていた。
「ここでよかったんだよなあ」
 さっきのは夢だったのかというような表情で自問自答
しながら辺りを見渡す少年。
 そのまま、どのくらい待っていたのだろうか…気がつくと
春でも寒いと感じられる時間にまでなっていた。
「寒、やっぱり夢だったんだよな」そう思い返して少年は
帰ろうとした。
 だが彼の体は彼の意思に反して一歩も動こうとはしなかった、
いや、動けなかった。
 それはまるで金縛りにでもあったかのような感じであった、
それでもどうにか動こうともがく少年。
 それから10分くらい経っただろうか前から長い髪の少女が
近づいてくる。
「由綺…」彼の口からその一言だけ飛び出す。
 そう、その少女は、由綺にそっくりだった。
 頭から足先まで…。

 3

「冬弥君…来てくれて…うれしい」
「ねえ…ずっと…ずっと…わたしと一緒にいてくれるよね」
 少女は少年から10センチくらいのところまで近づいて来て、
そしてキスでもせがむかのような雰囲気で目を閉じた。
「えっ…ちょ…ちょっと」その光景に驚く少年。
 確かに絶好のチャンスかもしれないが彼は驚きの方が大きくて、
少し拒絶したような格好になる。
「あのさ、すごく嬉しいんだけど…でも、もうちょっと仲良く
なってからにした方がいいんじゃないかな」 
 少女は、この彼の行動にちょっと驚いた表情でえっと
言うような顔を少しの間しているが、彼の言葉を聞き、
ずっと一緒にいてくれるのだと解釈して。
「それじゃあ、行こ」
 と嬉しそうな表情をして少年を引っ張る、彼もそれに
付いて行こうとするが…橋の脇まで来ると少し引っ張り返し
ながら…。
「どうしたの、由綺…さん」と言う。
 だが彼の言葉は彼女には届かず、彼女はすごい力で彼を水の中
に誘おうとする。
 いくら冬じゃないとは言っても、こんな時間に池に入ったら
間違い無く死んでしまうであろう、だが彼女のひっぱる力は
どんどん強くなっていく。
見た目の儚げな彼女から想像もできないようなものすごい力で…。
 少年はどんどん引っ張られ、もう後がないところまで来ていた。
「俺、由綺さんになんか気のさわることでもしたのだろうか?」
 そんなぎりぎりのところで少年はふとそんな風に考える。
 だが、どう考えても彼女に好かれることはあったも、嫌われる
ことは考えられなかった。
「由綺さん、助けて…」思いがけず無我夢中で少年は叫ぶ、
すると…。
「冬弥君、どうしたの?」
「えっ」
 さっき少年を引っ張っていたはずの彼女の姿はどこにもなく、
なぜか由綺は彼の目の前に立っていた。
「あれ、由綺さん」少年が驚いた目で彼女をみると…。
「だって冬弥くん 大声で私の名前呼んでいるんだもん」と
彼女は恥ずかしそうに俯きながら照れている。
「あれ…あれ…俺、夢でも見ていたのかな、今来たところだよね」
「うん。だって今までレッスンだったんだから…」
 なんだ夢だったんだ…でもなんかリアルな夢だったよなあ。
 少年は、少し不思議に思いながらも、そう理解し…。 
「ねえ、由綺さん 一緒にそこまで帰りませんか」と彼女を誘う。
 そうして仲良く並んで歩く2人…すこしぎこちなく…
少し恥ずかしそうに。 

 エピローグ

 彼も彼女も、もう知ることはないだろうが…、
この平和な世界の裏にも影の世界があるのだ…そう知らない方が、
良かったと思えるような恐ろしい世界が…。
(おわり)

 痕みたいですね(うーん)
 たまには書いてみたかったんです、ただそれだけです。
 時間はかかりました…慣れてないもんで…。
(ワシにしては^^;)

後、また感想書きます^0^

では